イーサリアムブロックチェーンのコア開発者、ティム・ベイコ(Tim Beiko)氏は12日、イーサリアムの「The Merge」(ザ・マージ)、すなわちプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行は当初予定されていた6月ではなく、「数カ月後」になりそうだとツイートした。
It won't be June, but likely in the few months after. No firm date yet, but we're definitely in the final chapter of PoW on Ethereum
— Tim Beiko | timbeiko.eth 🔥🧱 (@TimBeiko) April 12, 2022
ベイコ氏は、イーサリアムブロックチェーンは「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)の最終段階にある」と述べたが、もともと2019年に予定されていたPoSへの移行は、これまでに何度も延期されている。
イーサリアムブロックチェーンは12日、PoS移行に向け、メインネットで初のストレステストとなる「シャドーフォーク」を実施。イーサリアム開発者のParithosh Jayanthi氏は先週末、まだ解決しなければならないバグが明らかになったとツイートした。
複雑な作業
現在、イーサリアムブロックチェーンは、ビットコインブロックチェーンと同様のPoWを採用しており、マイナーが取引の検証を競い合っている。PoSでは、暗号資産イーサリアム(ETH)保有者が、その資産をネットワークに「ステーク」することで安全性を確保する。エネルギーコストを99%削減し、スケーリングが容易になると期待されている。
しかし、PoSへの移行は、ブロックチェーンを支える根本的な仕組みの移行であり、きわめて複雑な作業。エンジニアリング的な課題が山積みしていることに加え、ネットワークのバリデーター(ステーカー)が誠実に行動するためのゲーム理論のメカニズムが新たに追加される。
何よりも、数十億ドルの巨額な資金が動いているなか、一歩間違えば、エコシステム全体が壊滅的な打撃を受けることになる。
レイヤー2へのフォーカス
PoS移行後も、イーサリアムブロックチェーンの高い取引手数料や取引速度の問題は残りそうだ。
イーサリアムブロックチェーンはDeFi(分散型金融)、GameFi、NFTの基盤となっている中心的存在だが、多数の新しいPoSブロックチェーンが、より高速で安価な取引を提供し、イーサリアムを脅かしつつある。
イーサリアムブロックチェーンのPoS移行は、当初「イーサリアム2.0」と呼ばれていた。イーサリアム2.0には、決済を同時並列的に処理し、能力向上を目指す「シャーディング」が含まれていた。シャーディングは開発が進められているが、PoSへの移行を優先するために、導入は2023年に延期された。つまり「The Merge」は「イーサリアム2.0」から、シャーディングを除いたものと言える。
そのため、イーサリアム開発者コミュニティ内の多くの関心は、Arbitrum、Optimism、Loopringなど、高速な決済を実現するレイヤー2ブロックチェーンで使用されるロールアップ技術に移った。レイヤー2は人気を集め、TVL(Total Value Looked)は、数十億ドルにのぼっている。
The Mergeの後も、これらのレイヤー2では多くの処理が行われると考えられている。レイヤー2はそれぞれメリット/デメリットがあるが、現状、イーサリアムブロックチェーンよりも高速かつ安価な決済を実現している。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Ethereum Merge No Longer Expected in June