オランダに拠点を置く大手総合金融機関INGは、急速に成長しているDeFi(分散型金融)のリスクとチャンスを分析している。
4月に発表されたレポート「Lessons Learned from Decentralised Finance(分散型金融の教訓)」は、DeFiのメリットとデメリットを慎重に検討し、「中央集権型金融サービスと分散型金融サービスが融合すれば、双方のメリットが実現される」と結論づけている。
このレポートについて、INGのブロックチェーン責任者、エルベ・フランソワ氏は、「DeFiは金融セクターにとって、ビットコインよりも破壊的なものになる可能性がある」と述べ、INGはDeFiを視野に入れていると話した。
「DeFiはINGのデジタル資産ビジョンに欠かせない。DeFiを研究することで、新しい世界にどのようなギャップが存在するかを、ミクロとマクロの双方の視点から知ることができる」とフランソワ氏は米CoinDeskに語った。
DeFiは、金融仲介を自動化されたデジタル契約に置き換えるものであり、注目を集めている。すでにイーサリアムブロックチェーンのみで預かり資産は約760億ドル(8兆3000億円)にのぼる。
INGは、機関投資家レベルのカストディ(管理・保管)ソリューションやマネーロンダリング対策(AML)など、銀行業界における暗号資産の取り組みにおいて主導的な役割を果たしている。
DeFiと既存金融が交わる時
DeFiから得られたさまざまな教訓のなかでINGは、スマートコントラクトの利用にまつわる技術的なリスクが、カウンターパーティー(取引相手)リスクの削減に取って代わるというトレードオフを指摘した。
DeFiのボーダレスな性質はINGにとって魅力的とレポートは指摘している。現状の金融機関は異なる国でのさまざまな規制に対応するために多くの時間と費用を費やしているからだ。
「DeFiは現状、限られた領域の話に思えるが、中央集権型金融サービスと分散型金融サービスは、どちらもお互いにとって有益で、ユニークな機能を備えているため、いずれかの時点でひとつにまとまると考えている」
INGは、アンチマネーロンダリング(AML)や顧客確認(KYC)は、金融機関がDeFiを支援できる分野と述べた。
「このようにして、DeFiはAML規制を準拠することができる。だがこれは未知の領域であり、中央集権型の銀行と分散型金融サービスの間のこうした(協力関係の)有効性を判断するためには、さらなるリサーチが必要だ」
分散型融資プラットフォームのAave
INGは、分散型融資プラットフォーム「Aave」をケーススタディに取り上げ、DeFiのさまざまな特徴を明らかにしている。
「パブリックなパーミッションレス・ブロックチェーン上のAaveにおけるビジネスプロセスの自動化は、精度の透明性やスピードなど、従来のマネーマーケットに比べて多くのメリットがある。しかし、スマートコントラクトを使ったマネーマーケットの自動化で得られるコスト効率と、セキュリティの向上というメリットには議論の余地があり、新たな技術的リスクをもたらすと考えている」
Aaveは、機関投資家向けDeFiを検討していることで知られており、銀行業務の専門家を採用し、最近ではエンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(Enterprise Ethereum Alliance)に参加している。
INGがAaveをケーススタディに選んだことに特別な理由があるのかという問いに対して、フランソワ氏はシンプルに「知っていたから」と答えた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
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|原文:DeFi More Disruptive to Banks Than Bitcoin, Says ING