暗号資産(仮想通貨)に投資するだけではなく、使ってみては?
暗号資産(仮想通貨)は、近年、その市場規模が急速に拡大していることに加えて、価格変動も激しいため、投資や投機の対象として注目を集めています。しかし、暗号資産には投資目的で購入する以外にも、海外送金や買い物など様々な利用方法があります。
近年、各国の中央銀行の間でも、暗号資産や分散型台帳技術に関する調査・研究が進められており、現金を代替するようなデジタル通貨を中央銀行が発行するという「中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)」の概念も生まれています。
今回は、暗号資産を投資以外で利用する方法を具体的に紹介します。
世界中のどこにでも送金可能な暗号資産
世界で初めて作られた暗号資産であるビットコインは、2008年に、サトシ・ナカモトと名乗る正体不明の人物を中心とした暗号技術者たちにより開発されました。
当時、世界はリーマンブラザーズの経営破綻に端を発した金融危機に直面しており、サトシ・ナカモトたちは、従来の金融システムに代わる手段として、国家や中央銀行による管理を必要としない、P2Pネットワークによる電子決済システムの実現を目指したのです。
そのため、スマートフォンさえあれば、銀行などの金融機関を介すことなく、世界中のどこへでも暗号資産を素早く送金することができます。銀行の海外送金サービスを利用する際には、一回の送金で数千円程度の手数料を支払う必要がありますが、暗号資産の送金手数料は圧倒的に安く、為替レートを気にする必要もありません。
発展途上国の出稼ぎ労働者が母国に送金する際や、海外に留学する家族に仕送りする際などで、暗号資産のメリットは際立ちます。
シリア難民だった経験を持つ起業家であり、書籍『The Invisible Son(透明な息子)』の著者のテイ・エルジュラ氏は、自身の経験から、紛争地域や発展途上国に住む人々や銀行口座を持たない人々を救う手段として、暗号資産の可能性を伝えています。
決済手段としての暗号資産
暗号資産は、買い物やサービスの代金として利用することもできます。
ビットコインが世界で初めて決済手段として利用されたのは、2010年5月22日だといわれています。
当時、フロリダに住むプログラマーのラズロー・ヘニエイツ氏が「対価としてビットコインを送金するので、ピザを2枚購入してくれる人はいないか」とインターネット掲示板に書き込むと、イギリスに住む学生のジェレミー・スターディバント氏がそれに応じ、代理でピザを購入しました。そのとき、ピザ2枚分の対価として1万ビットコインが送られたことが知られています。
日本では、2017年4月1日に施行された「改正資金決済法」により、暗号資産が決済手段として認められるようになりました。暗号資産は価格変動が激しいため、決済手段として利用されることは多くありませんが、暗号資産での支払いを受け付ける店舗やECサイトの数は、年々増えています。
3月30日のロイターの報道によると、米決済プラットフォーム大手のPayPalが、暗号資産によるオンライン決済に対応したことが明らかとなり、大きな話題を呼びました。日本でも、ビックカメラ.comが100,000円(税込)までの支払い手段としてビットコインを受け付けています。
暗号資産による寄付と資金調達
スマートフォンさえあれば、世界中のどこにでも、安く、早く送金できるという特徴は、多くの人に恩恵をもたらします。
世界銀行が2017年に発表した報告書「グローバル・フィンデックス・データベース」(*1)によると、世界には貧困や紛争などの理由により、銀行口座を持っていない、あるいは銀行サービスへのアクセスが断絶されている人々が17億人以上もいるといいます。このような人々に対して送金や寄付ができる点も暗号資産の社会的意義だといえます。
これまでに暗号資産を用いた寄付のサービスは数多く生まれています。2019年には、ユニセフ(国連児童機関)がユニセフ暗号資産基金(UNICEF Cryptocurrency Fund)を設立し、寄付金を暗号資産で受け付けることを表明したのも世界的な話題となりました。
また、これまで暗号資産は、資金調達の手段としても利用されてきました。
出資の対価として暗号資産を発行するICO(Initial Coin Offering)は、そのプロセスの簡易さから、数年前に世界的な流行となりました。しかし、ICOには詐欺も多く、投資家保護が不十分であることから、現在では多くの国で規制されています。
その後、暗号資産交換業者が審査し、自社の取引所での上場を前提に資金調達を行うIEO(Initial Exchange Offering)や、有価証券と同等の法規制の下で資金調達を行うSTO(Security Token Offering)などが生まれており、より信頼性のある形式での資金調達にトレンドが移っています。
暗号資産から始まる独自の経済圏
多くの暗号資産はブロックチェーン技術を基盤としており、ブロックチェーン技術を導入することで、様々なアプリケーションと暗号資産を組み合わせ、独自の経済圏を構築できるようになります。
例えば、LINEが開発したLINE Blockchain Developers(*2)では、企業がブロックチェーンアプリケーション(dApps*3)を簡単に開発し、そのサービスを暗号資産のウォレットと連携できるサービスを提供しています。
さらに、それらのアプリケーションを既存のLINEアカウントと連携させることで、暗号資産を決済手段とした様々なアプリケーションをLINE上で展開できるようになります。
このように、独自の経済圏を創出するという観点からも、暗号資産の将来性は大いに期待されています。
まとめ
今回は、暗号資産の投資以外の利用方法について紹介しました。暗号資産はまだまだ発展途上の技術であり、今後、技術の進歩や市場の成長に伴い、より多様な使われ方がされていくことでしょう。
*1https://www.worldbank.org/ja/news/press-release/2018/04/19/financial-inclusion-on-the-rise-but-gaps-remain-global-findex-database-shows
*2参照プレスリリース:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3385
*3:「Decentralized Applications」の略で、ブロックチェーン技術を用いた分散型・分権的なアプリケーション
Text/高橋ピョン太 (@pyonta)
Illust/アッシー(@Ashida_Assy)
Edit/プレスラボ(@presslabo)+飯倉光彦(デカルトサーチ合同会社)
※本記事はLINE BITMAX 公式ブログより転載しています。
https://bitmax-mag.line.me/archives/27768704.html