米銀最大手のJPモルガン・チェースとコンサルティング会社のオリバー・ワイマン(Oliver Wyman)は11月3日、「Unlocking $120 BORDER VACLE in CROSS-BORDER Payments」 と題したレポートを発表。中央銀行デジタル通貨(CBDC)のネットワークは、世界の企業によるクロスボーダー決済のコストを年間1000億ドル(約11兆円)以上削減する可能性があると述べた。
レポートは、年間約24兆ドル(約2700兆円)にのぼるホールセール・クロスボーダー決済のうち、銀行のコストを1200億ドル以上と見積もっている。
「中央銀行デジタル通貨がクロスボーダー決済の問題点を解決する可能性はきわめて高い」とオリバー・ワイマンのジェイソン・エクバーグ(Jason Ekberg)氏は述べた。
「現在のホールセール・クロスボーダー決済プロセスの大部分は、送金銀行と受取銀行の間に複数の仲介業者が存在するため、依然としてい最適とは言えない状態だ。多くの場合、高い取引コスト、長い決済時間、決済状況の透明性の欠如という問題がある」
暗号資産(仮想通貨)およびブロックチェーン技術の台頭に後押しされた中央銀行デジタル通貨をめぐる議論には、個人など小口利用者(リテール)に対する発行についての議論と、このレポートが焦点をあてたホールセール取引についての議論がある。
マルチプルCBDC(mCBDC)
近年、民間企業や商業銀行、中央銀行が主導するホールセール・バンキングの取り組みは複数存在するが、複数の国のCBDCを共通の相互運用可能なプラットフォームで運用する、本格的なマルチプルCBDC(mCBDC)は存在しないとレポートは指摘した。
レポートは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムで構成される東南アジア諸国連合(ASEAN)での送金を例にあげた。ASEANでは、10種類におよぶ多様な通貨が使用され、世界のクロスボーダー取引の7%を占めている。
JPモルガンとオリバー・ワイマンは、理想的なmCBDCのモデルとして、CBDCの発行、換金から外国為替換算、決済までのプロセスを考慮したモデルを提案している。レポートはまた、本格的なCBDCの展開によって大きな打撃を受ける可能性のあるコルレス銀行(海外送金の中継点となる銀行)の新しいチャンスにも言及した。
「CBDCの発展は、サブスクリプション型のmCBDC送金サービスやスマートコントラクト対応のキャッシュ・マネジメント・サービスなど、新しい、具体的なチャンスをもたらす」とJPモルガンのナビーン・マレラ(Naveen Mallela)氏は述べた。
実際、同氏が率いるグローバル決済ネットワーク子会社のオニキス(Onyx)は、フランスとシンガポールを結ぶそうしたトライアルの1つに関わっていた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:JPMorgan Report Says CBDCs Can Save Firms $100B a Year in Cross-Border Costs