88年前に金が没収された4月5日はサトシ・ナカモトの誕生日【オピニオン】

決済システムとしてのビットコインについて、私は短期的には疑問視している。にもかかわらず2週間前の4月5日は、なぜビットコインには価値があるのかを思い出させてくれた。

88年前の1933年4月5日、フランクリン・ルーズベルト大統領は、金(ゴールド)の保有を禁止する大統領令6102号に署名した。ウィキペディアによると、アメリカ人は「保有している金貨、金地金、金証券をわずかな量を除いてすべて」ドルと引き換えに強制的に没収され、違反した場合は多額の罰金や懲役が課された。

1974年まで廃止されなかったこの大統領令の市民の自由への影響は、疑う余地もないほど恐ろしい。

「100年足らず前のアメリカでは、金を保有することは違法だった。金があなたの家にあることは違法だった。驚くべき事実だと思う」とビットコインユーザーで教育者の「6102 Bitcoin」は述べた。

これが自由の国で起きたことと、最近の市民資産没収法(civil asset forfeiture laws)の乱用は、ビットコインなどの暗号資産が(私の言葉ではなく、批判者の言葉だが)「何の裏付けもなく」「本質的価値」を持たないにもかかわらず、価値を持つ理由を強調している。

つまり、暗号資産は簡単には没収されない。ウォレットは暗号化された秘密鍵によって管理され、当局に召喚される可能性のある中央集権的管理者によって管理されてはいないからだ。

補足すると、私は暗号資産ユーザーが「法を超越している」と言いたいわけではない。裁判所命令にもかかわらず、秘密鍵を手放すことを拒否した個人は、依然として刑務所に入れられるだろう。

暗号資産は、こうして個人の力をわずかだが取り戻す。

ビットコインの謎の生みの親「サトシ・ナカモト」が、4月5日を自分の誕生日としていることは偶然ではないかもしれない。

同じことは再び起こる?

これは不安だが、興味深い問題を提起している。政府は大統領令6102号でビットコインを没収できるだろうか?

世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者兼共同会長のレイ・ダリオ(Ray Dalio)氏はそのリスクを考えている。

「どの国もお金の需要と供給のコントロールを独占することをきわめて重視している。他のお金が流通したり、競合したりすることを望んでいない。なぜなら、事態がコントロールできなくなるからだ。つまり、ある種の状況下では、ゴールドが非合法化されたように(ビットコインが)非合法化される可能性はきわめて高いと考えている」とダリオ氏はヤフーファイナンス(Yahoo Finance)のインタビューで語った。

ダリオ氏は、インドはすでにこの方向に進んでいる可能性があり、取引の公開台帳を使って政府は資産の保有者を特定することができるだろうと指摘した。

前述の6102 Bitcoinはこの件について、以下のように述べている。

「こうした規制や没収の試みは、複数の理由から効果的だとは思わない。まず、ビットコインは光の速さで移動する(10分の遅れはある)。規制の策定には時間がかかり、ほとんどの国ではビットコインを没収するためには投票が必要になるだろう。投票が行われる前に、ほとんどのビットコイン保有者は規制の届かない国外にビットコインを移動させている」

「第2に、ビットコインはさまざまな規制下で運営されている多数の関係者によって管理されているため、こうした没収は実行不可能だ。最後に、ビットコインはわかりやすい場所に隠すことができる」

例えば、一部のハードウェアウォレットでは、2つめのパスワードを持つ「隠しアカウント」を作成でき、ユーザーは強要されたときに、保有する暗号資産の一部のみのロックを解除できる1つ目のパスワードだけを渡すことができる。

ビットコインがスーパーやクリーニング店で使えないとしても、当局に野放図に没収されるようなことは起こらないだろう。

|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:フランクリン・ルーズベルト大統領(U.S. National Archives and Records Administration)
|原文:‘Satoshi’s Birthday’: April 5 Is a Day to Be Thankful for Bitcoin