「マイナー(マイニング事業者)が売りに出ている」──ビットコイン価格がときおり下落した際によく耳にする説明だ。
ビットコインが先週初めに30%近く反落した時、価格下落の原因がマイナーによる売却だとする見方が聞かれた。しかし、グラスノード(Glassnode)が収集したデータを米CoinDeskが分析したところ、マイナーの売り姿勢は数カ月にわたって一貫していた。
過去6カ月、ビットコインは330%以上上昇したにもかかわらず、マイナーのウォレットから取引所への週あたりのビットコインの移動数はさほど変わっていない。唯一の変則的な動きはビットコイン反落のかなり前だった。
CoinDesk Researchによると、マイナーは2020年7月以降、取引所に月平均2100ビットコインを送っている。
コイン・メトリックス(Coin Metrics)のシニアアナリスト、カリム・ヘルミー(Karim Helmy)氏は、この分析内容に同意しつつ、マイナーの売りの増加を示すデータはないと米CoinDeskの取材で語った。
「マイナーのウォレットからのビットコインの移動数は安定している」(ヘルミー氏)
マイナーの売却数はわずか
変則的な動きを示した12月26日〜30日、マイナーのウォレット残高は異例かつ大幅に減少し、4日間で残高は2万1000ビット(1%)減少した。
しかし、こうしたビットコインの移動は反落にはつながらず、ビットコインは結局、2万6000ドルから2万9000ドルに上昇した。さらにその後の9日で43%上昇し、一時4万2000ドルをわずかに下回る付近で史上最高値を更新。その後、1月11日午前に30%近く値を下げた。
グラスノードのデータによると、移動したビットコインは取引所には送られていなかったようだ。
この4日間で取引所がマイニング事業者のウォレットから受け取ったビットコインは2400を下回り、マイニング事業者のウォレットから移動した2万1000よりもはるかに少ない。
とはいえ、マイナーから取引所に送られたビットコインがすぐに市場で売却されたとしても、その量は1日の取引高のほんのわずかに過ぎない。
マイナーは昨年12月26日、1890ビットコインを取引所に送った。これはその時点で約4800万ドル(約50億円)に相当し、2020年、1日で最大の送金数となった。
同日、大手暗号資産取引所のバイナンス(Binance)では、ビットコインとステーブルコインのデザー(USDT)の取引高は14万8000ビットコインを超えた。つまり、マイナーがここでビットコインを売却したとしても、わずか1.3%にしかならない。
売却よりむしろ貯める
実際、大手マイナーはビットコインを売却するのではなく、保有高を増やしており、グラスノードによると保有高で1位と2位を占めるF2プール(F2Pool)とルビアン(Lubian)のビットコイン保有残高は、この8カ月間で一貫して増加している。
「どのアドレスをチェックしているのか、私にはわからない」とプーリン(Pooling)のケビン・パン(Kevin Pan)CEOは述べ、マイナーの売りの著しい増加を示すデータは「おそらくフェイクデータだ」と指摘した。
スラッシュ・プール(Slush Pool)は、参加しているマイナーが受け取ったビットコインをどう使っているかを詳細には追跡していないが、エンジニアでテクニカルライターのダニエル・フラムキン(Daniel Frumkin)氏は「マイナーの多くはビットコインを保有し、コストを支払ったり、リスク管理に必要な分だけ、一部を売却していると思う」と述べる。
つまり、価格が大幅に上昇した時、マイナーは必要経費などのために売却するビットコインをより少なくすることができ、実際にそうしている。価格の上昇によって、ビットコインマイニングの利益が上昇していることは言うまでもない。
誰が売っているのか
このところの下落は、主にアメリカの投資家による利益確定が原因となっている可能性が高い。
例えば、資産運用のグッゲンハイム(Guggenheim)のスコット・マイナード(Scott Minerd)最高投資責任者(CIO)は今月10日、ビットコインに触れつつ「投資の一部をお金に換える時だ」とツイートした。マイナードCIOはひと月前にはCNBCでビットコインは40万ドルまで「上昇するだろう」と述べていた。
同じ週末から11日にかけてのコインベース(Coinbase)での大幅な売りもまた、アメリカの投資家による利益確定を示している。
なにが拍車をかけたかはさておき、ビットコインの直近の反落は、マイナーの売りによるものではなかった。実際、マイナーはビットコインをより多く貯めようとしている。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Miners Aren’t Responsible for Recent Price Dips, Data Shows