NYCで議論深めたある熱狂と緊張──ビットコイン高騰する中、Consensus2019・Day1終了

4,000人を超える参加者がニューヨークに集まる仮想通貨・ブロックチェーンの世界最大級イベント、Consensus2019。その初日の5月13日、ビットコインが8,000ドルを突破する中、参加者の注目は、ある新しい金融サービスへの期待の高まりと、それから生まれる不安に対する緊張に集まった。

同日、比較的に多くの参加者が耳を傾けたのは、「分散型金融(Decentralized Finance=DeFi)」や証券的トークンを用いた資金調達「STO(Security Token Offering)」をテーマにしたセッションだ。

分散型ステーブルコインを開発する「メーカーダオ(MakerDAO)」、セキュリティ(証券的)トークンの発行プラットフォーム「ポリマス(Polymath)」のセッションを始め、仮想通貨やブロックチェーン技術を用いた新たな金融ビジネスを展開する企業のセッションは注目された。

仮想通貨融資スタートアップの「ブロックファイ(BlockFi)」やピアツーピア(P2P)融資の「ダーマ(Dharma)」らが参加した「DiFiを定義する:分散型金融とは何か?」のセッションでは、議論が活発化した。

ブロックファイCEOのMr. Zac Prince氏は「規制が強まり、KYC(顧客確認)の強化によりユーザーエクスペリエンスが犠牲になっている」と述べ、 ダーマCEOのNadav Hollander 氏は「ステーブルコインを使うのは、まだそう簡単ではない」と話した。

写真左から2番目がブロックファイCEOのMr. Zac Prince氏、3番目がダーマCEOのNadav Hollander 氏。

米国・仮想通貨業界をめぐる規制の現状

DeFiやSTOなどの金融ビジネスへの期待が高まる一方で、米財務省・次官によるアンチマネーロンダリング(AML)の取り組みと、米証券取引委員会(SEC)・上級アドバイザーによる仮想通貨取引所のトークン先行販売の規制に関する発言は聴衆の注目を集めた。

米国財務省テロリズム・金融情報分析担当次官のSigal Mandelker氏は、マネーロンダリングやテロの資金調達における事例を挙げながら「送金のスピード、迅速な決済、世界規模での拡大、匿名性の向上など、ユーザーや企業にとって最も魅力的な(仮想通貨の)機能のいくつかは、世界に脅威をもたらすテロ支援国家やテロリストに機会を与える可能性がある」と述べ、制裁やルールの強化を強調した。

Sigal Mandelker氏

米証券取引委員会(SEC)デジタル資産・イノベーション担当の上級アドバイザー、バレリー・シュシェパニャク(Valerie Szczepanik)氏は、発行体や買い手が米国に拠点を置く場合、手数料を徴収してトークン販売を促進する仮想通貨取引所は、証券会社の法的定義の対象になる可能性が高いと述べた。

これはブロックチェーンプロジェクトが発行するトークンを、仮想通貨取引所が先行販売するサービスである「IEO(Initial Exchange Offering)」が、米国の証券法に違反している可能性があることを意味する。

写真右がバレリー・シュシェパニャク氏。
(出典:「SEC’s Crypto Czar Says Exchanges That List IEOs May Face Legal Risks」

「Consensus2019」で語られた新たな金融ビジネスの可能性。その前に差し出されたのは、制裁やルールの強化、規制の徹底だった。

分散型金融への期待

CoinDeskの元リサーチアナリストであり、現在は仮想通貨ヘッジファンド「Tetras Capital」のAlex Sunnarborg氏は、2019年第1四半期の報告書「ステート・オブ・ブロックチェーン(State of Blockchain)」を発表した。その中で、ビットコインのマイニングのハッシュレートが回帰、全Etherの2%を占めるMakerDAOなどによる分散型金融の人気の高まりなどについて解説した。

決済スタートアップの「Flexa」は、Amazon傘下のスーパー大手ホールフーズ・マーケットやサーティワンアイスクリームのバスキン・ロビンスなど、15のブランドで、Flexaネットワーク経由で支払いが可能になったと発表。Consensus2019の参加者向けに、同ネットワークを用いた初のウォレットアプリとなる「SPEDN」のダウンロードを開始した。

出典:「The Flexa network is open for business」

Polymath・共同設立者のTrevor Koverko氏は、規制に準拠したセキュリティ(証券的)トークンの発行を計画する企業向けに設計された新たなブロックチェーンのプラットフォーム「Polymesh」を発表。トークン化されたアセット(資産)の発行プロセスを合理化することで、企業のセキュリティトークン採用を促進する。発表によると、イーサリアム(Ethereum)やカルダノ(Cardano)の共同設立者であるCharles Hoskinson氏が参画するという。

出典:「Polymath, Charles Hoskinson Team Up on Security Token Blockchain」

米CoinDeskが主催する「Consensus2019」は、ニューヨークで開催されるブロックチェーン・仮想通貨をテーマにした世界最大級のカンファレンス。この領域をリードする企業トップや開発者が集まり、2019年5月13日〜15日の3日間にわたりさまざまなテーマで議論やプレゼンテーション、ワークショップ、ネットワーキングが行われる。CoinDesk Japanは5月30日、Consensus2019報告会を開催する。

文:久保田大海
編集:佐藤茂
写真:CoinDesk Japan