ポルカドット(Polkadot)初のパラチェーンオークションの完了は、生みの親であるギャビン・ウッド(Gavin Wood)氏にとって、イーサリアムのスマートコントラクトによる経済的制約からの自由の到来を告げる機会であった。
スマートコントラクトプログラム言語「Solidity」の開発にも携わったイーサリアムの共同創業者ウッド氏は、ポルカドットによるパラチェーン(並行して実行されるブロックチェーン)のリースモデルこそが、ユーザーがプラットフォームトークンを買ったり、フレームワークの包括的ネイティブトークンDOTについて知っている必要のない理由だと語った。
ウッド氏によれば、これはイーサリアムやその競合の大半とは著しく対照的なモデルである。
「イーサリアム上で作られたアプリケーションのユーザーは、経済的にイーサリアムの奴隷になっている」と、ウッド氏は指摘する。「ユーザーはイーサリアム上でイーサ(ETH)を保有し、さらに多くの場合、イーサリアムのスマートコントラクトを使って作られたアプリケーションを使うために別のトークンも保有する必要がある」
グーグル検索をするたびに、電気料金として0.1セントをグーグルに支払わなければならない状況を想像してみて欲しい、とウッド氏は述べ、「それは理にかなっていない」と続けた。
「これが、ポルカドットにおける無料での実行というアプリケーションモデルと、イーサリアムやその競合における取引的実行というスマートコントラクトモデルの主要な違いだ」
ポルカドットのアプローチ
ポルカドットのフレームワークでは、アプリケーション開発者たちが独自のルールを持った独自のブロックチェーンを開発することができ、それらのチェーンは互いにやり取りできる。
このように相互に連結したブロックチェーンシステムは、様々なパラチェーンをつなげ、ポルカドットのランダム化されたプルーフ・オブ・ステークコンセンサスメカニズムの検証で大切な役割を果たす「リレー・チェーン(Relay Chain)」がもたらすプールされたセキュリティ保証の恩恵を受ける。
イーサリアムとビットコインの類似
ウッド氏はイーサリアムは実際には、その支持者の多くが率直に認めるよりも、ビットコイン(BTC)に近いものだと、挑発的な指摘をした。
「本当にビットコインのようなものだ。追加のスクリプティングを伴っているだけで」とウッド氏は語り、「どの取引を含めるかは、イーサリアムマイナー次第で、ビットコインマイナーがあのビットコイン取引は含めないで、このビットコイン取引は含めると選べるのと同じことだ」と説明した。
イーサリアムマイナーによる恣意性は、アプリケーションレベルでのアクションやタスクに対応するよう設計されていなかったブロックチェーン実装でのより根本的な問題の一部である。スマートコントラクトでは、すべてがユーザーレベルで起こる、とウッド氏は指摘した。
パラチェーン競争
激戦となったポルカドットによる初のオークションでは、ムーンビーム(Moonbeam)とアカラ(Acala)の2つの大手プロジェクトが、それぞれ13億ドル相当以上のDOTを集め、最初のパラチェーンのスロットを獲得。この点を考慮し、リースを獲得するためのポルカドットが仕掛けた高額な競争は、イーサリアムのようなオープンシステムではないとも指摘されている。
パラチェーンオークションの経済モデルは、パラチェーンモデルと、ユーザーが支払いを行うスマートコントラクトモデルの中間となるような、都度払いアプローチである「パラスレッド」を可能にすると、ウッド氏は説明する。
しかし、そこには重要な違いもある。ポルカドットでは、ブロックチェーンがシステムに支払いをしているのであり、ブロックチェーンのユーザーはトークンを保有したり、アプリケーションに対して支払いをする必要はないと、ウッド氏は説明する。
「アプリケーションを提供する側としては、ずっと大きな自由が手に入る。イーサリアムが求めるような、DOTトークンへのエクスポージャーを見送らない経済的自由と、ブロックチェーン機能の全範囲を使うことを可能にする、技術的自由の両方だ」とウッド氏は語った。
先を見据えて
オークションに最初に勝った2つのプロジェクトは、12月中旬に共に運営開始となり、今後も多くのプロジェクトが続く。この先についてウッド氏は、ポルカドットの世界に組み込むことに興味のあるテクノロジー領域を挙げた。
これには、ウッド氏が「スマートコントラクト2.0」と呼ぶところの、ブロックチェーンとブロックチェーンシャード間のコンポーザビリティの将来的レベルに重点を置いた非同期スマートコントラクト・プラットフォームも含まれる。
その他に、ポルカドット開発に利用されたフレームワーク「サブストレート(Substrate)」を使って取り組まれている興味深い分野としては、どちらもシールディングやプライバシーのための、インテルSGXタイプの環境を使った許可型実行やゼロ知識証明テクノロジー、そしてロールアップを通じたスループット効率性などが挙げられた。
ウッド氏はまた、非営利的な目的を持った公益パラチェーンなど、より「クレイジーなもの」にも言及した。
「私が思い描ける用途を超えて使えるように、非常に抽象的で一般的なものを開発するよう全力を尽くす」とウッド氏は語り、次にように続けた。「自分が開発したものが、想像もしなかったもののために使われているのを見ると、確かな達成感が得られるのだ」
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:Polkadot Chief Promises Freedom From Ethereum’s ‘Economic Enslavement’