ドージコインと柴犬コインの上昇をけん引した「ユニット・バイアス」

ビットコイン(BTC)は暗号資産(仮想通貨)の稼ぎ頭と言えるが、個人投資家にとっては最近、ドージコイン(DOGE)と柴犬コイン(SHIB)がそうなっている。

暗号資産取引所バイナンス(Binance)の子会社で、インド最大の暗号資産取引所WazirXでは27日、柴犬コインの大量の取引でサーバーに負荷がかかり、取引が遅延した。この日、WazirXの取引高は5億ドルを超え、インドの暗号資産取引所の中で最大となったとCEOのニシャル・シェティ(Nischal Shetty)氏はツイートした。

「この48時間のアクティブな数字とアクティブなユーザーは本当に衝撃だった。準備ができていなかった。ビットコインの動きには備えていたが、柴犬コインにはまったく準備ができていなかった」とWazirXの共同設立者の1人で、最高執行責任者(COO)のシッダールト・メノン(Siddharth Menon)氏は28日朝、CoinDesk TVで語った。

メノン氏は「ユニット・バイアス」が少なからず影響していると考えている。ユニット・バイアスとは、初心者のトレーダーは安価な暗号資産も、例えばビットコインのような高価な暗号資産も、法定通貨で考えれば同じ金額を購入できるにもかかわらず、価格が相対的に安価な暗号資産を大量購入する傾向があることをいう。

比較的少額の資金で慎重に取引を行う投資家にとって、安価な暗号資産の大量購入はリッチな気分を感じさせてくれる。例えば、当記事執筆時点、620ドルで購入できるのは0.01ビットコインだが、柴犬コインは約1000万コイン購入できる。

平均取引サイズの違い

暗号資産の平均取引サイズを見ると、DeFi(分散型金融)で10万ドル以上の利益をあげた「スマートマネー」が柴犬コインやドージコインを取引し始めている一方で、「クジラ」と呼ばれる大口投資家はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)に留まっていることがわかる。

ビットコインとイーサリアムの平均取引サイズは、ほとんどの暗号資産取引所でドージコインと柴犬コインよりも大きくなっている。例えば、米コインベース(Coinbase)では、ビットコインの平均取引サイズは約2000ドル、イーサリアムは1600ドル。一方で、ドージコインと柴犬コインは約800ドル。

「これは(ドージコインと柴犬コインの)価格変動のほとんどが個人投資家主導であることを示している」と暗号資産データ提供会社カイコ(Kaiko)のクララ・メダリー(Clara Medalie)氏は述べた。ちなみに同氏によると、バイナンス(Binance)ではビットコインとイーサリアムの平均取引サイズは約2000ドル、一方、ドージコインは1200ドル、柴犬コインは900ドルという。

「平均取引サイズは機関投資家の動きを見るための完璧な指標ではなく、ほとんどの大口投資家は注文を小口化している。だが、投資に関連した明白なトレンドを読み取ることができる」

ビットコインやイーサリアムと違う動きも

またデータからは、あらゆる暗号資産は少なくともある程度は同じ動きをしており、5月の下落直前に取引サイズが拡大したことがわかるとメダリー氏は述べた。

「ビットコイン、イーサリアム、ドージコインは、平均取引サイズの傾向が似ており、小規模な上昇局面と強い相関関係がある」

その一方で、ドージコインや柴犬コインはビットコインやイーサリアムとは異なる動きを見せているという。

「平均取引サイズはほぼすべての暗号資産で昨年11月の強気相場スタート以降、大幅に増加している。だがドージコインや柴犬コインは、当初の熱狂の間に急増し、興奮が冷めると急激に小さくなっている」

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Kaiko
|原文:The Bias That Propels Shiba Inu and Dogecoin