財務危機に直面している暗号資産レンディングのセルシウス(Celsius)は、DeFi(分散型金融)プラットフォームのMakerで積極的に債務を返済している。おそらく担保にしたラップドビットコイン(WBTC)を回収するためだろう。
ブロックチェーンデータを見ると、7月1日以降、セルシウスはDeFiレンディングプラットフォームのMakerに対する債務のうち、1億8300万ドル(約248億円)を返済している。債務はMakerのネイティブステーブルコインのダイ(DAI)で返済された。
返済によって、債務がなくなったのみならず、担保となっていた2000ラップドビットコイン(約4000万ドル、約54億円)を回収したようだ。ラップドビットコイン(WBTC)は、ビットコイン(BTC)と1対1で交換されるイーサリアム互換トークン。
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セルシウスはまだMakerに4100万ダイ(約4100万ドル、約56億円相当)の債務があり、約2万2000ラップドビットコイン(約4億4000万ドル、約597億円)が担保となっている。
「負債を返済することで、セルシウスはおそらく担保のビットコインを回収している。ビットコインは債権者の要求や顧客の引き出しに対応するために、取引所や店頭取引で売却できる。DeFi融資が過担保型であることを考えると、融資を返済することで回収される価値は融資自体の価値よりも大きく、合理的な行動だ」とFundstratのアナリスト、ウォルター・テン(Walter Teng)氏はコメントした。
セルシウスにコメントを求めているが、まだ返答はない。
セルシウスは6月12日から170万ユーザーの資金の引き出しと取引を停止し、リストラのコンサルタントを起用し、従業員150人をレイオフしたと伝えられている。また規制当局は同社に対する調査を開始している。
セルシウスのネイティブ暗号資産セルシウス(CEL)は、年初から80%下落している。2022年5月時点、同社は80億ドル以上を顧客に融資し、運用資産残高は120億ドルにのぼっていた。
MakerのようなDeFiプラットフォームにおける融資は、一般的に過担保化されており、借り手は貸し手に対して融資の価値以上の資産を担保に差し出す。
融資返済のもう1つのメリットは、セルシウスの担保がMakerプロトコルによって自動的に清算される価格帯を下げることだ。
DeFi Exploreによると、返済後、セルシウスの担保の清算水準は2774ドルまで下がったという。WBTCは現在、2万200ドルで取引されており、1101%(約10倍)の超過担保となっている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk archives
|原文:Celsius Repays $183M on DeFi Exchange Maker, Gets Back Collateral, Blockchain Data Shows