クリエーターの死後、ソーシャルトークンはどうなるのか?

ソーシャルトークンのクリエーターが亡くなったら、そのトークンはどうなるのだろうか?

軌道に乗り始めたばかりのテクノロジーツールについて尋ねるには奇妙な質問かもしれないが、「ニューデジタルエコノミー」の何が新しいのか、決して変わらないものとは何かを理解する役に立つかもしれない。

広まるソーシャルトークン

ウェブ3.0と大まかに定義され、ノンファンジブル・トークン(NFT)や自律分散型組織(DAO)も含む、「所有権」をデジタルグッズの中核としようとする取り組みの一環として、ソーシャルトークンは、クリエーターとファンが、新しい金銭上の関係を通じて交流することを可能にする。ソーシャルトークンは、その保有者が「クリエーター」の成功に利害を持てるようにするものだ。

多くのミュージシャンやアーティスト、スポーツ界の伝説的人物らや有望選手、さらにはケルマン・コーリ(Kerman Kohli)氏などの投資界の大物までが、この市場に参入している。

ファンは、クリエーターのキャリアのシェアを象徴するトークンを購入、入手、獲得する。トークンは誰かに完全に保有され、いつでも移譲、売却できるべきだが、必ずしもそうなってはいない。

制限された「Discord」のチャンネルへのアクセスといったプラットフォームを使うための力や、尊敬する人と会うための権利など、追加の有用性と合わさっていることも多い。

コミュニティーの中心にお金を置くことは間違いなく、そのコミュニティーの発展の仕方に影響を及ぼす。ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)のキンジャル・シャー(Kinjal Shah)氏は次のように指摘する。

「暗号資産ネットワークは、クリエーターとユーザーの間により強い関係を促す。このような関係は、金銭的な報酬や、ネットワーク効果を強化するインセンティブをもたらすことになる」

シャー氏のコメントは早まったものかもしれないが、行動経済学や、プラットフォームデザイン、金融の交わり方を暗号資産がどのように変化させるかを捉えているのは確かだ。

「新しい精神的、法律的枠組みが必要となるだろう」と、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのケビン・ワーバッハ(Kevin Werbach)教授はツイートしている。「それからより大きなボートだ」

「クリエーターエコノミー」を理解するための精神的モデルはすでに存在する。雑誌『WIRED』の編集者、ケビン・ケリー(Kevin Kelly)氏は10年前、インターネットによって、無名クリエーターがわずか「1000人の真のファン」で生活を維持することができるようになったと述べている。

例えば、バンドキャンプなどのクラウドソーシングサイトは、ミュージシャンがレーベルの助けを借りずに、自力でアルバムをプロデュースすることを可能にした。

ソーシャルトークンのもたらす影響

同じ理論がソーシャルトークンにも当てはまる。ソーシャルトークンの新しい点は、クリエーターとファンの間の金銭上の関係であり、それを興味深い方法でお金に変換できるのだ。

メリットは明らかだ。クリエーターは仕事の資金を調達でき、ファンは大切に手元に置いていくものを手にし、コミュニティーが栄える可能性もある。

「力を得た」ファンが行き過ぎる可能性もある。

自分のキャリアに対して経済的利害を誰かに与えることで、その人にアーティストの代わりに決断できる権利があるような錯覚を与えてしまいかねない。

アーティストは実験的な試みを行なったり、方向性を変える動機を失うかもしれないし、最大級のファンが最も声高な批判者となる可能性もある。

アートだけがトークンの価格に影響を与えるのではなく、クリエーターの行動や言動すべてが価格に影響を与える可能性があるのだ。もちろん、コーリ氏のように「投資」判断に関してトークン保有者に発言権を与えるために、わざわざトークンエコシステムを設計した人もいる。

芸術的価値と経済的成功を一つにしてしまうことの、未知の影響もある。ソーシャルトークンの優れた紹介文の中で、ベンチャーキャピタリストのレックス・ウッドバリー(Rex Woodbury)氏は次のように予測した。

「将来的には、インスタグラムのフォロワー数に基づいてクリエーターの影響力を測る代わりに、その時価総額を参照するようになるだろう」

では、トークンのクリエーターが亡くなった後はどうなるのか?暗号資産がその宣伝文句通り「止められない」ものだとすれば、トークンは存在し続け、取引可能なものとなるはずだ。

死によってコミュニティーが終末を迎える可能性もあれば、芸術の歴史でよく見られるように、アーティストの作品に批評家から新たな関心が集まる可能性もある。

この質問に単独の答えは存在しない。その理由の1つは、ソーシャルトークンのようなツールは、非常に多くの異なるタイプのコミュニティーの誕生を可能にするからだ。

アイディアや、自立してやっていこうとする個人の数と同じだけ、トークンも生まれることになる。そこは新しい点だが、死に関する疑問は、弁護士が解決するものだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:What Happens to a Social Token When Its Creator Dies?