暗号資産の厳しい状況:価格とマクロのリスク【オピニオン】

「暗号資産(仮想通貨)プロジェクトの99.9%は、おそらく何の問題も解決しない。いわゆる『ペテン』が蔓延している」

先日、米金融会社TDアメリトレードが提供するストリーミング番組に出演した際、私は上記のように語った。しかし、話したいことがあり過ぎて、すべてを語りきれなかったので、ここで話を続けたい。

ビットコイン(BTC)は年初から50%以上下落し、暗号資産が厳しい時期を迎えているなか、大きなリスクについて取り上げたい。今、私が注目しているリスクは次の通り。

  1. 価格とマクロのリスク
  2. プラットフォームとプロトコルのリスク
  3. 上場企業のリスク

この記事ではまず「価格とマクロのリスク」を取り上げる(残り2つは、来週、再来週に)。

その前に指摘しておくと、市場全般でストレスが高まっている。逃げる場所はあまりない。キャッシュ(現金)さえも、米消費者物価指数(CPI)によると、8.6%という数十年ぶりの高インフレに飲み込まれている。コモディティのみに投資しているのではない限り、あなたのポートフォリオはおそらく、良い状況にはないだろう。

価格とマクロのリスク

ビットコインは、2017年12月なら高値と考えられた水準を推移している。ビットコインが初めて2万ドルに達した頃だ。だが、あっという間に下落し、再び2万ドルを回復するのに、2020年12月までかかった。ビットコイン価格は先週、3万ドルの水準から下落し、18日には一時2万ドルを割った。

「ビットコイン価格が下落していることは好ましくない」と指摘することは痛ましいほど明らかかもしれない。確かに下落していることは好ましくない。どんな資産にも当てはまることだが、ビットコインではなおさらだ。

2020年後半、ビットコインへの機関投資家の参入が叫ばれた。当時、機関投資家の反応の大半は「少なくとも1兆ドルの資産になるまで、ビットコインをシリアスに捉えることはできない」だった。

その後、2021年2月にビットコインは1兆ドルの資産となった。今年2月には、世界最大の資産運用会社ブラックロックが、暗号資産サービスを計画中と報じられ、人々はビットコインを新しいタイプの準備資産として語り始めた。

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ビットコインはその価値が高まるにつれ、直感に反して、より投資対象に適した資産になっていった。

価格のリスクと対になるのが、マクロリスクだ。連邦公開市場委員会(FOMC)は先週、0.75%の利上げを決定。株式市場は上昇した。

しかしそれは、予期とは正反対の反応だった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、0.75%を「異例の大幅利上げ」としたことを市場は前向きに捉えたのかもしれない。

いずれにせよ、パウエル議長の声明が発表されるなか、株価は上がった。ビットコインも同様だったが、それはおそらく好ましいことだろう。

インフレが手強いことが明らかになり、不況の可能性が大きくなるなか、FRBに注目することはきわめて重要だ。アメリカが正しい方向に進んでいるかを見極めるためだけでなく、ビットコインがリスクオン資産からリスクオフ資産、そのどちらでもない資産へと揺れ動くことを考えると、暗号資産の観点からも重要だ。

世界最大のアメリカ経済が回復に苦戦すれば、見方次第だが、ビットコインにとって破滅的な状況かもしれないし、チャンスとなるかもしれない。時間が経てば、いずれわかる。

国債利回りとの相関関係

一方、利上げが株価下落を招くという見解を裏付けるデータを探すなか、興味深いものを見つけた。ビットコインと米国10年債利回りと、ナスダックと米国10年債利回りの30日相関関係を見ると、第2四半期(4-6月期)は二転三転している。

相関係数は、マイナスからプラスへと推移し、ここ数週間で再びマイナスへと急激に変化している。

 ビットコイン(黄)とナスダック(青)の米10年国債利回りとの相関係数
出典:CoinDesk Research、TradingView

国債の利回り上昇は、金利が上がったか、国債に対する需要が下がった時だ。直感には反するかもしれないが、国債を買ってもらうためには、欲しがる人が少なければ、売り手は価格を安くしなければならず、利回りは上昇する。

一方、金利が上昇すれば、投資家は保有する国債に対して、政府からより多くの利子を受け取ることができるため、すでにより低い金利で発行された国債に対して、投資家はより低いお金しか支払わない。

つまり、今は金利が上昇している環境にあるため、相関係数はマイナスになると考えていた。少なくとも、一貫した相関関係になると考えていた。利上げによって利回りが上昇すれば、株式(そして、ときにビットコイン)のようなリスクオン資産は下落するはずだ。

不況になると投資家は確信できていないため、国債に対する需要は抑えられ、利回りが上がっているのかもしれない。おそらく投資家は、供給サイドの要因で低迷している経済は、需要サイドの要因による不況ほど深刻ではないと考えているのだろう。

市場はもっと大幅な利上げと、さらに大幅な利上げが予定されているとのメッセージを予想していたので、FOMCの発表を受けて、すでに価格に織り込み済みだった最悪のシナリオは解消されたのだろう。それが私の見解だ。

前述の通り、時間が経てばわかる。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Hard Times in Crypto Lead to Price and Macro Risk