テスラ、市場が注目したビットコイン投資と中国政府との協議

米電気自動車（EV）大手のテスラが今週、ビットコインへの大規模投資を開示した直前、中国当局は品質と安全性の問題でテスラから話を聞いていると発表していた。

中国の国家市場監督管理総局（SAMR）は8日午後8時（中国標準時）、以下の短い声明を発表した。

「国家市場監督管理総局、国家インターネット情報弁公室、工業情報化部、交通運輸部、応急管理部消防局は、消費者から報告のあった異常な加速と、バッテリーからの発火、無線（OTA）アップグレードについて会議を行った。テスラ・モーターズ社（北京）とテスラ社（上海）は、中国の法律と規制の厳格な遵守、社内管理の強化、品質と安全に対する企業としての主要な責任の遂行、公共の安全の維持、消費者の法的権利と利益の保護が求められている」

特に2つの点に注目すべきだ。

第1に、テスラは中国政府と良好な関係を持っていることで知られている。同社は、中国で100％自社所有の工場を運営する初の海外自動車メーカーである。

第2に、中国当局の声明は、テスラが米証券取引委員会（SEC）に年次報告書（10-K）を提出した（米東部時間7時30分頃）時刻より少し前に発表されたことだ。

ビットコイン投資と中国での品質問題

テスラの株価は8日、1.3%上昇した。これにはビットコイン投資の発表が大きく関係しているだろう。ビットコインはこの日、史上最高値を更新。テスラのビットコイン購入に関するニュースが報じられてからわずか1時間で、4254.48ドル（約44万円）も値を上げた。

ブルームバーグなど複数のメディアは、中国政府の声明を伝えていたが、テスラの株価とビットコイン価格の大きな値動きに打ち消されるかたちとなった。テスラのビットコイン投資と中国政府の発表の間に、ある種の関連性を見る市場関係者もいる。

米Business Insiderが伝えたように、映画『マネー・ショート華麗なる大逆転』に登場した投資家のマイケル・バーリ（Michael Burry）氏は、テスラは中国のニュースから投資家の目を逸らすためにビットコインの投資に関する発表をしたのではとツイートした（ツイートはすでに削除されている）。

とはいえ、それまでの経緯を考えると、こうした筋書きが完璧なタイミングで実行されたとは考えにくい。米CoinDeskはテスラにコメントを求めたが、まだ回答はない。

これまでの経緯

テスラのビットコイン投資への動きは、数週間前から始まっていた。経緯を見てみよう。

2020年12月20日8時21分（協定世界時、以下同）：テスラのイーロン・マスク氏は、ビットコインについて一連のツイートを行い、ビットコインは「法定通貨と同じくらいデタラメ」と述べた。それに対して、内部留保で大量のビットコインを購入しているマイクロストラテジー（MicroStrategy）のマイケル・セイラー（Michael Saylor）CEOは、マスク氏にテスラの資産を米ドルからビットコインに換えることを提案した。マスク氏は「そのような大規模な取引はそもそも可能なのか？」とセイラー氏のツイートに返信した。
2021年1月29日8時22分：マスク氏は、ツイッターのプロフィールを「#bitcoin」とした後、「今思えば、必然だった」とツイート。ビットコイン価格を大きく上昇させる結果となった。
2021年2月8日12時：中国・国家市場監督管理総局は、テスラの関係者が、中国の複数の規制当局から呼び出しを受けたと発表。テスラの品質についての消費者からの苦情などを理由にあげた。
2021年2月8日12時27分：SECに提出されたテスラの年次報告書の内容が明らかになった。報告書には、新たな投資方針のもと、同社は合計15億ドルをビットコインに投資し、さらに「デジタル資産を随時、あるいは長期的に取得・保有する」可能性があると記されていた。