Web3酷税をやめ、人材流出防げ──DeFi、ステーブルコインの制度設計:中谷一馬衆議院議員

Web3における税制について、自民党の河野太郎広報本部長が「自民党内で、税制改正すべく議論始まってます」とツイートしたことが話題となった。

Web3:Web3.0とも呼ばれ、ブロックチェーンなどのピアツーピア技術に基づく新しいインターネット構想で、Web2.0におけるデータの独占や改ざんの問題を解決する可能性があるとして注目されている。
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アメリカで拡大が続く法定通貨に連動するステーブルコインも、日本では取り扱いがない。最大規模のテザー(Tether=USDT)の時価総額は9兆円を超える規模まで拡大している。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)では、過剰な規制が「国民の選択肢を狭める」と懸念を表明する。

こうした日本の出遅れを危惧するのが立憲民主党の中谷一馬衆議院議員だ。同氏はモバイルオンラインゲームの開発・運営を手がけるgumiの創業役員でもあり、Web3関連の事業を数多く手掛ける國光宏尚氏と事業に取り組んできた経歴を持つ。国内の課題と政治からのアプローチを聞いた。


ステーブルコインの制度設計

──アメリカでは、ステーブルコインの存在感が増している。

中谷議員:裏付けとなる準備資産を持つなどして法定通貨と価値を紐付けるステーブルコインの需要は世界的に大きくなっている。今、金融庁やアメリカ、EUなどが規制を検討しているのは、ステーブルコインの時価総額が急上昇し、金融システムリスクが膨らみ続けていることが要因。

アメリカのリャン財務次官によれば、2020年初めに約50億ドル(約5700億円)だったステーブルコインの時価総額は、現在、1750億ドル(約20兆円)まで急成長した。もし、パニック売りが起きれば金融市場の安定を損ねるリスクがあることを懸念している。

──日本で提供されない理由は。

中谷議員:日本の金融庁においては、額面価値での償還を約束するステーブルコインについては、法定通貨準備を義務付けることが検討されている。一方、事業者側からは、利用者保護に偏りすぎると、機動性を損い、結果として事業が育たず、本末転倒となってしまう懸念があることも指摘されている。

Web3は、今後の成長産業の中心になる可能性が高いと考えている。ガバナンストークンに対する酷税のように、実になる作物をわざわざ芽の段階で刈り取るようなイノベーションを阻害する政策ではなく、Web3関係企業家や技術者が安心して日本で産業を育むことのできる体制を作ることが、将来の国益に直結するだろう。

出遅れが目立つ日本

──DeFiの実証実験をはじめ、アメリカでは取り組みが先行している。

中谷議員:現在、DeFiプロジェクトのほとんどが海外発祥のサービスだ。日本における既存の金融規制・課税リスクを考えると、日本発でDeFiを仕掛けることが困難であるという意見が聞こえてくる。

日本でプロジェクトが作れない状況を放置し、国内の投資家が海外のプロジェクトを使い続ける現状を黙認することは、国益には繋がらない。むしろ過剰なリスクヘッジは結果として、将来の国力低下という大きなリスクになることを懸念している。

こうした状況を改善することが経済成長を後押しする可能性があると思う。政府においては、最低限のリスクヘッジを行った上で、イノベーションを育てる制度を早急に取りまとめるべきであるし、私からも積極的に提案していきたい。

──日本における今後の規制動向は。

中谷議員:管理者がいない「パーミッションレス型」と、管理者がいる「パーミッション型」で政府の対応が変わると想定する。

ただ、いずれにせよ、各国と連携をしてAML(マネーロンダリング対策)/CFT(テロ資金供与対策)対策や利用者保護の観点に留意しつつ、DeFiにおけるイノベーションの可能性をどのようにして模索するのか、検討が求められると考える。

──日本で浸透させるためには。

中谷議員:生活者にとっては、金融サービスを受ける際に発生するコストを引き下げる可能性がある。分かりやすく社会実装することができれば人々の理解も深まるかもしれない。

公共の利益に著しく反するAML/CFTといった犯罪に関わる部分はしっかりと対策しなければならない。しかし、Web3時代の金融基盤として発展する可能性のあるDeFiの発展を阻害するようなルールは、最低限に留めるべきであると考えている。

日本は変われるか

──人材の国外流出が続いている。

中谷議員:ブロックチェーンに関係するビジネスに対する厳しい状況を理解している。この問題意識は私たち野党議員のみならず、与党サイドでも理解している方が一定数いる。

政府としては、議題に挙がっている以上は改善に向けた方法を検討せざるを得ない状態まできていた。皆が問題に気付き始めたので、中央省庁が持ってきた制度が、甘い討議でさっさと通るような状況ではなくなっている。

──事業者に求めることは。

中谷議員:「意見を言っても変わらない」と、言われる方は多い。しかし、私がこれまで見てきた政治の世界はそうではなかった。政治に対して的確なアプローチができている意見は極めて分かりやすく反映される傾向がある。

政治に関心のないサイレントマジョリティの意見は、そもそも政界には届きにくいので、政治へのアプローチが上手くできるノイジーマイノリティの意見の方が聞こえやすくなる。

もちろん、政府側が真摯に本質的な意見に耳を傾ける創意工夫がさらに行われることが最も好ましいが、ブロックチェーン関係の事業者の方々も、政府に対するコミュニケーションをしっかりと図って、業界を健全に育てていくことに注力しなければ日本での成長が難しくなる。私も双方の潤滑油になれるように汗をかきたいので、できることがあれば声をかけてほしい。

──政治の立場から見た際の課題は。

中谷議員:新たな技術に興味がある方はまだまだ少ない。国会議員のうち20歳代は0.1%で、30歳代でも3.7%に留まる。高齢の議員はどうしても目先の5年から10年の政策に注視する傾向があるが、私たち世代はあと30年から50年は生きたいと思っている者が多いはずなので、後の成長を見越す行動を行う必要がある。

私は、夢と希望が溢れる国を創りたい。そのためには、イノベーションを起こせる環境が不可欠だ。スタートアップ企業が日本から世界に羽ばたけるユニコーンとして成長できるような体制整備を、政府へ提言し続け、しっかりと後押ししていきたい。

|テキスト・構成:菊池友信
|インタビュー:佐藤茂
|フォトグラファー:多田圭佑
|(編集部より:タイトルを訂正して、記事を更新しました)