オプショントレーダーたちは、暗号資産イーサ(ETH)への長期的な強気の投資に関心を向け始めている。アメリカ初のビットコイン先物ETFに続いて、イーサ価格に連動するETF(上場投資信託)が登場するという期待が広まっているためだ。
データによれば、イーサに対する限月の長いアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)コールオプションへの需要が高まっている。イーサのスポット市場価格をはるかに超える権利行使価格を持つ、強気の投資である。
シンガポールにある取引企業QCPキャピタル(QCP Capital)によれば、2022年3月25日に満期を迎えるイーサの1万5000ドルのコールが、大きく買われている。これは、現在のスポット価格よりはるかに高いものだ。
イーサはここ3日間、ビットコイン(BTC)が約6万7000ドルまで値上がりしたのに続いて、4000ドル超えで取引されている。
ビットコイン先物ETF登場で高まる期待
市場の「長期的な関心は、BTC(ETFのアメリカでの)リリース後に、ETH ETFへの期待が高まり、それにETH 2.0へのアップデートも相まって、BTCからETHへとシフトしているようだ」と、QCPキャピタルは19日、同社テレグラムチャンネルで指摘した。
暗号資産デリバティブ取引所デリビット(Deribit)が提供するデータによれば、権利行使価格が1万5000ドルのコールオプションは、2022年3月に満期を迎えるすべてのオプションの中で、未決済の建玉が最も多くなっている。
データ提供を手がけるジェネシス・ボラティリティ(Genesis Volatility)は、権利行使価格が1万5000ドルのコールのフローには、買い手も売り手も混ざっているが、この価格で最初に取引が始まったのは、10月15日の約700件の契約の買いからであったと語った。
当時、未決済の建玉は約8000件であった。20日時点では、3月満期の1万5000ドルのコールの未決済の建玉は約4万件となっている。
「フローに買い手と売り手が混ざっているのは良いことだ」と、ジェネシス・ボラティリティの共同創業者兼CEO、グレッグ・マガディーニ(Greg Magadini)氏は語り、次のように説明した。「つまり、真に双方向の市場があるということで、1万5000ドル到達が可能かどうかについて、人々は2つの見解を持っているのだ」
アメリカ初となるビットコイン先物ETFがデビューした後、アメリカの取引時間で20日の早い時間には、ビットコインが史上最高値を更新した。市場参加者の中には、イーサETFが承認され、イーサ価格も押し上げられることを期待している人たちもいる。
アメリカでのイーサ関連のETFについては、少なくとも5件の申請が行われていることが分かっている。それには、資産運用会社VanEckの「ザ・イーサリアム・ストラテジーETF(The Ethereum Strategy ETF)」と、プロシェアーズ(ProShares)による「イーサ・ストラテジーETF(Ether Strategy ETF)」も含まれる。
「ビットコイン先物ETFの登場によって、同様のイーサETFもそんなに遠い話ではないということが確かになった」と、投資会社イーサ・キャピタル(Ether Capital)の社長兼最高財務責任者ステファン・クーリカン(Stefan Coolican)氏は話す。「どちらの暗号資産も分散型であり、規制という観点からは、イーサがビットコインより複雑ということはない」
今年中にも登場?
イーサ関連のETFが今年中にも登場すると推測する人もいる。
「イーサETFは、間違いなく今年には登場し、イーサにとっては間違いなく強気要因となる」と、暗号資産市場GSRのアメリカでのCEO、トレイ・グリッグズ(Trey Griggs)氏は述べる。「BTC ETFへの関心の強さが、投資運用コミュニティーにおける、様々なアルトコインと連動する商品についての議論に火をつけた」
年内にイーサ関連ETFが実現することに賭けるトレーダーがいることを、データは裏付けている。
ここ3日間で、機関投資家向けに特化したOTC(相対取引)デスクのパラダイム(Paradigm)は、顧客のフローがイーサに「強気」に傾き続け、11月、12月、2022年3月に満期を迎えるコールオプションのアウトライト取引とコール・スプレッド取引の双方に特に高い需要が見られることに気づいた。
オプション取引は、満期日の当日またはそれ以前に、原資産を事前に設定された価格で売買する権利を与えるデリバティブ(金融派生商品)。売買は義務ではなく、コール・オプションは保有者に買う権利を、プット・オプションは売る権利を与える。
「年末から来年の3月に向けて値上がりするのに賭ける強気の投資が見られる」と、パラダイムのパトリック・チュー(Patrick Chu)氏は語った。
QCPはまた、長期インプライド・ボラティリティが、先週末から10%以上も高まり、コール(強気の投資)に比べたプット(弱気の投資)のコストを示すプット・コール・スキューも強くなり、コールの需要が高まっていると指摘した。
インプライド・ボラティリティは、オプション価格を計算する重要な要素で、ある特定の期間に資産がどれほどのリスクがあるか、変動するかについての市場の見込みを表す。
高いインプライド・ボラティリティが生じるのは、オプションへの需要の高まりの結果であり、逆もまた同様だ。それが、プットとコール双方のオプションの価格の高まりにつながる。
データ提供を手がけるスキュー(Skew)によると、3カ月、6カ月のプット・コール・スキューはここ1週間でマイナスのままで、長期コールへのより強い需要を示唆している。
しかし、皆がイーサETFの実現を確信している訳ではない。
暗号資産インデックスを提供するCFベンチマークス(CF Benchmarks)のCEO、スイ・チュン(Sui Chung)氏は、イーサETFは2022年半ばに登場すると予測していると語り、その前に、イーサ先物市場での流動性と未決済の建玉の高まりが必要になると指摘した。
デリバティブ取引所でイーサ先物契約にロックインされた資産の額は、19日時点で合計104億ドルとなっている。一方、ビットコイン先物の未決済の建玉は同じ日、約250億ドル相当であった。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:Options Traders Bet Big That Ether’s Turn for an ETF Is Coming Soon