メルカリ、Bassetの買収で暗号資産事業の開発加速

メルカリが子会社のメルコインを通じて、暗号資産の取引データを分析するBasset(本社・東京品川区)を買収した。メルコインは、人材の拡充とM&A(合併・買収)戦略を絡めながら、ビットコインなどの暗号資産関連の事業開発を進めていく。

メルカリは5日、メルコイン(mercoin)によるBasset(バセット)の買収を発表。メルコインはすでにBassetの全株式を7月に取得した。

Bassetは、暗号資産の取引データを分析して、暗号資産を扱う企業などにマネーロンダリングやテロ資金供与などの金融犯罪を防止するサービスを開発してきた。欧米では、ニューヨークに拠点を置くチェイナリシス(Chainalysis)や、サンフランシスコ生まれのサイファートレース(CipherTrace)、ロンドンのエリプティック(Elliptic)などが、暗号資産の取引データを分析する代表的な企業として、事業を拡大している。

Bassetの経営を司るのは竹井悠人氏で、小学校6年生の頃からプログラミングに没頭し、高校在学中にマイクロソフト主催の技術コンテスト世界大会に出場した経験を持つ。東京大学でコンピュータ・サイエンスを学び、Googleでインターンとして働いた後、暗号資産取引サービス大手のbitFlyer(ビットフライヤー)に入社。2019年7月に東京・五反田でBassetを設立した。

竹井氏は2019年11月にcoindesk JAPANの取材に応じ、Bassetが当時時点で累計10億円を超える資金を調達してきたと述べている。

月間利用者数が1900万人を超えるモノのマーケットプレイスを運営するメルカリは今年4月に、暗号資産事業を展開するメルコインを設立した。2022年のサービスローンチを目指し、事業開発を進めている。

マーケットプレイスの「メルカリ(mercari)」事業を軸に「メルペイ(merpay)」の決済事業も手がけてきたメルカリは、2018年頃からイーサリアムを中心とするブロックチェーンの研究開発を社内で行ってきた。

メルコイン取締役の伏見慎剛(ふしみ・しんご)氏は今年5月、メルカリでモノを販売するユーザーが、売上金の一部をビットコインで受け取れるようなサービスを準備していると述べている。

またメルコインは、メルカリがこれまで扱ってこなかったデジタルコンテンツなどをNFT(ノンファンジブル・トークン)として売買できるサービスも検討している。

NFT:ノンファンジブル・トークン(非代替性トークン)はブロックチェーン上で発行・流通するデジタルデータで、アーティストのレアな作品や、アニメなどのIPコンテンツから作られる限定のコレクションアイテムが、他との代替が不可能な価値を持っていることを証明するもの。

メルコインは今後、Bassetのブロックチェーン分析技術を活用することで、より安心・安全な暗号資産事業やNFT事業などの開発を進めていく。

|文・編集:佐藤茂
|トップ画像:coindesk JAPAN撮影