暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)が14日にナスダックに上場した一方で、一部の保守的な金融機関は、暗号資産がマネーロンダリングなどの犯罪に利用される懸念から、コインベースの株式の扱いを避ける可能性がある。
その代表例がHSBCだ。最近では同行は顧客に対して、企業資産として大量のビットコイン(BTC)を保有するマイクロストラテジー(MicroStrategy)の株の購入を停止して話題となった。
コインベース株(COIN)も避けるのかとの質問に対して、HSBCの企業メディア広報マネージャー、アンキット・パテル(Ankit Patel)氏は次のように回答した。
「HSBCは暗号資産への直接投資に関心はなく、暗号資産から価値を得るような商品や証券への取り組みも限定的だ。これは新しい方針ではない」
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、BNYメロンなどの米大手銀行はいまや、暗号資産の可能性と、顧客の暗号資産に対する投資需要に応じることで競争力を維持する必要性を認識している。とはいえ、暗号資産企業は依然として、銀行の法人口座を簡単に開設することができない。
シルバーゲート(Silvergate)とシグネチャー・バンク(Signature Bank)が米国の暗号資産業界の大部分にサービスを提供している。イギリスや欧州ではクリアバンク(ClearBank)などが同じ役割を果たしている。
イギリスの一部の銀行は、暗号資産関連の上場企業の株取引にも消極的だ。
関係者への取材によると、暗号資産モバイルアプリを手がける「モード(Mode)」(現在はロンドン証券取引所に上場)がIPOに向けたロードショー(機関投資家向け説明会)を開催した際、HSBCとバークレイズ(Barclays)は「暗号資産要素を理由」に同社株を取り扱わないと語ったという。
バークレイズは、コインベース株についてのコメントを控えた。
銀行へのプレッシャー
モードはロンドン証券取引所(LSE)上場に向けて、英金融行動監視機構(FCA:Financial Conduct Authority)の厳格なプロセスを通過したと同社エグゼクティブチェアマンのジョナサン・ローランド(Jonathan Rowland)氏は述べた。
「ファンドの条件や制限のためにコインベース株の取引が許可されない人たち(銀行や資産運用会社)がいても驚きはない。マネーロンダリングに関して、銀行には大きなプレッシャーがかかっており、単に『ノー』と言う方が簡単だ」
2兆7150億ドル(約295兆円)の資産を誇るヨーロッパ最大の銀行であるHSBCが、慎重になっていることはよく知られている。同行はかつてマネーロンダリングにまつわる不手際で約19億ドル(約2100億円)の罰金を課せられ、さらに昨年、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)がその後の対策の不十分さを指摘する文書を公開したことで再び、批判にさらされた。
バークレイズはこの数年で、一度はフレンドリーだった暗号資産企業に対する態度を変えた。バークレイズはかつて、コインベースに銀行口座を提供していた。当時、暗号資産企業にサービスを提供する初めてで、唯一の大手銀行だった。だが2019年半ば、コインベースとの関係を密かに終えていたことが判明した。
バークレイズの元行員で、コインベースの前トレーディング責任者のハンター・メルガート(Hunter Merghart)氏は、HSBCとバークレイズが今もコインベース株を避けることは驚きだと語った。
「元銀行員として考えると、多くの手数料が生まれ、多くのM&AやIPOが生まれる。銀行として『我々は顧客に投資して欲しくない』などと言うことは、そうしたビジネスに取り組み、成功することはきわめて難しくなる」と今は暗号資産取引所ビットスタンプ(Bitstamp)のアメリカ事業責任者を務めるメルガート氏は述べた。
「コインベースの取引銀行にゴールドマン・サックスが選ばれたのは、暗号資産を長年にわたって研究していることが理由かもしれない」
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Add Coinbase to the List of Crypto Stocks HSBC Won’t Touch