イーサリアム(ETH)のマイニングに使われるGPU(Graphics Processing Unit)価格が下落している。イーサリアムはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行を控えており、GPUは実質、無用のものになるためだ。
中国当局が暗号資産マイニングを禁止した2021年5月以降、Tom’s Hardwareのデータをもとに算出すると、eBayでの人気GPUの価格は37%下落した。
さらにイーサリアムのPoS移行に向けたテストが実施し、イーサリアム価格が低迷している今年は下落が加速している。主要GPU10製品の価格は、1月は7.4%、2月は9.5%、3月は12%下落した。
PoS移行を狙うマイナーも
GPUのグローバルな消費者需要の約35%を暗号資産マイニングが占めていると、投資銀行Robert W. Bairdのトリスタン・ゲラ(Tristan Gerra)氏はコメントした。
ハッシュパワーブローカーNiceHashのジョー・ダウニー(Joe Downie)氏は、GPUマイナーは「しばらくGPU価格が高止まりしていたため、現時点では新しい機器にあまり投資していない」、だが「多くのマイナーは(PoS移行でマイニングを諦める人から)中古GPUを購入するために、PoS移行を待っている可能性が高い」と語った。
イーサリアムブロックチェーンのハッシュレート(マイニングに使う演算能力)は、データサイトEtherscanのデータによると、2022年は現時点まで、やや低迷している。イーサリアムがPoSに移行すれば、さらに多くのGPUが中古市場に流れ、GPU価格はさらに下落するだろうとゲラ氏は指摘した。
マイニング難易度が上昇している一方で、イーサリアム価格の低迷が、GPU価格の下落にさらに圧力を加えている。
最近、価格はやや持ち直したが「以前のピークにはまだ及ばない」とイーサリアムマイニングプール、f2poolの広報担当者は述べた。だがマイニング難易度が上昇しているため、GPUマイナーのマイニング収入は継続的に減少していると付け加えた。
NiceHashでは、ダウニー氏によると、2021年12月にイーサリアムのマイニング難易度が記録的なレベルに上昇した際、約30万台のGPUがプラットフォームから脱落したという。
中国にあふれる中古マイニング機器
2022年2月にはロシアのウクライナ侵攻で暗号資産市場が下落、それに伴ってマイニングの収益性が低下したため、GPU価格はさらに下落したと中国でマイニング機器の転売を手がけるXuxin Science and TechnologyのHaohao氏は述べた。
Haohao氏は、中国国内に存在した暗号資産マイニング機器のうち、規制強化後に販売されたものは、わずか20%~30%に過ぎないと見ている。
規制強化以降、中国国内市場には「多くの中古マイニング機器があふれ、そのほとんどはASIC(マイニング専用機器)だが、マイニング用GPUも大きな割合を占め、価格は下落している」(ダウニー氏)
この1カ月ほどは、中国とヨーロッパの消費者需要の低下により、さらに過剰在庫が発生し、GPU価格は一段と低下しているとゲラ氏は指摘した。そのため、ゲラ氏が務める投資銀行Robert W. Bairdは4月初め、大手半導体メーカーのエヌビディアの投資判断を「アウトパフォーム」から「ニュートラル」に引き下げている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:GPUs Get Cheaper as Ethereum’s Switch to Proof-of-Stake Gets Closer