イーサリアムの価格動向をデータで読み解く──クジラは急増、取引所残高は減少

暗号資産「イーサリアム(ETH)」が史上最高値を更新したが、価格の勢いは大口投資家が支えているようだ。

「クジラ」と呼ばれる1万イーサリアム以上を保有する大口ウォレットのアドレス数は24日、13カ月ぶりの高水準となる1103まで増加した。ブロックチェーン分析のグラスノード(Glassnode)がまとめたデータで明らかになった。1月だけで35以上、11月中旬以来で75のクジラが誕生した。

潤沢な資金を持つ投資家による積極的な購入が、イーサリアム価格に上昇圧力を加えたようだ。

1万イーサリアム以上を保有するアドレス数
出典:Glassnode

CoinDesk 20のデータによると、イーサリアムは今月24日、史上最高値となる1450ドル(約15万円)まで値を上げた。

小口投資家もこの流れに乗っているようだ。ゼロではないアドレス、および0.1イーサリアム以上を保有するアドレス数はどちらも記録的高水準に達している。

しかし、1人のユーザーが複数アドレスを管理することもできるため、アドレス数だけで結論を出すことには注意が必要だ。データは新規と既存の投資家の資金がイーサリアム市場に流れ込んでいることを示しているようだ。

供給不足

またデータはイーサリアムが中央集権型取引所から離れていることも示している。あるアナリストによると、これは供給不足を生み出し、さらなる価格上昇を促進している可能性がある。

取引所のイーサリアム保有残高は週末、2019年10月以降の最低水準となる1546万9582まで減少。取引所の保有残高はこの4日間で100万以上減少している。

取引所のイーサリアム保有残高
出典:Glassnode

さらに20日、取引所から66万6689イーサリアムが移動した。これは2019年5月以降、1日としては最大の移動量となった。

「イーサリアムが取引所から移動していることは強気要因。供給の減少は価格をさらに上昇させ、供給危機を作り出す。大口投資家が買い集めていることは明らか」と、トレーダーでアナリストのアレックス・クルーガー(Alex Kruger)氏はコメントした。

中央集権型取引所からイーサリアムが移動していることは、ビットコイン(BTC)と同様に、投資家が直接保有していることを必ずしも意味しない。

一部のトレーダーは、イーサリアムを分散型取引所(DEX)や流動性プールに預け入れている可能性が高い。利回りを稼ぐためにイーサリアムを「ステーキング」している人もいるだろう。

ステーキングは、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)ブロックチェーン上での取引検証に参加して報酬を得るために、暗号資産を預け入れることを意味する。イーサリアムは、PoSへの移行の第一弾として、昨年12月にビーコン(Beacon)チェーンの運用を開始した。

次の動きは?

「イーサリアムの上昇に向けての動きはまさに今、始まっている。2021年上半期には大幅な上昇が期待できる」と、香港の暗号資産投資会社ケネティック・キャピタル(Kenetic Capital)のジェハン・チュー(Jehan Chu)CEOは述べ、ステーキングの増加とDeFi(分散型金融)の成長がイーサリアムの需要を自然と高めていると説明する。

DeFiに預け入れられたイーサリアムは、この15日間で661万5000から700万2000へと増加した。だが、DeFiパルス(DeFiパルス)によると、この数字は1月はじめに記録した730万、2020年に記録した977万1000には及ばない。

オプション市場も強気心理を示している。スキュー(Skew)によると、1カ月、3カ月、6カ月のプット・コール・スキューはゼロを下回っており、これはコール(強気の投資)が、プット(弱気の投資)を上回っていることを示している。

イーサリアムのプット・コール・スキュー
出典:Skew

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Glassnode
|原文:Big Investors Stacked Up Ether as Price Rose to Record High