ビットコインETFとは──投資のメリット・デメリット

ビットコインETF(上場投資信託)を使えば、暗号資産(仮想通貨)取引所でデジタル資産を直接売買することなく、伝統的な証券市場を通じてビットコイン(BTC)への投資ができる。

ビットコインETFとは、時価総額トップの暗号資産であるビットコインの価格と連動し、トレーダーが証券取引所で証券を売買できるようにする上場投資信託だ。現金決済または現物決済の形を取り、投資家はそれぞれ、利益確定の際に法定通貨または実際のビットコインを受け取る。

ETFは規制を受けた伝統的な金融商品であり、ロビンフッドやトレーディング212(Trading212)、TDアメリトレード(TD Ameritrade)、フィデリティ(Fidelity)をはじめとする、個人投資家フレンドリーな数多くのモバイル投資アプリを通じて購入できる。

最も人気があるのは、S&P 500などの主要な株式インデックスや、原油や金(ゴールド)といった伝統的資産と連動したものである。

ウィンクルボス兄弟のビットコインETF「COIN」が2013年、米証券取引委員会(SEC)に申請され、却下されて以来、ビットコインETFは、暗号資産界では長年にわたり、注目の話題となっている。

ビットコインETFによって、暗号資産業界に機関投資家からの新たな投資の波が押し寄せ、切望される成熟性と安定性が市場にもたらされると、幅広く考えられているのだ。

しかし、それから7年経った今も、2018年のウィンクルボス兄弟の2度目のETF、ビットワイズ(Bitwise)からのETF、ディレクシオン(Direxion)からの5つのETF、グラナイトシェアーズ(GraniteShares)からの2つのETFなど、複数の企業による多数のETF申請にも関わらず、SECはいまだにビットコインの現物価格と連動するETFを承認していない。

繰り返される却下について、SECが挙げてきた主な理由は、ビットコイン市場のボラティリティが高過ぎること、十分な監視が欠如していること、あまりにも簡単に操作され得ることであった。

しかし、カナダのオンタリオ州の証券委員会が2月、初となるビットコインETFを2件連続して承認し、事態に変化の兆しが見え始めた。

パーパス・ビットコインETF(Purpose Bitcoin ETF:BTCC)とエボルブ・ビットコインETF(Evolve Bitcoin ETF:EBIT)はどちらも現物決済型ETFで、トロント証券取引所に上場された。パーパスETFにインデックスを提供しているのは、米トレードブロック(TradeBlock)だ。

北米にビットコインETFが登場したことで、アメリカのSECもまもなくカナダに続くだろうと、多くの人は楽観的になっていた。とりわけ、米商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長で、マサチューセッツ工科大学(MIT)でブロックチェーンについて教鞭もとったゲーリー・ゲンスラー氏がSEC委員長に就任したことで、その期待はさらに高まった。

デジタル資産運用のギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)CEOで、1990年代後半にはゴールドマン・サックスでゲンスラー氏と共に働いた、マイク・ノボグラッツ(Mike Novogratz)氏は今年2月、「ETFが今年には登場するだろうと予測している」として、次のように語っていた。

「ゲーリー(・ゲンスラー氏)はMITで、ブロックチェーンと暗号資産について教えていた。しっかりと理解している。彼は進歩的だろう?進歩主義者は一般的に、(中略)生産性を提供せずに利益を追い求めるような人たちを追いかけるものだ。暗号資産は利益だけを追求するものではない。(中略)暗号資産は、貢献もせずに利益ばかりを求める存在をディスラプト(創造的に破壊)するものだ」

そして遂に15日、ビットコイン(BTC)の先物価格に連動するビットコイン先物ETFが、SECに承認された。米資産運用会社のプロシェアーズ(ProShares)が手がけるこのビットコイン先物ETFは19日、ニューヨーク証券取引所での取引がスタートする。

ビットコインETFに関するよくある質問

誰がETFに投資できるのか?どうやって取引するのか?

ETFを購入するのに、適格投資家である必要はない。誰でも投資できる。

ETF投資を開始するには、オンライン証券会社で口座(アカウント)を開設するか、モバイル投資アプリをダウンロードするだけだ。そうすれば、様々な市場と連動した幅広いETFを売買できるようになる。

ETF投資のメリット・デメリットは?

実物のビットコインを買うのではなくビットコインETFに投資することは、直感とは相容れないように感じられるかもしれないが、以下のような多くのメリットがある。

・暗号資産を自分で安全に保管する必要がない。

・暗号資産取引所から直接デジタル資産を買うのに比べて、オンラインブローカーを通じてETFを購入する方が、はるかに安全ですばやく行え、サービス障害などに合う可能性も低い。

・デジタル資産よりも、伝統的金融商品の方が、税金面での義務もガイダンスもはるかに明確である。

・証券取引所は暗号資産取引所よりも流動性が高く、ETFの売買の方がはるかに簡単である。

しかし、ビットコインを直接購入することに比べて、ビットコインETFに投資することのデメリットもある。

・暗号資産市場は24時間年中無休であるのに対し、ETFは証券市場取引時間中にしか売買できない。つまり、ビットコイン価格が急激に変動した場合には、売買するのに何時間も待たなければならない可能性があるということだ。

・ビットコインを自分で保有するのは無料だが、ETFには管理手数料がかかる。

・ETFの購入には顧客確認(KYC)のチェックを完了させる必要があるが、ビットコインは匿名でピアツーピアで購入できる。

・ETFでは、第三者カストディアンを信頼する必要がある。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Beneath Blue / Shutterstock.com
|原文:What Is a Bitcoin ETF?