機関投資家のビットコイン参入、新たな可能性を広げるイーサリアム【CoinDesk 4Qレビュー】

2020年をこんなふうに総括することができるだろう。

1月~3月期が市場混乱の四半期で、4月~6月期はビットコインの半減期。7月~9月期には、ステーブルコインと分散型金融(DeFi)が急速に成長した。10月~12月期、ビットコインに対する機関投資家のFOMO(機会を逃すことへの恐怖:fear of missing out)が強まり、イーサリアムがPoS(プルーフ・オブ・ステーク)ブロックチェーンへの野心的な移行の第1段階をスタートさせた。

最新の「CoinDesk Quarterly Review」では、2020年第4四半期におけるビットコインとイーサリアムの強力なストーリーにまつわるデータとその経緯、そしてそれらが価格に与える意味を検証している。

機関投資家、ビットコインに参入

2017年のビットコイン価格の上昇は、主に個人投資家の熱狂によるものだったが、昨年は機関投資家が価格の勢いをけん引した。

大規模な機関投資家が、ビットコイン投資をポートフォリオ資産として公に発表することが加速度的に増えていることは、ビットコインのポートフォリオにおける役割を証明しただけではなく、他の投資家の注目も集めている。法定通貨とインフレをめぐる経済の不確実性が高まっていることを考えると、2021年も現在の状況が続く可能性が高い。

ビットコインに参入した機関投資家、大物投資家

出典 : CoinDesk Research

12月最後の数日、ビットコインの価格高騰は、すでに大幅な上昇を示していた1年間の有終の美を飾り、ほとんどの資産を上回る300%の上げ幅を記録した。ただし、イーサリアム(ETH)の驚異的な470%という数字には及ばなかった。

ビットコイン、イーサリアム、他の資産のパフォーマンス


黒:ビットコイン、青:イーサリアム、赤:S&P500、黄:ゴールド、灰:債券
出典 : CoinDesk Research, St. Louis Fed, Yahoo Finance

機関投資家の関与の増加を示唆する指標は、大口保有アドレスの数だ。「くじら」と呼ばれる、1000BTC以上を保有するアドレスの数は、ひとつ前のビットコイン値上がりのピークであった2017年末に比べて30%以上増加し、市場において潤沢な資金を持った投資家の存在が増していることを示している。

1000ビットコイン以上を保有するアドレス数

出典 : Coin Metrics

さらに、もう1つの指標は、機関投資家に特化したシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の取引高だ。CMEのビットコイン先物の建玉(未決済の契約総数)は、昨年第4四半期に約300%増加し、四半期のはじめには先物市場で5位だったが、12月30日時点で最大規模となった。

CMEでのBTC先物の建玉、取引所別のBTC先物の建玉

出典 : skew.com

イーサリアム、可能性を拡大

第4四半期、イーサリアムブロックチェーンは市場インフラの成長という点で力強い前進を見せ、長く待ち望まれた12月1日の「イーサリアム2.0」のスタート(フェーズ0)は、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)ブロックチェーンへの移行への大きな一歩となった。

2020年のイーサリアムの主な出来事

出典:CoinDesk Research

スタートに成功した今、イーサリアム2.0の開発者は、ネットワークに数万人の新たなバリデーター(検証者)を参加させることに注力している。

目標は、次の開発段階であるフェーズ1に進む前に、イーサリアム2.0ネットワークの安全性を確保するために、最低26万2144のバリデーターを確保すること。1月6日時点では、約20%に達している。

イーサリアム2.0のステーキング金額(預かり金額)

出典:Glassnode

これまでの経緯を振り返ると、イーサリアムブロックチェーンのアクティブアカウント数のピークは、市場のピークと一致していた。だが、イーサリアム(ETH)価格が2018年1月以来初めて1100ドルを超えた直近の価格上昇の際、アクティブアカウント数の増加は見られなかった。

アクティブアカウント数は上昇傾向にあるが、イーサリアム価格が1400ドルに迫っていた2018年に記録した71万4255よりもまだ30%以上少ない。

これは、このところのイーサリアム価格の上昇は、実際のユーザーの活動や普及の進展ではなく、市場の投機によって促進されている可能性があることを示している。

イーサリアム価格とアクティブアカウント数

出典:Glassnode, Coin Metrics

イーサリアムブロックチェーンのトランザクションのすべてにイーサリアム(ETH)の送金が関係しているわけではない。

そこには、ERC-20やERC-721トークン(イーサリアムブロックチェーン上で独自のアプリケーションやユースケースを構築するための暗号資産)の送金が含まれている可能性がある。

さらに、イーサリアムブロックチェーンでの取引のすべてがユーザーによって行われているわけでもない。一部は、分散型アプリ(Dapp)を機能性を構築しているスマートコントラクトによって自動的に行われている。

2020年、ユーザーではなくスマートコントラクトによって送金されたイーサリアム(ETH)は、2016年に記録した過去最多の数の2倍にのぼった。これは、価値のやりとりのためのネットワークとしてよりも、Dappプラットフォームとしてのユースケースが成長したことを明確に示している。

スマートコントラクトが送金したイーサリアム

出典:Coin Metrics

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|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:skew.com
|原文:Bitcoin Goes Institutional, Ethereum Spreads Its Wings: CoinDesk Q4 2020 Review