ビットコインは4万1000ドル超えという記録的な史上最高値を記録し、2017年のバブル時期の最高値1万9783ドルをはるかに上回った。その後、比較的速いペースで下落し、市場に価格の不透明感が漂っている。
今、なぜこうしたバブルが生まれるのか、そしてビットコインの将来にとって何を意味するのかを考えるチャンスだ。
ビットコインの無料広告
価格ボラティリティは市場に不確実性をもたらし、しばしば有害なものと見なされる。しかし、ビットコインにとって、昨年末からのバブルや2017年と2019年のさまざまな規模のバブルは、究極的には暗号資産の将来にメリットをもたらす。なぜなら、将来有望なこのテクノロジーの普及を促進するからだ。
筆者のヤンハオ・マックス・ウェイ(Yanhao “Max” Wei)氏は、南カリフォルニア大学マーシャルビジネススクール(USC Marshall School of Business)のマーケティングの助教授。
ある意味では、バブルはビットコインの無料広告と言えるだろう。
主要メディアには価格上昇を伝えるニュースが飛び交い、ソーシャルメディアには口コミが広がる。その後すぐに人々はビットコインについて、そして、この動きに乗るかどうかを考え始める。
この現象は、USCマーシャルカレッジの同僚のアンソニー・デュークス(Anthony Dukes)氏とともに行った研究で明らかになった。研究では、商品普及の標準モデルとマクロ金融経済を組み合わせて、暗号資産についての新しい視点を導き出した。
暗号資産(仮想通貨)市場においては、価格バブルと普及は相互に補強し合っている。
人々の関心と価格上昇
実際、ビットコインのグーグル(Google)検索数は、2013年11月と2017年12月に価格が当時のピークを迎えたのと同時にピークを迎えた。
現在の価格高騰においても、すでに我々は 「ビットコイン」「ブロックチェーン」という単語の検索数が急増していることをGoogleトレンドで確認済みだ。
人々の関心は、ビットコイン価格の急騰とともに急上昇している。我々の調査では、こうした関心の急上昇はビットコインのユースケースの拡大に関係している。例えば、2013年11月、匿名での取引を可能にしたShared Coinの導入などだ。
さらに、ビットコイン・ウォレット・アカウント数の推移を見ると、2017年12月頃にアカウント数は急増、これはGoogleトレンドのピークと一致している。
関心と普及の加速は、ビットコイン価格に大きな影響を与える。より多くのユーザーにとって、ビットコインは交換手段として、より大きな役割を果たすようになり、その結果、さらに多くの人をビットコインに惹きつける。成長の期待が投資家をビットコインに惹きつけ、価格を押し上げる。
そうした動きは、価格バブルがビットコインのユーザー拡大を加速させる強力なループとなり、その期待が価格バブルをさらに大きくする。
ビットコイン価格は、なぜこれほど大きく変動するのかという疑問には、こうした強力なループを念頭に置いて答えるべきだ。
価格上昇の「目新しさ」
本質的に、ビットコインバブルに注目が集まることはメリットがある。なぜなら投資家の参入は、ビットコインの流動性を高め、決済手段としてのより広い普及と、迅速な交換を促進するからだ。流動性不足は新しい通貨の普及にとって、最大のハードルだ。
だから、価格上昇の「目新しさ」は重要と言えるだろう。
価格が新たに上昇し始めると、多くの人たちがビットコインを知り、ウォレットのアカウントを作るほどの興味を持つ。価格上昇が目新しいものではなかったら、これほどの興奮と関心を集めることはないだろう。
某ブランドが限定版のシューズを発売し、シューズに関する盛り上がりは、それ自体が注目を集めることを考えてみればわかる。
バブルと普及の相互作用
ビットコイン自体とは別に、大きな価格バブルへの関心は、ビットコインを支える技術、つまりブロックチェーンの普及を加速させた可能性がきわめて高い。
ブロックチェーンは暗号資産以外の多くの用途に期待されている。本質的に、あらゆる種類のデータや記録を保護する技術であるブロックチェーンは、サプライチェーン、不動産、医療など、多くの分野で活用されている。
学者は、価格バブルと普及をファイナンスとマーケティングという2つの別々の問題として捉えがちだ。我々の研究は、この2つの相互作用の重要性を提起している。
悪名高い価格ボラティリティとバブルは、ビットコイン支持者の大いに受け入れられるかもしれない。それらはビットコインユーザーの世界を広げ、ビットコインのユースケースを拡大していく。
|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Bubbles Are Good for Bitcoin