金融アドバイザーたちは、価格のボラティリティと株式との密接な相関関係から、ビットコイン(BTC)はナスダックの代わりに過ぎないとよく語っている。
彼らは、自分たちで自覚しているよりも正しい。しかし、その理由は間違っている。2020年代、ビットコインは投資家のポートフォリオにおいて、リターンをけん引する存在だと証明されるだろう。それまでの10年間で、ナスダック上場トップ企業の株がそうであったように。
ビットコインをアマゾンからナスダックへ
私は2020年後半、ビットコインが次なるアマゾンだと主張した。それ以来あまりに多くの変化があったので、この主張には改訂が必要だ。ビットコインの将来的なリターンは、アマゾンの10年前のものと同じ規模になると信じていることに変わりはないが、ビットコインの投資における可能性を単独の企業と並べて論じることは、あまりに視野が狭い。
より適切な例えは、ナスダックのエリート株たちだろう。時価総額の合計が20兆ドルを超えるこのインデックスは、昨年までの10年間、株式投資家にとって主な富の源泉であった。
インデックスのトップ7までを占めるアップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン、テスラ、エヌビディア、メタの時価総額の合計は約11兆ドル。そのうち90%近い10兆ドルは、ここ10年間で生み出されたものだ。
しかし、これらの超優良企業にとっても、状況は変化した。とりわけ規制面での障壁の高まり、そしてインフレの悪化(それによる利上げ)に直面しているのだ。
ナスダックトップ企業にとっての規制のハードル
2020年11月に行われた米大統領選挙に先立って、私はビットコインが直面する規制リスクはすでに、ナスダックトップ企業が直面する規制リスクよりも低いと主張した。
世論はすでに、選挙での不正や操作に対する懸念が引き金となり、これらデータ業界の大企業に対して厳しいものとなっていた。「監視資本主義」といった言葉が、盛んに使われるようになったのもこの頃だ。
米議会はこれらの企業に対する監視を強めていった。国民は、これらの企業が自分たちを、以下のような方法で害していることに気づくようになっていた。
・私たちが与えているデータに比べてずっと価値が低く、生み出すための限界費用がほぼゼロのサービスを提供した。
・私たちのデータをかき集め、第三者に販売することで、プライバシーを侵害した。
・「いいね」を受け取ることに高揚感を感じさせ、中毒性があるやり取りをさせることで私たちの脳の原始的な部分を乗っ取り、全体的に不幸にさせた。
・そのような絶え間ない刺激によって、集中する能力や理性を低下させた。
・意見の対立や憎しみを生み出すようなエコーチェンバーを作り上げた。
・民主主義の弱体化につながるような偽情報を拡散した。
・ジャーナリズムをクリックベイト主導のビジネスモデルへと落ちぶれさせた。
・アメリカ経済でのオートメーションを加速させることで、仕事や家計を破壊した。
これは、インターネット独占企業を取り締まることに熱心と思われる人物が連邦取引委員会のトップに就任し、すでにそのような方向に進んでいたヨーロッパの規制当局がさらに規制を強化し始める前の話だ。
ナスダックのエリート企業にとっては、規制面での環境はさらに厳しくなったと言っていいだろう。そうなると彼らが、それまでの10年間で達成したような10倍のリターンを、2020年代の10年間で繰り返す可能性は低い。
2020年代のインフレ
2020年代におけるビットコインの重要性を理解するために、まずインフレからみていこう。インフレには広範な社会的、心理的要素が絡むので、予測は不可能だ。市民が将来への見込みを変化させ、高賃金を要求し、将来的な値上げを確定させるための交渉をし、インフレ的な賃金/価格スパイラルを完結させるには時間がかかる。
しかし、予測不可能な人間の心理とは関係のないインフレ要因も多くあり、このような要素は、インフレ率の高まりが持続すると示唆している。以下に、特に大きなインフレ要因を挙げる。
・パンデミックと、超大国間の地政学的対立の高まりによる「ディグローバリゼーション(反グローバル化)」、すなわちサプライチェーンの再オンショア化によって、安価な商品や労働力を入手することが国際的により困難になる。こうなると、モノやサービスの生産コストが上がる。
・ベイビーブーム世代(史上2番目に巨大な世代)が労働人口からいなくなることで、国内での労働力が少なくなるが、Y世代ははるかに少ないので、新しい労働力の参入で相殺することができない。
・これによって、モノやサービスの生産コストが上昇。国際的にも、人口の状況は同様だ。ここ数十年における出生率の低下によって、労働人口に加わる若年層の数はますます少なくなっており、労働力の縮小はすなわち、インフレの高まりを意味する。
・給付金支給を含む多くの要因による政府の赤字支出の増大によって、政府の借入と国債の貨幣化が必要となる。このために、モノやサービスを求めて使える貨幣の数が増える。
このようなインフレ要因から、2020年代を賢く分析する人たちは、1940年代と1970年代との類似を指摘する。どちらも、物価の高まりが金利を大幅に上回り、そのことが、経済が赤字を管理するのに役立った高いインフレ率の時期であった。さらに現在、経済生産に対する割合で示される赤字の水準は、これら2つの時期を大きく上回っており、インフレの可能性はますます魅力的だ。
1940年代、投資目的での金(ゴールド)の保有は禁止されていた。それでも多くのアメリカ人は、自らの購買力を守るために保有をやめなかった。1970年代には、ゴールドは最もパフォーマンスの良い主要資産であった。
ゴールド投資家たちは、年率約30%ものリターンを手にしていた。対照的に、株式の年率リターンはわずかに5%であった。インフレ率が年間で平均7%であったことから、1970年代には、株は1年に少なくとも2%の購買力を失っていたのだ。債券の方は、年間で実質ベース4%の購買力を失っていた。
そこで、デジタルゴールドとも呼ばれるビットコインだ。ネットワークの価値が約6000億ドルにも達するビットコインは、10年前のナスダックトップ7企業を合わせたのと同じくらいの価値を持つ。そして、それらの企業がそれまでの10年間で生み出したのと同じように、ビットコインもこの10年で10兆ドルの価値を生み出すことは簡単だろう。
ナスダック企業はこれまでの10年間、素晴らしい成功を収めてきた。しかし、最近の値動きを見ると、そのような黄金時代は終わりを迎えているのかもしれない。
ビットコイン価格も最近では、厳しい状況だ。しかし、ビットコインは史上最もハードなマネーであること、そしてインフレの力が長続きしそうなことを考えると、ビットコインは2020年代において、ぜひとも保有すべき資産になると、私は見込んでいる。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:For Financial Advisors, Bitcoin Is the Next Nasdaq