米証券取引委員会(SEC)が最終的にリップル社に勝訴すれば、暗号資産「リップル(XRP)」の市場は急速に縮小し、その価格はさらなる影響を受けるとの見方がアナリストやトレーダーから聞こえてきた。
SECは12月22日、リップル社を連邦証券法違反で提訴した。リップルの価格は、24時間で約40%下落。24日早朝(日本時間)の時点で、26.6セント近辺で取引されている。
訴訟が終わるまでには数年の時間がかかる可能性がある。一部の専門家は、リップルが有価証券であるというSECの主張が認められれば、リップルは市場の大部分を失う可能性があると警告している。暗号資産取引所のほとんどは、証券を取り扱う許可を持っていない。
「多くの暗号資産取引所がリップルの上場取り消しを余儀なくされるだろう。そして流動性は枯渇する」と、メッサーリ(Messari)のリサーチアナリスト、ライアン・ワトキンス(Ryan Watkins)氏は述べた。そうなれば、リップルの価格は「激しく暴落」するだろうと同氏は言う。
上場を廃止する取引所も
SECが勝訴すれば、リップル(XRP)の上場を続ける取引所は、SECから証券取引所としての登録を求められる可能性がある。登録しなければ、未登録証券を扱ったとして罰則を受けるかもしれない。
すでに、6月にサービスを開始した小規模な取引所、クロスタワー(CrossTower)は、リップルの上場を取り消した。
「クロスタワーの上場委員会は、複数の側面からトークンを評価する。評価基準の1つは、資産が証券か否かだ。リップルの状況をめぐる不確実性を考慮して、クロスタワーは上場を取り消す決定を下した」と、クリスティン・ボッジアーノ(Kristin Boggiano)社長は述べた。
クロスタワーは、コインベース(Coinbase)やバイナンス(Binance)と比べると規模は小さいが、同社の判断は大規模な取引所の判断の前触れとなる可能性がある。
クロスタワーは、どのデジタル資産が証券に類似しているかを検討する目的で昨年スタートした、コインベースが主導する組織「Crypto Rating Council」のメンバーだ。同組織は、リップルは証券に近いと判断し、5段階で4の評価をしていた(5は明らかな証券)。
この評価は、法的な勧告ではなく、特定のデジタル資産に対する同組織の見解を示すものだ。同組織にはビットレックス(Bittrex)や、取引所大手のクラーケン(Kraken)も参加している。
米CoinDeskは各取引所に取材を試みたが、コインベース、ビットスタンプ(Bitstamp)、バイナンスUSはコメントを控えた。クラケーンからは、返答がない。
短期的な価格インパクト
1点、明確にしておこう。上場停止はリップル(XRP)にとって中期的リスクだが、現状からはかけ離れている。
「SECとの展開で、リップルが上場廃止となる確率は低い。私の意見では、今回のニュースは価格にとって短期的なノイズとなる」と、トレーダーでアナリストのアレックス・クルーガー(Alex Kruger)氏は述べた。「しばらくの間、リップルのパフォーマンスは低迷すると考えている。市場参加者は、リップルとSECのニュース、上場廃止の可能性に非常に懸念している」
しかし、多様な暗号資産サービスを提供するトライタム(Tritum)のジョン・ウィロック(John Willock)CEOは、リップルが証券と認定されれば、「ほとんどの取引所と業界参加者にとって、リップルは取引できなくなる可能性が高い。市場における流動性と参加者の大部分が消え去るようなことが起きれば、リップルの価格は大幅に下落するだろう」と述べた。
現在の暗号資産投資家の中に、「証券商品を保有したり、取り扱うことのコストや複雑性を許容する人はほとんどいない」と、ウィロック氏は話す。
マルタに拠点を置く暗号資産取引所オーケーエックス(OKEx)のジェイ・ハオ(Jay Hao)CEOも「リップルは大規模に売却され、下落するだろう」と同様の見解をCoinDeskに語った。
リップルが証券と認定された場合、オーケーエックスはリップルの上場を取り消すのか?ハオCEOからの返答はまだない。
一部の機関投資家は暗号資産市場に参入し始めているが、こうした大口投資家は一般的にビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)に重点を置いている。複数の専門家は、リップルなどではまだ個人投資家が支配的だと話す。取引所がリップルの取り扱いをやめれば、個人投資家はリップルを取引できなくなる。
長期的にはポジティブな見方も
とはいえ、影響はリップル(XRP)にとって、必ずしも致命的なものではないのかもしれない。
「SECが特別な運営条件を提示したり、リップル社から和解金を受け取るなど、影響を緩和する道は存在する」と、トライタムのウィロック氏は指摘する。
ハオCEOも同様に、リップルを証券と認定することは、今後のリップルの価値にプラスの影響を与える可能性があると述べる。
「今回の訴えによって、最終的にリップル社は伝統的な証券取引所に上場し、より幅広い市場で取引されるようになる可能性がある。つまり、長期的にはきわめてポジティブな値動きもあり得る」と、ハオCEOは述べた。
米CoinDeskはリップル社に取材を申し込んでいるが、まだ返答はない。ガーリングハウスCEOは12月22日、CNBCに出演し、政権交代の直前で、SECも委員長の交代が目前でありながら、訴訟を起こそうとしている不可解さを指摘した。
「リップルを証券と捉えている国はない。イギリス、日本、スイス、シンガポールなどはすべて、リップルは通貨であると明確に述べている」
ガーリングハウスCEOはまた、視聴者に対して、リップル(XRP)の先行きは、リップル社の先行きとは別のものと述べた。
「仮にリップル社が存在しなくても、リップルは世界中で数百の取引所で成功しているだろう。そして、リップルにはアメリカや世界中に、100を超えるさまざまなプロジェクトとイノベーティブな起業家が存在する」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:An SEC Victory in Ripple Case Would Render XRP ‘Untradeable,’ Market Pros Say
取材協力:Lawrence Lewittin、Nathan DiCamillo、Danny Nelson