ビットコイン、リブラについての上院公聴会であまり触れられず

上院銀行委員会が2019年7月16日(現地時間)開催した、フェイスブック(Facebook)の仮想通貨「リブラ(Libra)」についての公聴会の中で、仮想通貨に関する議論は著しく乏しかった。

2時間に及ぶ公聴会の中で、ビットコインが言及されることはほとんどなかった。議員の大半は、技術そのものよりも、誰がこの技術の活用を計画しているのか、すなわちフェイスブックに多大な懸念を抱いているようだった。

民主党のブライアン・シャッツ(Brian Schatz)上院議員(ハワイ州)の発言が、恐らく最も分かりやすいだろう。フェイスブックのブロックチェーン担当責任者デビッド・マーカス(David Marcus)氏は、リブラプロジェクトは米国がブロックチェーン革命に取り残されることを避けるために重要だとしばしば繰り返していた。シャッツ議員は、それに対し「あなたは仮想通貨全般について論じている。論点は、『米国が主導すべきか?』ではない」と述べた。

むしろ論点は、なぜフェイスブックなのかだと同議員は指摘した。

同議員は、フェイスブックのデータプライバシーと選挙干渉スキャンダルについて言及し、「ここ数年のことを考えると、なぜ世界中のあらゆる企業の中で、『フェイスブック』がこれを行うべきなのか」と問いかけた。

仮想通貨に関する知識

同様に、民主党のキルステン・シネマ(Kyrsten Sinema)上院議員(アリゾナ州)の仮想通貨に関する発言も、「不安、不確実性、疑念(FUD)」を煽らないものだった。

「仮想通貨は匿名性を与えるが、麻薬密売者にとって一番の選択肢ではない。仮想通貨を使うのは簡単ではないからだ」と同氏は述べた。

また、民主党のクリス・ヴァン・ホーレン(Chris Van Hollen)上院議員(メリーランド州)も、フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏の新しいアイデアほどには、ビットコインに対して不安を抱いていないようだ。

「ビットコインのボラティリティーは、それが広範囲に普及しないであろうことを意味する。一方、リブラは広く利用されることを前提としている」とヴァン・ホーレン議員は述べた。

もう1つの違いは、通貨を裏付ける資産を持っていると主張する中央発行者がいないビットコインと異なり、「(リブラを運営する)リブラ協会を信頼する必要がある」ことだと同議員は付け加えた。「あなた方が世界通貨について話しているとき、十分な持続可能性があるかどうか私には確信が持てない」

「大きな可能性」

マーカス氏は、リブラとビットコインの比較を呼び起こすことはほとんどせず、このプロジェクトを十分な金融サービスを受けられていない人々のためのファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)への道と位置付けた。

同氏は冒頭の声明で、「我々の最初の目標は、世界中の人々、特に銀行口座を持たない人々が金融エコシステムに参加できるように、実用性と普及を実現することだ」と述べ、ビットコインや仮想通貨には全く触れなかった。

政治的影響に強く、総供給量が規定されたマネーサプライというビットコインの過激な約束とは対照的に、マーカス氏は、テクノロジー企業、ベンチャーキャピタル(VC)、決済企業のコンソーシアムによって運営されるリブラには、そのような野望はないと語った。

リブラ協会は、「米連邦準備制度理事会(FRB)や他の中央銀行と協力し、リブラがソブリン通貨と競合したり、金融政策に干渉したりしないようにする。金融政策は中央銀行の管轄だ」と同氏は議員らに保証した。

データの共有と同意についてマーカス氏を厳しく追及したが、共和党のパット・トゥーミー(Pat Toomey)上院議員(ペンシルベニア州)はブロックチェーン全般に対して前向きのようだった。

「とてつもなく大規模な金融イノベーションになり得るものを阻むべきではない。ブロックチェーン技術には大きな可能性がある」とトゥーミー議員は述べている。

同議員は、業界の性急な過剰規制に対して警鐘を鳴らし、米規制当局は「この赤ん坊をベビーベッドに縛りつけるべきではない」と語った。

翻訳:新井朝子
編集:町田優太
写真: Sen. Pat Toomey image via Senate Banking Committee
原文: Bitcoin Noticeably Absent From Senate Hearing on Facebook’s Libra