今月、半年前に大量に購入された「グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)」の6カ月間のロックアップ期間が終了する。これがビットコイン価格にどのような影響を与えるのか、アナリストの見解は割れている。
JPモルガン vs 暗号資産ネイティブアナリスト
「GBTCのロックアップ終了に関する多くの弱気発言は、このタイプの投資が最終的にはスポット(現物)購入に結びつくことを都合よく無視している」と暗号資産サービスプロバイダーのアンバー・グループ(Amber Group)はツイートした。
この見解は、ロックアップ終了がGBTCとビットコイン価格の重しになるという米銀最大手、JPモルガン・チェースが先月行った予測とは対照的だ。
「6カ月のロックアップを終了したGBTCの6月あるいは7月の売却は、ビットコインにとってさらなる逆風となって現れている」とJPモルガンのアナリストは6月24日にレポートに記している。この動きは「GBTCの価格とビットコイン市場への下落圧力」につながる可能性があるという。
だが、暗号資産ネイティブのアナリストはJPモルガンの見解に反発している。GBTCの売却で、GBTCの取引価格は下落し、資金流出の可能性はあるものの、そのネガティブな影響はスポット市場でのビットコインの買い戻しによって緩和される可能性が高いと考えている。
「最大のロック解除が今後2カ月の間にあり、市場でGBTCが大量に売られる可能性がある。ファンドがこの取引を解消すると、GBTCを売却した人はビットコインに売り圧力ではなく、実際は買い圧力をかけることになる」と暗号資産運用会社アルカ(Arca)の最高投資責任者、ジェフ・ドーマン(Jeff Dorman)氏はニュースレターに記した。
12月に20億ドル、1月に17億ドル
ロック解除が重要なイベントになり得るのは、GBTCが数年前から2021年はじめにかけて非常に人気があったためだ。JPモルガンによると、GBTCには2020年12月に20億ドルという記録的な資金流入があり、翌2021年1月には17億ドルの資金が流入した。
さまざまな理由から長い期間、GBTCはビットコインのスポット価格に対して40%以上のプレミアム(上乗せ価格)で取引されていた。そのため大口投資家にとって、特に市場センチメントが強気なときは確実に利益を得られる方法になっていた。プレミアムが急落したり、ディスカウント価格に転じて、キャリートレードの純利回りが低下する恐れはほとんどなかった。
機関投資家や富裕層トレーダーは、所有または借用したビットコインや米ドルを使ってGBTCを購入。6カ月のロックアップ期間を経て売却し、利益をあげていた。
しかし、この数カ月でビットコイン市場は下落、2月にはGBTCがディスカウント価格に転じたため、GBTCを取引するメリットはなくなった。7月1日時点、スキュー(Skew)のデータによると、GBTCは10.5%のディスカウント価格で取引されている。
そんな状況のなか、6カ月前に大量購入されたGBTCがロックアップ期間を終え、市場に放出される。
ビットコインを借りてGBTCを購入した投資家は、返済のためにビットコインを買い戻す必要があるかもしれない。同様に、保有していたビットコインを預け入れた人は、基本となるポートフォリオに戻すためにビットコインを買い戻す必要があるだろう。
つまり、供給側の要因が変わらないと仮定すると、GBTCのロック解除に伴う買い戻しは、結果的にビットコイン価格に上昇圧力となる可能性がある。
データサイトのbybt.comによると、今月は約4万口のGBTCがロック解除となる。1日で最大のロック解除は7月18日で、1万6000BTC相当が市場に放出される。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Investors Cashing Out of Grayscale Bitcoin Trust Might Bring Market Boost