ウクライナ副大臣が語る、暗号資産寄付の使途とマルチシグでの管理──銀行送金より柔軟で安価

一部の兵器サプライヤーは、暗号資産での支払いを受け付けていると、ウクライナ・デジタルトランスフォーメーション省のアレックス・ボルニャコフ(Alex Bornyakov)副大臣は述べた。

ウクライナはロシアの侵攻を受けて以降、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)などの暗号資産で6000万ドル(約70億円)以上を集め、その一部を使って、燃料、食料、さらには兵士用の防弾チョッキを始めとする物資を購入している。

副大臣によると、デジタルトランスフォーメーション省は、国防省の要求に基づいて軍用装備の購入をサポートし、寄付アドレスを設定したウクライナの暗号資産取引所Kuna、2つの省、5人の署名者(秘密鍵の管理者)、その他複数の政府関係者がキーパーソンとして携わっている。

副大臣は、今は首都キエフにはいないと述べたが、具体的な所在は明らかにしなかった。

暗号資産の用途

ウクライナに寄せられた暗号資産による寄付金の支出には、5人の署名者のうち、少なくとも3人の署名が必要だ。署名者がシェルターに閉じ込められたり、通信不能になる事態を避けるために導入された。

「ほとんどの署名者はウクライナにいる。今はひどい状況だ。ウクライナ各地が戦闘下にある。シェルターに避難したり、何日も接続が途切れる可能性もあるため、万一、連絡が取れない署名人が出たときのために、冗長化プランを用意しておく必要がある」とボルニャコフ副大臣は述べた。

また暗号資産による支払いを進んで受け付けているサプライヤーの存在も、ウクライナをサポートしている。

「軍のサプライヤーの中には、暗号資産のアカウントを持っているところもある。実際、一部のサプライヤーは暗号資産が許可されている国に会社や銀行口座を持っている。そうしたサプライヤーはビットコイン、イーサリアム、さらに当然、複数のステーブルコインで支払いを受け付けている」

ボルニャコフ副大臣にとって、暗号資産は銀行送金よりも柔軟で安価なツールとなっている。

「1日以上かかることもあるSWIFTと比べて、簡単で複雑ではなく、透明性が高く、高速だ」

マルチシグウォレット

ボルニャコフ副大臣によると、ウクライナは寄付された暗号資産を管理するためにマルチシグ(マルチシグネチャ)ウォレットを運用している。

「マルチシグウォレットを誰が管理しているかは、セキュリティの問題であり、明らかにできない。我々は安全な場所に移動した。1日に2、3回は空爆があり、サイレンが鳴るので、シェルターに入らなければならないし、爆撃もあり、状況は厳しい」

ウクライナ国防省が暗号資産の用途を決めているが、副大臣はそのプロセスに関わる人物の名前をあげることは避けた。

「1人の人間が決めているわけではない。秘密鍵を持つ5人のうち3人が署名しなければならないので、誰が決めているかはそれほど重要なことではない」

ゼレンスキー大統領は暗号資産を使った物資購入には関与していないようだ。

「我々が大統領と直接話をすることはない。大きな組織があり、そこで意思決定を行っている。私にとってはブラックボックスのようなものだ」

またウクライナは「セキュリティ上の目的」のため、暗号資産による寄付金の用途の完全なリストを公表していない。だが副大臣はいずれ、明らかにすると述べた。

「今は敵が見ているので、購入リストを掲載することはできない」

ボルニャコフ副大臣は、寄付された暗号資産は、防弾チョッキ、暗視ゴーグル、軍用食料、医療品など、非殺傷装備の購入に使用されていると語った。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Ukraine Is Buying Bulletproof Vests and Night-Vision Goggles Using Crypto