18億円流出はハッキングか、正当な取引か──「code is law」を主張する10代は裁判で勝てるか？

DeFi（分散型金融）プロトコルを悪用して1600万ドル（約18億円）を盗んだとされる数学が得意なカナダのティーンエージャーは、手にしたお金の法的な正当性について「死ぬまで争う」とツイッターに投稿した。

だが問題は、彼が法廷に現れないことだ。

返還を拒否

12月22日、オンタリオ州の裁判所は、19歳のアンディーン・メドジェドビック（Andean Medjedovic）に召喚状を出した。彼が21日開かれた審理に現れなかったためだ。関係者によると、彼は17日にオンラインで行われたバーチャル審理には出廷したという。

10月、メドジェドビックはDeFiプロジェクト「Indexed Finance」から資金を流出させたとされている。専門家の調査によって、同プロジェクトは彼の身元を特定した。

だが、他のケースとは異なり、メドジェドビックは手に入れた資金の返還を拒否し、法廷で「code is law（プログラムが法律）」──スマートコントラクトによって技術的に許された行為は不変であるだけでなく、法的・倫理的にも許されるというDeFiの非公式な考え方）──を法廷で貫くとツイートした。

Indexed Financeのコア開発者、ローレンス・デイ（Laurence Day）とディロン・ケラー（Dillon Kellar）は、21日の審理は問題の資産の凍結と、裁判中に資産を第三者のカストディアンに移すことに関するものとコメントした。

デイによると、資産の凍結はメドジェドビックが盗んだ暗号資産をミキシングサービス（監視や追跡の可能性からプライバシーを守るサービス）の「Tornado Cash」などに送ることを防ぐことが目的という。

だが出廷しなかったことで、メドジェドビックは法執行機関に積極的に追われる最初のDeFiハッカーとして歴史に名を刻むかもしれない。

「code is law」とは

10月、CoinDeskが取材した多くの弁護士は、メドジェドビックの「code is law」という主張は、裁判では認められないだろうと語った。

今のところ、警察などがハッキングに対抗できたことはない。その理由の1つは、ハッカーがツールを使って痕跡を消した場合、身元の特定はほぼ不可能だからだ。

この分野はしばしば、金融の「西部開拓時代」に喩えられ、規制当局や強制力を持った法律が存在しないため、自己規制と「ホワイトハッカー」の善意だけが悪用を防止する手段となっている。

この法的な空白により、DeFiは事実上、法制度が及ばず、ルールはブロックチェーンにプログラムされたものだけとの考え方が広がっている。それが「code is law」だ。

what a boomer take 🙁

code is law if the market is unregulated

welcome to crypto

no place for mistakes

you snooze you lose
— AnonDeFiBaron (@AnonDeFiBaron) October 21, 2021

Jason Gottlieb
「弁護士を雇うことを勧める。弁護士が私に連絡し、資産の返還交渉を行うことを勧める。それが今、一番賢い選択だ。以前にこうした事態を経験した者の話を聞いてほしい。たとえ、暗号資産であっても」
AnonDeFiBaron
「まさに団塊の世代の発想
市場が規制されていない場合、プログラムが法律
ようこそ、暗号資産の世界へ
失敗は許されない
早いもの勝ち」

デイは、このハッキングは単なる詐欺と主張している。デイがカナダの法律事務所ストックウッズ（Stockwoods）と共同で作成した書類によると、Indexed Financeの開発者は、ハッキングは「民事詐欺」であるとして集団訴訟を起こし、「不当表示または誤り、および不当利得の取り消し」を求めている。

デイとケラーは、プログラムの問題などではなく、ハッキングは悪意とIndexed Financeの内部市場を操作する特別なコントラクトによるもので、メドジェドビックが悪用できる状況を作り出したと主張している。

「攻撃はトークン価格を誤表示させる単純なエラーではなく、資産を市場価格を下回る価格で取得できる状況を作り出すために、複雑な一連の行為を通して意図的に操作されたものにほかならない」（ケラー）