金融センターには通常3つの要素が必要だ。つまり、良い環境、判例法、そしてバイリンガルな人々。
アジアの金融センターといえば、香港やシンガポールを思い浮かべるだろう。2つの都市には多くの共通項がある。判例法に基づく裁判制度を維持し、人々はイギリス植民地時代の名残りとして英語を使いこなす。
シンガポールは、しばしばアジアの暗号資産ハブと呼ばれている。シンガポール金融管理局(MAS)の規制フレームワークは、暗号資産のユニークな複雑さに対応した包括的アプローチと考えられている。一方、香港は断片的アプローチをとっており、誰もが最善を尽くしているにもかかわらず、しばしば現状にそぐわないものになっている。
だが我々は、マレーシアを忘れている。かつてイギリスの植民地だったマレーシアでは、英語が準公用語になっており、判例法に基づく裁判制度を維持している。香港のように、こうした遺産が侵食されることもなく、ビーチはシンガポールよりも美しく、生活コストは安価だ。
マレーシアの経済特区
マレーシアのラブアン経済特区に拠点を置くFusangは、こうしたメリットをうまく生かしているようだ。ラブアン経済特区は1990年に制定され、「マレーシアの香港」として呼ばれている。Fusangがデジタル証券とデジタル債券を提供するまで、ほとんど知られていない場所だった。
Fusangのヘンリー・チョン(Henry Chong)CEOは「紙の証券は今、デジタル証券は未来」と呼び、「新しいルールが必要な、新しい資産クラスではない」としている。既存の証券規則が存在しており、すでに明確さは存在していると考えている。
だが、マレーシアには香港のような洗練された資本市場が存在しない。クアラルンプールは、香港のような金融センターとは見なされていない。シンガポールもデータで見ると、まだ香港に及ばない。
「デジタルの世界では、地理的条件はそれほど重要ではなくなる。金融センターは一般的に地理的条件で発展した。香港はその典型的な例」とチョンCEOは述べた。
複数の国や地域が金融センターとして香港に挑み始めており、マレーシアが次の金融ハブとなる可能性は十分あるという。
香港からの人口流出
すでにCoinMarketCapのライバルであるCoinGeckoは、マレーシアで設立され、シンガポールに拠点を置きながらも、マレーシアで事業を継続している。マレーシアは暗号資産に対するキャピタルゲイン税が依然として存在せず、教育水準が高く、英語を使いこなす人々は、DeFi(分散型金融)業界の関係者の注目を集め始めている。
香港の新型コロナウイルス対策は、多くの人材流出を招き、マレーシアにはプラスに働く可能性がある。統計によると、2020年3月以降、香港では人口流出が流入を7万6000人上回っている。さらに先週、コロナ対策の一層の強化を図るなか、流出ペースは加速している。
ある者はヨーロッパに、ある者はタイに、そしてある者はマレーシアに戻っている。リモートワークが主流となっているので、仕事内容は変わらない。これは、業界が分散化、特に同じ法的DNAを持つ地域への分散化を検討するために必要なことかもしれない。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:First Mover Asia: Malaysia May Be Asia’s Next Crypto Hub; Major Cryptos Decline as Russia Onslaught Intensifies