プルーフ・オブ・ステークは、イーサリアム2.0だけではない【オピニオン】

わずか1年で、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)は理論的なエクササイズから暗号資産(仮想通貨)における支配的な動きとなった。

PoSに関する2020年最大の話題は、もちろんイーサリアム2.0の運用スタートだが、それ以外にも数多くのPoSが素晴らしいスタートを切った。

時価総額上位9つの暗号資産のうち4つが、PoSへの移行を目指している。2020年1月の時点では、上位の暗号資産の中にPoSはゼロだった。今では、さらに多くが後に続こうとしている。

プルーフ・オブ・ステーク(PoS):発行済の全コイン総量に対する保有コインの割合によって、発言力が変動するように設計されたアルゴリズムのこと。コインの保有量が多いほど報酬を得やすい仕組みになっている。ビットコインが採用しているプルーフ・オブ・ワーク(PoW)と違って、膨大な電力やマイニング機器を必要としないことがメリットとされる。

PoSは、暗号資産時価総額の約15%を占めている。2020年の成長の多くは、イーサリアム(Ethereum)をはじめ、ポルカドット(Polkadot)、カルダノ(Cardano)、ニア(NEAR)、ソラナ(Solana)などによるものだ。

2021年、PoSに携わる開発者が増えていくにつれ、ユーザーが目にするプロジェクトやアプリは爆発的に増えていくだろう。

理論から実践へ

PoSへの根強い批判の1つは、理論的なものに過ぎないという批判だ。多くの人は、本を読んで橋を作ろうとする学者のように、PoSブロックチェーンは実践では失敗すると考えていた。

テゾス(Tezos)やコスモス(Cosmos)など、過去のPoSブロックチェーンの成功は、そうした批判を黙らせることはできなかった。

イーサリアム2.0の度重なる遅延も間違いなくこうした疑念を拡大させ、2020年12月に運用がスタートするまで、イーサリアム2.0は暗号資産業界におけるジョークのようになっていた。だがPoSはようやく表舞台に立った。

イーサリアムブロックチェーンは、時価総額ではビットコインブロックチェーンに次いで2位だが、最大の開発者コミュニティーを誇っている。

イーサリアムブロックチェーンがついにPoSへの移行を開始した事実は、このコンセプトが定着していることの明確なメッセージである。イーサリアム2.0は最大のステーキング・チェーンになろうとしている。だが、その時期はまだわからない。

イーサリアム2.0だけではない

イーサリアム2.0はPoSのお披露目パーティーのようなものだが、それだけに焦点をあてていると、より大きな全体像を見逃すことになる。2020年、多くのPoSネットワークが成功を収め、拡大している。

現在最大のPoSブロックチェーンであるポルカドットのステーキング額は100億ドルを超えている(ステーキングのデータサイトStaking Rewardsによる)。時価総額6位のチェーンリンク(Chainlink)もPoSへの移行を発表している。

2021年末までには、時価総額上位のブロックチェーンの多くが、さまざまな意味でステーキング・システムに移行しているだろう。

ビットコインが最大の暗号資産としての地位を守り続けることは間違いないだろう。最初の最も知られた暗号資産であり、ユースケースは明確でわかりやすい。

しかしビットコインは、PoSに対する反証ではなく、むしろそれを証明する例外。ビットコインは価値の保存手段として優れた基盤になるが、分散型エコノミー向けのアプリケーションや仕組みを作ろうとしている人たちはPoSへの移行を続けるだろう。

PoSブロックチェーン全体の魅力や開発者の活動の結果として、普及は急拡大を続け、ビットコインやステーブルコインとは一線を画したものになるだろう。

ビットコインに関連した投資プロダクトが今、市場にいくつも登場していることは、次の事実を反映している。つまり、ビットコインとして保有されている膨大な富は、PoSブロックチェーンで利益を生み出すための新しい方法を求めている。

PoSは、常にイーサリアムブロックチェーンや他の多くのプロジェクトにとって目標だった。その過程において、ある程度の冷笑は不可避であり、PoSネットワークの進歩に失敗がなかったわけではない。しかし今、理論は現実となっている。

筆者のティム・オギルビエ(Tim Ogilvie)氏は、機関投資家、取引所、カストディアン、ウォレット向けステーキングインフラを運営するStakedのCEO。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:ティム・オギルビエ氏(写真右、CoinDesk archives)
原文:Proof-of-Stake Was Bigger Than Eth 2.0 in 2020