米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派的な姿勢を取るようになっているなか(今のところ、かもしれないが)、特に先日発表された米消費者物価指数(CPI)の高い上昇率を踏まえて、投資家は暗号資産(仮想通貨)にどのように投資するかを再考しているようだ。
こうした動きは、イーサリアム(ETH)のみならず、イーサリアムのリプレースを狙う「イーサリアム・キラー」、いわゆるレイヤー1トークンにも良い兆候になるだろう。
ゴールドのような価値保存機能(ビットコインの主な特長と言われる)ではなく、イーサリアムとそのライバルトークンは、スマートコントラクト、ノンファンジブル・トークン(NFT)、DeFi(分散型金融)などのアプリケーションのための洗練されたプラットフォームを目指している。
「それがイーサリアムがビットコイン(BTC)をアウトパフォームしている理由だ。イーサリアム価格を見ると、まだ強気で取引されている。多くの人がイーサリアムをテクノロジーへの投資、ビットコインを法定通貨の価値低下への投資と考えている」とギャラクシー・インベストメント・パートナーズ(Galaxy Investment Partners)のCEO、マイク・ノボグラッツ(Mike Novogratz氏は8日、CNBCの番組で語った。
ビットコインを上回るイーサリアム
FRBによる前例のない金融緩和政策が縮小しつつあるなか、ブロックチェーン技術に強気だった投資家はビットコイン以外の暗号資産を購入しようと考えている可能性がある。
もちろん、そのなかの最有力候補はイーサリアム。だがNFTブームによって取引手数料が驚くほど高騰しているため、マーケットが別のブロックチェーンを探しているとしても不思議ではない。
イーサリアムはこの数カ月間、素晴らしい動きを見せている。
にもかかわらず、ビットコインとイーサリアムの90日相関係数は依然として0.84と非常に高く、おおむね上昇している。このことは、イーサリアムがすでにビットコインを上回っているものの、2つがますます連動して動いていることを意味する。
レイヤー1トークンの可能性
イーサリアムの代わりとなる暗号資産を求めている一部の投資家は、いくつのレイヤー1トークンに大きな可能性を見出している(厳密には、イーサリアムもレイヤー1トークンだが、多くの場合、イーサリアムのリプレースを狙う「イーサリアム・キラー」がレイヤー1トークンと呼ばれる)。
「開発競争の激化、巨額の資金調達、利用の拡大が、ビットコインとわずかだがイーサリアムから、ソラナ(SOL)やアバランチ(AVAX)などへの資金移動の背景になっている」とGenesis Tradingのマーケットインサイト責任者ノエル・アチソン(Noelle Acheson)氏は11月のマーケットレビューに記している。で書いている。
年初から、ソラナ、アバランチ、カルダノ(ADA)は大きく上昇している。
対数グラフで見ると、以下のようになる。
対数グラフをビットコイン建てにすると以下のとおり。
一方で、アルゴランド(ALGO)、コスモス(ATOM)、ポルカドット(DOT)はイーサリアム建ての対数グラフで見ると、年初からマイナスとなっている。
11月26日の「ブラックフライデー」の大幅下落以降は、アルゴランドだけがプラスとなっている。
だが、イーサリアム建てのリターンで見た場合、6つの主要レイヤー1トークンはこの数週間、すべてイーサリアムを下回った。
アバランチブロックチェーンを開発したアバラボ(Ava Labs)の社長ジョン・ウー(John Wu)は、2022年はレイヤー1トークンがイーサリアムを上回る可能性があると述べた。
「2022年は、価格(あるいは時価総額)の卓越したパフォーマンスと用途、特定のチェーンの普及拡大との相関関係が続くと考えている。仮に市場が何かの理由で下落したとしても、今、レイヤー1トークンは総合的な実用性を発揮するための最良の手段と言えるので、優れたパフォーマンスを見せるだろう」とウー氏は12月9日、CoinDesk TVで述べた。
2022年、レイヤー1はイーサを上回るか
しかし、分析会社フェアリード・ストラテジーズ(Fairlead Strategies)のケイティ・ストックトン(Katie Stockton)氏の見解が正しければ、レイヤー1トークンはすぐにはイーサリアムを上回ることはできないかもしれない。
ストックトン氏は、短期・長期、2つの相対的ローテーショングラフを作成した。これは、ある資産の他の資産に対するパフォーマンスを、相対的な強さと勢いに基づいて測定するものだ。
「グラフはイーサリアムに対する各コインの動きを示している。概ね時計回りの動きとなっており、イーサリアムを上回るトークンはグラフの右上に位置する。左下はその逆。X軸は相対的な強さを、Y軸は相対的な強さの勢いを表す」(ストックトン氏)
短期的には、6つのレイヤー1トークンのうち、5つはイーサリアムを下回っている(X軸の下にある)。例外はソラナのみ。
長期的には、アルゴランド、アバランチ、コスモス、ソラナは、今カルダノが位置する左下の「不況期(Lagging)」に向かっている。ポルカドットは唯一イーサリアムを上回っているが、ギリギリの位置にあり、すぐに「後退期(weakening)」に入りそうだ。
「短期グラフを見ると、短期的にはイーサリアムを上回る可能性は小さい」とストックトン氏は述べた。
本当にそうだろうか? おそらく、大口投資家の動きによるだろう。レイヤー1トークンへの理解が深まれば、イーサリアムへの投資に最初の一歩を踏み出し、イーサリアム価格は相対的に上昇するかもしれない。だが、特にイーサリアムブロックチェーンの莫大な取引手数料についてなど、知識がさらに深まると、その後はイーサリアム以外のレイヤー1トークンを求めるようになるかもしれない。
問題はタイミングだが、タイミングを予測することは決して簡単なことではない。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Fairlead Strategies
|原文:Alts Find It Tough to Beat Layer 1 King Ethereum