自称ドージコインキラーの柴犬コイン(SHIB)を支えるコミュニティー「柴アーミー(SHIBArmy:柴軍団)」について、少しは世間に知られている。しかし、その柴アーミーがどれほど強力なものとなり得るか、世間は理解していただろうか?
大半の機関投資家からはいまだに真剣に捉えられていないトークンのSHIBは、10月初旬の投げ売りの後でも、まだまだ健在だ。ブロックチェーンデータが、小口の個人投資家が団結して、大きな機関投資家に対峙する様子を物語っている。
SHIBコミュニティーは11日以来、ソーシャルメディアで、7日のひどい投げ売りを生き延びたことを祝っている。
『くじらがSHIBをコントロールしているのではない』と題された12日付の柴犬コインのテレグラムの投稿には、「柴犬は、SHIBのクジラ(大口保有者)による大規模な売却にも関わらず、40%回復」と、記されていた。このメッセージはその後、多くのテレグラムグループで広まっている。
「私たちはドージキラーの柴だ」と、メッセージは締めくくられている。
数字で見るSHIB
ブロックチェーンデータ企業サンティメント(Santiment)によると、メッセージにあるクジラによる大量売却は、7日に発生した。
100万〜1000万SHIBを保有するアドレスから、約310億7000万のSHIBが売却され、100万〜1000万SHIBを保有するすべてのアドレスの3.02%が無くなった(ちなみに、100万〜1000万SHIBは、現在の価格では27ドル〜272ドルの価値がある)
サンティメントはまた、同じ期間中に、SHIBのアクティブな預け入れと取引所への流入にも著しい増加があったことを捉えた。
確かに、SHIBの価格が1ドルを大きく下回る現状では、SHIBのクジラの影響力を非難する12日の前述のメッセージには、完全な裏付けがあるわけではない。
サンティメントのデータによれば、保有数でトップ10のSHIBアドレスが、全SHIBの78%以上を保有しており、それらのアドレスは、問題となっている期間にはほとんどSHIBを動かしていない。
それでも、小口SHIBトレーダーの間での集団的な売却の影響は明らかであった。トレーディングビュー(TradingView)とバイナンスによると、これまでで最大規模の売却となった7日、SHIB価格は前日比で17%以上値下がりした。
当記事執筆時点では、SHIBはそれから34.4%高い$0.00002727ドルで取引されている。
プロの見方
CoinDeskの取材に応じたプロのトレーダーたちは、ミームコインのSHIBがこれほどの回復力を見せる理由に首を傾げる。
ドージコイン(DOGE)と比較すると、その回復力はさらに目を見張るものだ。
コインゲッコー(CoinGecko)によれば、SHIBは5月の最高値からわずか23%安である。一方、犬をモチーフにしたコインでは知名度も人気も最も高いDOGEは、5月の最高値から68%以上値下がりしている。
「SHIBは『個人トレーダーが世界を席巻する』魔法のトークン」として、強固な支持層を築いたと、SHIBコミュニティーの活発なメンバーであるダレン(Darren)氏は語る。SHIB保有者の多くはビットコインの値動きを追跡することはなく、SHIBの値動きの理由を、他の暗号資産の動きに帰することは難しいと続けた。
SHIBを支える強力な個人投資家層は、ソーシャルメディアにも反映されていると、暗号資産取引所フォビ(Huobi)の共同創業者、デュ・ジュン(Du Jun)氏は述べ、SHIBの公式ツイッターアカウントのフォロワーが110万人を超え、他の暗号資産プロジェクトの大半を凌いでいると指摘した。
「柴犬は強力なユーザーベースを持っており、プロジェクトは比較的シンプルで、暗号資産初心者にも分かりやすい」と、デュ氏は語った。
SHIBのパフォーマンスがパッとしなかったこの夏にも、ナンセン(Nansen)のデータは、SHIBを保有するユニークアドレス(取引活動があるアドレス)数の増加を示した。
10月11日時点では、SHIBを保有するユニークアドレスの数は75万以上と、SHIB価格が史上最高値を記録した5月10日と比べて2倍以上に増えている。
「値下がりによって、SHIBはもっと値上がりする可能性があると考える新規参入者が思いとどまることはなかった。競合であり、追い越すことを目指しているDOGEに比べると比較的安価だからだ」と、OKExInsightsのシニアエディター、フナイン・ナシール(Hunain Naseer)氏は述べる。
多くの投げ売り
サンティメントによると、100万〜1000万のSHIBを保有する多くのアドレスが、リスクを手放そうとしたのは、7日の投げ売りが初めてではない。
しかし、売却の度に即座に値下がりし、その後にはすばやい回復が続いた。
ソーシャルメディアでの親SHIB的な投稿からあまり時間を空けずの、小口トレーダーによる集団投げ売りというのは、取引行動を説明するものとしてより妥当なものの1つだと、サンティメントは指摘する。
「DOGEやSHIBなど、多くの小口トレーダーを抱えるミームコインの場合には、小口トレーダーが集団で、短期的に目指す価格方向へと影響を及ぼす、多くのパンプアンドダンプ(Pump and Dump:価格の吊り上げと売り抜け)が起こる可能性がある」と、サンティメントのブライアン・クインリバン(Brian Quinlivan)氏は説明した。
クインリバン氏はまた、100万〜1000万のSHIBを保有する人たちは、かなりの量のSHIBを取引する唯一のグループであり、SHIB全体の99.9%を保有する1000万ドル以上のSHIBを保有するアドレスは、ほとんどSHIBを動かしていないと指摘した。
真のSHIBくじら
注目すべきことに、1つのアドレスが7日、8兆以上ものSHIB(約2億3430万ドル相当)を集めた。そのアドレスは、保有するSHIBをそれ以降一切放出していない。
SHIBのクジラのアクティビティには、新たな脅威が潜む可能性もあるが、SHIBコミュニティーは前進を続けおり、さらに力強くなっているようだ。
コインゲッコーのデータによると、SHIBは13日時点で、中央集権型取引所で最も取引されるトークンのトップ10に入っている。SHIBの取引の大半(68%)は、分散型金融(DeFi)プロトコルで行われていることを考慮すれば、これは驚異的な数字である(ナンセンのデータ)。
イーサリアム上の、より定着した他のトークンに比べると、SHIBを取引しているアドレスの1日の数は「驚くほど多い」とサンティメントは指摘する。
ナンセンや、ブロックチェーンデータ企業クリスタル(Crystal)のデータは、SHIBが分散型取引所ユニスワップ(Uniswap)で活発に取引されていることを示している。SHIBの全流通量の約半分はユニスワップへと移動している。
SHIBが支える分散型取引所シバスワップ(ShibaSwap)は、交換、ステーキング、ファーミング、さらにはノン・ファンジブル・トークン(NFT)など、多くの機能を備えており、SHIBは「ミームコイン」から「洗練された」DeFiプロジェクトへと成長したと、フォビのデュ氏は指摘した。
SHIBコミュニティーのメンバー、ダレン氏は、暗号資産初心者の多くが、SHIBプロジェクトで活発な取引を続けているのは、SHIBを通じて築いた財産に感謝しているからだと、説明した。
「今年、SHIBを通じて多くの新規個人トレーダーが利益を出した時のことを、市場は覚えているのだ」と、ダレン氏は語った。
SHIBは「すでにメインストリームコインと考えられており、すぐに消滅したりはしないだろう」と、デュ氏は語った。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:Why Shiba Inu Has Been More Resilient Than Some SHIB Haters Would Like to Admit