メッセンジャーアプリを提供するキック(Kik)の創業者兼CEO、テッド・リビングストン(Ted Livingston)氏は、米証券取引委員会(SEC)が未登録の有価証券販売だと主張するトークンセールについてのやり取りで、500万ドル(約5億5000万円)費やしたと述べている。
2010年創業の同社は、仮想通貨キン(kin)およびそのプラットフォームのために、2017年の終わりに新規コイン公開(ICO)を実施し、9800万ドルを調達した。このコインセールに対して、SECは米証券法に違反している可能性を指摘しており、SECスタッフは同社に対して法執行措置を勧告するとした。
2019年5月16日(現地時間)、ニューヨークで開催された「Token Summit IV」で、リビングストン氏は、同社とSECは2017年後半から話し合いを続けているが、この執行措置はまだ取られていないとCoinDeskに語った。
「我々はこの件に大量のお金を費やしています。500万ドル以上です」と同氏は述べた。「また、時間もかなり割いています。ここ18カ月間は、ワシントンに出向くことに時間を費やしました」
2018年11月、SECは、法的措置を取る可能性を通知する「ウェルズ・ノーティス(Wells notice)」を提出した。これを受け、キックは、既存の法律の定義において、通貨は証券ではないと反論した。リビングストン氏は、16日にも同様のコメントを残している。
リビングストン氏は、キンが通貨として使われているという主張を繰り返し、以下のように付け加えた。
「先月だけで、100万人以上が40種類のアプリ、40社でキンを稼ぎました。キンは25万人以上に使用され、世界で最も使用されている仮想通貨です。にもかかわらず、彼ら(SEC)は『これは証券ではない』とすら言うつもりがないのです」
「ただ長引いています」と同氏は語る。
SECに対して、規制のさらなる明確化を求める訴訟を起こすつもりはないとしつつも、SECは明確なガイダンスを提供する必要があると同氏は主張した。
「もう十分です。SECは、もう何年間も明確にすると約束してきました。誰かが法廷に出て、この決着をつけなくてはいけません」
しかし、同氏はSECと協働したいとも述べている。
同氏は、SECを指して、以下のように語った。
「我々はあなた方とウィンウィンな着地地点を見つけたいと考えています。また、あなた方が難しい立場に置かれていることも理解しています。しかし、その一方でイノベーションは先に進んで行かなくてはなりません」
ブロックチェーン・ウィークの間、同氏やその他産業関係者は、不明確な規制が米仮想通貨産業の足を引っ張っている可能性を指摘した。開発者は、開発しているイノベーションやプロセスが規制当局の目にどのように映るのかを判断するために手を止めなくてはならないため、作業の速度が落ちていると同氏は主張している。
SECは今までに1通しか「ノーアクションレター」を発行しておらず、多くの企業が規制措置を恐れているのかもしれない。
もう一つの問題は競争だと同氏は語る。
「バイナンスのように、コインベースを見て『我々も同じことをしよう。ただし、アメリカ以外の全ての国で』と考える企業が存在します。そして今、バイナンスはコインベースを追い抜き、世界最大の仮想通貨取引所の座に立っています」と同氏は指摘した。
「コインベースと同じ目にはあいたくない」
翻訳:Yuta Machida
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Ted Livingston speaks at an event in New York, photo by Brady Dale for CoinDesk
原文:SEC Negotiations Have Cost Kik $5 Million, Says CEO