アップルがもし暗号資産ビジネスに乗り出したら:投資銀行が収益規模を試算

米電気自動車(EV)大手のテスラが15億ドル(約1580億円)の資金をビットコインに投資したことを受けて、ウォール街のアナリストは、米アップルが暗号資産(仮想通貨)市場に参入した場合に得られる利益を試算した。

カナダロイヤル銀行グループの投資銀行、RBCキャピタル・マーケッツ(RBC Capital Markets)がまとめたレポートは、アップルが仮に暗号資産ビジネスに進出した場合、容易に400億ドル(約4兆2000億円)以上の利益を得る可能性があると試算。

新型コロナウイルスのパンデミックが始まり、非接触のキャッシュレス化が一層進展するなか、アップルはすでに数百万ものユーザーに決済用ウォレットを提供している。アップルが暗号資産事業に参入すれば、今後10〜20年でアメリカを暗号資産における技術的リーダーに押し上げることにつながるだろう(同レポート)。

スクエアの7倍近い規模

米決済大手スクエア(Square)は、約3000万のユーザーから四半期ごとに約16億ドル(約1680億円)のビットコイン関連収益をあげていると、RBCのアナリスト、ミッチ・スティーブス(Mitch Steves)氏は推測。

「アップルのユーザー数は15億人、仮に2億のユーザーが取引を行ったとしても、スクエアより6.66倍大きな規模になるだろう。潜在的な収益規模は1年に400億ドルを超える(収益は15%増となる)」(同レポート)

また、暗号資産事業に参入するための研究開発コストに関しては、「我々の見解では最小限で収まる。スクエアの研究開発予算は総額で10億ドル(約1050億円)未満」としている。

暗号資産取引所間の競争は「激しいものではない」とアナリストは述べる。規制によって、暗号資産の購入はアメリカの消費者にとって手間がかかるものになり、取引所の多くは、取引高が増えた時にはダウンしてしまうとアナリストは指摘した。

閉じたシステム

またアナリストによると、アップルユーザー間のみで暗号資産をやり取りする閉じたシステムを作れば、アップルは規制や顧客確認(KYC)をめぐる問題を解決できるという。

さらに、ライトニングネットワークなどを使ったオープンシステムを開発すれば、法定通貨と暗号資産を交換するコストの削減も可能になるとアナリストは述べた。

アップルが暗号資産取引所を開設すれば、将来、政府がビットコインを禁止する可能性も小さくなる可能性もあるという。

「アップルが暗号資産ビジネスに参入すれば、アメリカは世界的にみて、最も多くの暗号資産を獲得することになるだろう。アメリカが(ビットコインであれ、他の暗号資産であれ)最も多くの暗号資産を保有することになれば、我々は暗号資産を禁止することは論理的に意味がなくなると考えている。さらに、アップルの安全で世界トップクラスのソフトウェアを使えば、将来、必要になった時にユーザー情報や資産情報を確実なものにすることもできる」

R&D資金はビットコイン投資で

開発資金を調達するための効果的な方法もある。ビットコインへの投資だ。

アナリストは、ウォレットや取引所の開発コスト(アナリストの予測では約5億ドル、約530億円)は、ビットコインを資産に加えることで調達できると述べた。

「例えば、アップルが50億ドル(キャッシュフローの20〜25日分)をビットコインに投資すれば、ビットコイン価格が10%上昇するだけで研究開発コストを調達できる。他のプロジェクトの資金を使う必要はないため、堅実な価値提案になっていると我々は考えている」

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:アップルのティム・クックCEO(Shutterstock)
|原文:Apple Should Launch Own Crypto Exchange, RBC Analyst Says