追記:記事掲載後、バイナンスのCEO、ジャオ・チャンポン(Zhao Changpeng )氏はツイッターでバイナンスがロールバックアプローチをとらないことを発表した。
@JeremyRubin、@_prestwich、@bcmakes、@hasufl、@JihanWuなど、様々な関係者と話し合った結果、 我々は「リオルグ(reorg、再編成)」アプローチを取らないことを決断しました。検討した事項は次のツイートに記載します。
2019年5月7日(現地時間)に約7000ビットコイン(約45億円)相当のハッキング被害を受け、仮想通貨取引所バイナンス(Biance)のCEOジャオ・チャンポン(Zhao Changpeng )氏はツイッター上でライブ動画配信を行った。その中で、チャンポン氏は、ハッキングされた資産を回収するために、ビットコイン・マイナーやノード・オペレーターにビットコインブロックチェーンの「ロールバック」を促す可能性を示唆した。
ロールバックとは、ネットワークが承認したトランザクションを巻き戻すことで、主要マイナー、およびマイニングプールの合意を得て、ネットワークの総ハッシング・パワーの51%以上を集める必要がある。
ジャオ氏は5月8日午前3時(協定世界時間)に開いた「Ask-Me-Anythin(なんでも聞いて)」セッションの中で、ハッキングに関する質問に対する返答としてロールバックについて言及した。
バイナンスがビットコイン・ネットワークのステークホルダーたちにロールバックを依頼することを検討しているかという質問に対して、ジャオ氏は以下のように答えた
「正直なところ、我々はおそらく数日以内にこれ(ロールバック)を実行することができるだろう。しかし、ビットコイン・ネットワーク上でこの規模のロールバックを行なった場合、ビットコインの信用を損なうといった、負の結果をもたらす懸念がある」
ビットコインを支える、分散された個人のネットワークに一企業が助けを求めるという、この未だ前例のない手続きは激しい批判を浴びている。
産業およびコミュニティー全体の合意なしでネットワークのロールバックを試みることは、実質的に、不変とされるビットコイン・ネットワークに対する攻撃と多くの人にみなされる可能性が非常に高いだろう。
しかし、これは唐突な案というわけではない。ロールバックは、これまでに取引所がハッキング被害にあった際に提案されてきた案であり、小規模なものではあるが、実際に実施したブロックチェーン・ネットワークも存在する。また、この会話が始まったきっかけには、過去にビットコインのオープンソースコード開発に参加していた開発者、ジェレミー・ルービン(Jeremy Rubin)氏も関与している。
誤解のないように説明すると、トランザクションを実際に巻き戻すのは、ノード・オペレーターやマイナーであり、ルービン氏がこの状況において、権威的存在とみなされるべきというわけではない。しかし、ルービン氏がこの案に関与していることは、これがネットワーク開発者によって提案されたものだというジャオ氏の印象に寄与しているようだ。
ジャオ氏は、この案に対して反発を受ける可能性を指摘し、「ビットコインネットワークの倫理および信用面における懸念」が存在するため、多くの人がロールバックに反対するのを今まで見てきたと付け加えている。
「弊社のチームはまだ検討している段階で、試算をしたり、全ての確認をしている最中です」と同氏は語った。「この案がビットコイン開発チームのコアメンバーの一部を含む、コミュニティから提案された技術的なソリューションだというのが興味深いです。我々はこの案を、我々に届いているフィードバックも踏まえながら、細心の注意を払って検討するつもりです」
バイナンスは現在、取引所システムの再構築・復旧に専念しているため、全ての入金・出金を停止していると同氏は付け加えた。再開には「約1週間かかる」見込みだそうだ。
今のところ、新たに漏えいしたホットウォレットアドレスは見つかっていない。ジャオ氏によると、ハッカーたちは、高度な方法を使って、ユーザーのアカウントへのアクセスを得た。そして、「1つのアカウントを手に入れ次第すぐに動くのではなく、巨額の資産が入ったアカウントが大量に集まるまでに待つ」という、辛抱強さが見られるハッキングを実行した。
同氏はライブ動画配信の中で、「大きな打撃」ではあるが、同社の「Secure Asset Fund for Users(SAFU基金)」には、ユーザーが失った4000万ドルを補てんするのに十分な蓄えがあると語っている。
同社は昨年の7月以来、取引手数料の10%をSAFU基金に積み立ててきた。CoinDeskは同社に同基金の総額を問い合わせたが、返答は得られなかった。
バイナンスは四半期利益の20%を使用して、バイナンス(BNB)・トークンを「バーン(流通している仮想通貨の量を減らす)」している。バーンされたBNBの量を踏まえると、同社は昨年7月から3月にかけて2億1000万ドルの利益を計上している計算になる。
翻訳:Yuta Machida
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Binance image via Shutterstock
原文: Binance Considered Pushing for Bitcoin ‘Rollback’ Following $40 Million Hack