アメリカの株式市場で起きたゲームストップ(GME)株の取引を巡る騒動は、中国でも起きる可能性はあるのだろうか?
1月末の米株式市場の混乱は中国の暗号資産コミュニティを刺激し、ドージコイン(dogecoin/DOGE)やビットコイン(BTC)の上昇につながったと言われている。しかし、時に大胆な行動を取るトレーダーでさえ、中国の株式市場で大規模な空売り取引が行われる可能性は低いだろう。
「中国の金融規制当局は、同国の株式市場における取引状況を厳しく監視している。大規模で悪質な空売りに関与した個人投資家は刑務所に入れられる可能性がある」と暗号資産レンディング企業、DeFinerのジェイソン・ウー(Jason Wu)最高経営責任者(CEO)は述べる。
「中国の暗号資産市場の時価総額は株式市場に比べると小さい。そのため当局の監視はすべて株式市場で破壊行為を行う者に向けられている」(ウーCEO)
空売りに厳しい中国の規制当局
金融規制当局の中国証券監督管理委員会(CSRC:China Security Regulatory Commission)は2015年の株価暴落以来、空売りを厳しく監視し続けている。
上海の取引所では2015年、中国本土に拠点を置く公開企業の株式であるA株の価値の3分の1が1カ月で失われ、上場企業の半数以上がさらなる損失を防ぐために取引停止を申請した。
歴史的な暴落の原因はいまだに不明だが、一部の著名エコノミストは、当時の危機的状況を招いたのは空売りが原因だと批判した。
「2015年の市場の暴落前に強気相場を終わらせたのは、信用取引と空売りだった」と、中央財経大学金融研究所の研究員、シュウエイ・リュウ(Shuwei Liu)氏は2015年7月に、「中国株の空売りは厳罰に処すべき」と題したコラムで述べている。
「A株はまだ新興市場。CSRCはレバレッジ・ツールを管理下に置くことはできない。このような状況で空売りを自由にさせる環境をつくることは、違法なA株の空売りトレーダーに武器を与えているようなものだ」とリュウ氏は指摘する。
CSRCは2010年3月に信用取引と空売りを許可していた。
中国人民銀行(中央銀行)は、海外の金融機関が中国株を大量に空売りすることで市場を操作していると避難し、米投資銀行のモルガン・スタンレーが中国の株式市場のトラブルの一因だと主張した。
SNSでの協調的な動きも不可能
「中国の個人投資家は技術的には空売りを小規模に行うことは可能だが、金融規制当局は中国の株式市場でゲームストップ株のショート・スクイーズ(空売りの締め上げ)のようなことは許さない」とDeFinerのウー氏は言う。
中国の個人投資家がゲームストップ株騒動のような協調的な動きを取ることは、論理的に困難。ゲームストップ株騒動で重要な役割を果たしたのは、人気掲示板サイトの「レディット(Reddit)」で、匿名のユーザーが集まり、割安株の空売り戦略について議論することができる。
中国に個人投資家は約1億7700万人いると言われ、株式市場の時価総額の28.6%を保有するという。その大部分は、ウィーチャット(WeChat)やQQ、微博などのソーシャル・メディア・プラットフォームでグループを作り、情報共有を行うことができる。しかし、そこではモデレーターがプラットフォーム上の「違法コンテンツ」を検閲することができる。
「多くのテクノロジーに詳しい暗号資産トレーダーとは異なり、多くの個人株式投資家は、『VPN』や『テレグラム』、『シグナル』のような暗号化メッセージングアプリなどを使っていない。大勢の人が『知乎(Zhihu)』のようなQ&Aサイトで空売りについて議論することを許されることは想像できない」とウー氏はレディットでの質問に答えた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
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|原文:Why a GameStop-Inspired Mania Is Unlikely in China’s Stock Market