マウントゴックス(Mt. Gox)の民事再生を担当する管財人は、被害者への部分的賠償に向けた次なるステップを踏んだ。顧客資産が消失し、経営破綻した暗号資産取引所のマウントゴックス。6月1日以降、債権者は民事再生の提案を受け入れるかどうか、投票を開始でき、オンライン投票の期限は10月8日までとなっている。
管財人からの通知には、次のように記されている。
「投票しなければ、議決に必要とされる投票数のカウントにおいて、民事再生計画草案に反対票を投じたとみなされる」
提案が可決されるには少なくとも50%の賛成票が必要で、能動的に投票した人の半数以上が賛成だったとしても、提案が通らない可能性もある。
賠償金支払いの仕組み
昨年債権者に送られた書簡によれば、日本円とBTC/BCHで賠償をする提案であった。それぞれの賠償額は日本円建てで、ビットコイン(BTC)の場合は2018年に民事再生手続きが開始された時のビットコイン価格、約7000ドルで換算される。(現在の価格3万7000ドルでもなければ、マウントゴックスが破綻した時の数百ドルでもない)
マウントゴックスは2012〜2014年にかけて繰り返しハッキングの被害を受け、最終的に破産に追いやられたとされている。2014年以降、破産手続きが民事再生手続きへと移行。事態が長引いているために、疲弊した一部の債権者は、法律事務所や、本件に関わる個人やその他の利害関係者へと賠償請求権を売却した。
提案の条件によれば、債権者が過去に破産命令請求を申し立てた場合には、失った全額と、損害賠償の支払いを優先的に受けられる。
それ以外の債権者には、2つのオプションが用意されている。
まず、承認されたすべての債権者は、請求額全体に含まれることになる、最大20万円の基本金を受け取る。
そこからは、2つのオプションから選ぶことができる。最初の請求額の約21%を受け取る早期支払いの方法に加えて、数パーセント受け取り額を増やすために待つこともできるが、保証はない。
つまり、1BTCと1000ドルを失った人が「早期」支払いを選ぶと、基本受取金の20万円と、0.13194012 BTC、0.13302035 BCH、さらに24万7396円を受け取ることができる。この場合の受け取り合計額は約1万ドル相当だ。
同じ被害額の債権者が「最終」支払いオプションを選択した場合には、受取額は合計約1万1000ドルとなる可能性もあるが、早期支払いの1万ドルより少なくなる可能性もある。
受取額が上がる(または下がる)保証はない。支払いの詳細を説明するWizSecのブログ記事によると、マウントゴックスは現在、14万1000BTC以上、14万1000BCH以上、約680億円を保有しているが、承認された請求は合計で68万BTC/BCHと88億円(さらに不確定のものは13万BTC/BCHと500億円)となっている。現時点では、すべての債権者に対する最終的な支払い合計額がいくらになるかはわからない。
さらに不確定なのは、受け取りの通貨が何になるかだ。日本円の資産を失った債権者は、日本円で支払いを受ける。暗号資産を失った場合には、BTC、BCH、日本円のミックスで支払いを受けることになる。
BTC/BCH請求の30%は、日本円で支払わなければならない可能性が高いと、WizSecは推定している。回収された暗号資産が不足しており、これまでに多くの暗号資産が法定通貨へと交換されている。暗号資産による支払いは、管財人が承認したホワイトリストに含まれる取引所へと送られる。
債権者は、民事再生手続きに関するWizSecの最新の記事に記載されている支払い計算機を使って、提案が可決された場合の受け取り額の見込みを計算することができる。
民事再生劇を終焉させるための投票
提案が可決された場合には、債権者はどちらのオプション(早期あるいは最終)で支払いを受け取るかを自分で選択することができる。
否決された場合には、管財人と取締役会は振り出しに戻り、債権者は新たな提案を待つことになる。今回の提案作成に何年もかかったことを考えると、この提案の条件を受け入れない場合には、債権者たちは賠償を受けるのにさらに長期間待つことを余儀なくされる可能性がある。
マウントゴックスの管財人による賠償の取り組みは、破産時にオーナー兼CEOであったマルク・カルプレス(Mark Karpeles)氏に対する集団訴訟とは独立したものである。カルプレス氏は、債権者は別個の集団訴訟で自らを追及するのではなく、債権者の提案を受け入れるようにすすめたが、今回の提案の交渉に直接は関わっていない。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Voting on a Proposal to Reimburse Mt. Gox Victims Begins Today