ウクライナ、文化的DNA保存にNFT活用【Consensus 2022】

ロシアのウクライナ侵攻で、貴重な建築物や博物館などの文化遺産が破壊される危険にさらされているなか、ウクライナは「芸術品や歴史的遺産の一つひとつ」をデジタル化していくとウクライナ・ブロックチェーン協会のマイケル・チョバニアン(Michael Chobanian)会長が11日、テキサス州オースティンで開催されていた「Consensus 2022」で発表した。

「今日、ウクライナの人々、ウクライナの文化、ウクライナの歴史のDNAを保存することを目的とした新プロジェクトを発表します。今もロシアは博物館や教会、文化的な場所を爆撃している。破壊される前に、博物館にある美術品や歴史的遺産を一つひとつデジタル化し、NFT化して、ブロックチェーンに乗せます」とチョバニアン氏は語った。

ウクライナはすでに、ロシアの侵攻に対抗するための資金を暗号資産(仮想通貨)とブロックチェーンを活用して調達しており、分析会社Crystal Blockchainによると、5月中旬までに世界中から1億3500万ドル以上の暗号資産を寄付として集めている。

チョバニアン氏は、ウクライナ・デジタルトランスフォーメーション省の副大臣で、同国の暗号資産の取り組みについての事実上のスポークスマン、アレックス・ボルニャコフ(Alex Bornyakov)氏とともに「Crypto at War: Behind Ukraine’s Historic Crypto Fundraiser」と題したパネルディスカッションに登壇し、計画を発表した。

プロジェクトはウクライナ政府が主導するものではなく、ウクライナのブロックチェーン・コミュニティによる取り組み。NEAR Protocol(ニア・プロトコル)の共同創設者イリア・ポロスキン(Illia Polosukhin)氏も登壇し、ニアがプロジェクトの最初のブロックチェーン・パートナーになることを明らかにした。

「ウクライナの遺産をすべてブロックチェーンに乗せ、世界中に提供し、永遠に保存することはきわめて重要」(ポロスキン氏)

遺産をデジタル化してブロックチェーン上にNFTとして保存することは、遺産が存在した証明になる。また誰でも、どこからでもNFT化された遺産を見ることができるため、ウクライナの文化的DNAを知るためのデジタルな窓口にもなる。

「国家的プロジェクトであり、プライベートなプロジェクトではない。ウクライナ・ブロックチェーン教会としての取り組みであり、この方法は誰も削除することができない」とチョバニアン氏は述べた。同氏はウクライナの暗号資産取引所Kunaの創業者であり、ウクライナへの世界中からの暗号資産による寄付を管理している。

同国政府による最初のNFTプロジェクトは「メタヒストリーNFT博物館(MetaHistory NFT Museum)」で、ロシアのウクライナ侵攻に関する事実を保存するために設立された。博物館がNFTから得た資金は、最新のNFTプロジェクトの資金として使われる。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk
|原文:Ukraine to Use NFTs to Save Its Cultural ‘DNA’ Amid Russian Invasion