11月、いわゆる「レイヤー1」トークンへの関心が高まった。複数のブロックチェーンがインセンティブ・プログラムを展開したためだ。
「レイヤー1」とは、他のブロックチェーンから独立して動作するブロックチェーンのことで、多くの場合、イーサリアム・ブロックチェーンのライバルを意味し、「イーサリアム・キラー」「イーサ・キラー」などとも呼ばれる。一方、イーサリアム・ブロックチェーンのガス代(取引手数料)は依然として、過去最高付近で推移した。
ちなみに、「レイヤー2」は、イーサリアムなど既存ブロックチェーンと並行して動作する取引の高速化などを目的としたソリューションをいう。
アバランチ(AVAX)、上昇
レイヤー1トークンの1つ、アバランチ(AVAX)は11月、約70%上昇し、データサイトのメッサーリ(Messari)によると、時価総額100億ドル以上のレイヤー1トークンの中でNo.1のパフォーマンスとなった。時価総額100億ドル以上の暗号資産の中でもCrypto.comのクリプトドットコムチェーン(CRO)に次いで、2番目の上昇率だ。
アバランチは、大手会計事務所デロイト(Deloitte)と提携し、効率的な災害救援プラットフォームの構築を目指すと発表した直後の11月16日、史上最高値を更新した。
また6億ドル以上のマーケティング施策やインセンティブ施策を発表したことも、価格上昇の要因となっている可能性がある。
他のレイヤー1トークン
その他のレイヤー1トークンでは、テラ(LUNA)は約28%、ソラナ(SOL)は約5%上昇した。注目すべきは、時価総額最大の暗号資産ビットコイン(BTC)が約4.5%下落した月に上昇したことだ。イーサリアム(ETH)は約7%上昇している。
「アバランチ(AVAX)、ソラナ(SOL)、テラ(LUNA)は、イーサリアムの取引手数料が過去最高付近で推移するなか、大きな上昇を見せた他のレイヤー1トークンとともに上昇している」とブロックチェーンデータを提供するカイコ(Kaiko)のリサーチ責任者、クララ・メダリー(Clara Medalie)氏は述べた。
IntoTheBlockによると、イーサリアムの取引手数料は上昇を続けており、11月27日時点は約43ドル。1年前は1.15ドル程度だった。
スタック・ファンズ(Stack Funds)の共同創業者兼最高執行責任者(COO)、マシュー・ディブ(Matthew Dibb)氏によると、イーサリアムの取引手数料が上昇しているため、ユーザーは低コストの代替ブロックチェーンを探す必要に迫られたという。
暗号資産投資ファンド、ARK36のCOO、アント・パロイアン(Anto Paroian)氏は、ソラナのようなブロックチェーンが人気を集めているのは、市場がプレー・ツー・アーン(プレーして稼ぐ)ゲーム分野の成長に期待しているためと述べた。プレー・ツー・アーンとは、ユーザーが報酬として暗号資産を獲得できるゲームのことだ。
メタバース、Dapp
プレーヤーがノンファンジブル・トークン(NFT)を使ってゲーム体験を構築、所有、マネタイズできるメタバース(仮想空間)「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」の暗号資産ザ・サンドボックス(SAND)は11月、236%上昇。同じくメタバース「ディセントラランド(Decentraland)の暗号資産ディセントラランド(MANA)も65%上昇した。
プレー・ツー・アーン・プラットフォームのアクシィ・インフィニティ(Axie Infinity/AXS)は0.41%の下落となった。
「メタバース、ゲーム、NFTのプロジェクトと同様に、Dapp(分散型アプリ)の構築を目的としたこれらのブロックチェーンも強気トレンドになっている」とQuantum Economicsのアナリスト、アレクサンドレ・ロアス(Alexandre Lores)氏は述べた。
「こうした分野は、ビットコインの価格動向にかかわらず、今後数年間で10倍の成長が予想されている」
ARK36のパロイアン氏は、ソラナもアバランチもすぐにイーサリアムを追い落とすことはないだろうが、「イーサリアムが取引手数料の問題に対処しなければ、競争力がますます低下していく危険性がある」と述べた。
IntoTheBlockのアナリスト、ジュアン・ペリサー(Juan Pellicer氏)は、イーサリアムの時価総額5260億ドル(約60兆円)に比べると、これらの暗号資産の時価総額はまだ比較的小さいと指摘している。
ストック・ファンズ(Stack Fundsのディブ氏は、ビットコインがさらに下落すると、特にこの数カ月で大きく上昇したアバランチとソラナに売り圧力がかかる可能性があると見ている。
ポルカドット、カルダノは不調
ほとんどのレイヤー1トークンが11月に上昇したなかで、ポルカドット(DOT)は約24%の下落となった。ペリサー氏によると、不調の原因は定かではない。
ポルカドットは最近、ネットワークに接続するブロックチェーンを決める初のパラチェーン・オークションを行い、注目を集めていた。合計100の接続枠のうち、待望の1つ目はDeFi(分散型金融)プロジェクト「Acala」が獲得した。
「(不調の)原因は、パラチェーンがリリースされたものの、他のブロックチェーンに比べると取引高や流動性がまだ不足しているため、トレーダーの期待よりも成長が遅いことかもしれない」(ペリサー氏)
またFXブローカーのオアンダ(Oanda)のシニアアナリスト、エドワード・モヤ(Edward Moya)氏は、9月に「アロンゾ(Alonzo)」と呼ばれる大規模なアップグレードを行ったカルダノ・ブロックチェーンは大型プロジェクトを引きつけることに苦戦しており、暗号資産カルダノ(ADA)は11月に16%下落したと指摘した。
「アルトコインは取引が難しくなる一方で、ビットコインとイーサリアムはほとんどの暗号資産投資家にとって重要な資産であり続けるはずだ」とモヤ氏は述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:IntoTheBlock
|原文:Avalanche, Layer 1 Tokens Soared in November as Ethereum Fees Drove Competition