米ドルに連動するステーブルコインの「USDコイン(USDC)」と「ダイ(DAI)」の取引所における残高が1月最終週に、過去最高を記録した。データサイトのグラスノード(Glassnode)がまとめたデータでわかった。
残高の増加は、暗号資産(仮想通貨)市場全体における強気のサインだとする見方がある。2つのステーブルコインを利用して、暗号資産を購入しようという買い手の計画を反映している可能性がある。
グラスノードによると、USDコインの取引所残高は1月29日、9億1500万ドル(約960億円)を超え、ダイの取引所残高は31日に8100万ドル(約85億円)を突破した。
取引所のUSDコインは、ビットコイン(BTC)などの「別の暗号資産に対する10億ドル近い購買力を意味する。この高い数値は、下落局面においても暗号資産の買いが入るという投資家の自信を高めるだろう。強気のサインだ」(グラスノード)。
一部のアナリストは、ビットコイン価格の複数のオンチェーンデータが、この数週間にビットコインは強気トレンドに向かうことを示していると考えている。例えば、取引所のビットコイン残高の減少は、供給が枯渇していることを示している。
暗号資産購入のファーストステップ
暗号資産の取引において、トレーダーや投資家はしばしば、ステーブルコインを利用する。米ドルに裏付けられたステーブルコインを購入することは、他の暗号資産を購入するために必要なファーストステップとなる。
「USDコインの取引所残高の増加は、USDコインは取引に使う通貨に適していると考えるトレーダーが増えていることを表している。暗号資産への新しい資金移動の多くが、取引所での動きから始まる事実を反映している」とサークル(Circle)の共同創業者兼CEO、ジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は広報担当者を通じてコメントした。
1月のUSDコイン発行数は「記録的レベル」だったと同氏は指摘する。サークルと大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)は、USDコインを発行するセンター(Center)を運営している。
グラスノードのデータによると、USDコインの流通量は今月はじめに40億ドル弱から50億ドル以上まで増加した。昨年10月に伸びが鈍化して以来の急激な増加となった。
機関投資家が好むステーブルコイン
取引所での動きが活発になっていることは、取引所のユーティリティトークンが大幅に上昇していることにも反映されている。中央集権型取引所のバイナンス(Binance)とFTX、分散型取引所のユニスワップ(Uniswap)とスシスワップ(SushiSwap)では、それぞれの取引所トークンが先週、史上最高値を更新した。
米CoinDeskはダイを発行しているメイカーダオ(MakerDAO)にもコメントを求めているが、当記事執筆時点でまだ返答はない。
CoinDeskがまとめたチャート(上)を見るとテザー(USDT)は最近、発行元に関する話題が物議を醸しているにもかかわらず、依然としてNo.1ステーブルコインだ。時価総額は270億ドルを超えているが、取引所残高は大きく変動している。
「(暗号資産市場に)新たに流入している資金は、この市場に参入してきたばかりの機関投資家から来ており、透明性と信頼性が高く、認可を受けたドル連動型ステーブルコインを好む傾向が強い」とサークルのクレアCEOは述べた。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:サークルの共同創業者兼CEO、ジェレミー・アレア氏(Circle)
|原文:Bullish Sign for Crypto? USDC and Dai Balances on Exchanges Hit Record Highs