高校卒業してビットコイン開発に夢中:ダニエラさんが選んだエンジニアライフ

ダニエラ・ブロッゾーニ(Daniela Brozzoni)さんは、より良いビットコイン(BTC)ウォレットを開発しようとしているエンジニアを支援している。

わずか数年前に高校を卒業したばかりで、ダニエラさんはすでに大手ビットコインアプリケーション開発企業のブロックストリーム(Blockstream)で働いた経験を持ち、Braiins OSやRevaultなど、様々なビットコイン関連プロジェクトに協力してきた。

ダニエラさんは先日、ビットコインに特化したプロジェクト開発を手がけるスパイラル(Spiral)から、ビットコイン開発キット(Bitcoin Development Kit:BDK)プロジェクトに取り組むための助成金を与えられた。

BDK(旧マジカル・ビットコイン)は、ビットコインウォレット開発を改善させるための一連のツールやライブラリである。マジカル・ビットコインの謳い文句「オンチェーンビットコインウォレット開発を10倍簡単に」が、BDKの目的を手短に表現しているだろう。

スパイラルでは、BDKをはじめとするいくつかのビットコインプロジェクトに資金を提供している。スパイラル自体は、ビットコインエコシステムを育てるための、米決済大手ブロック(旧スクエア)による複数の取り組みの1つに過ぎない。

公式ウェブサイトによれば、スパイラルのミッションは、「ビットコインを世界中で好んで使われる通貨にするための無料オープンソースプロジェクトを構築したり、資金提供をする」ことだ。

ビットコインの迷宮

ダニエラさんは、ユーザーフレンドリーなディケイング・マルチシグ(署名者の数を徐々に減らしていくタイプのマルチシグウォレット)の開発と、BDKライブラリの改善に取り組んでいる。10代の頃の趣味が、彼女のキャリアの前触れとなっていたと言っても良いだろう。

「子供の頃から、コンピューターで遊ぶのが好きだった。14歳の時に、コンピューターサイエンスを学べる高校を選んで、そこで5年間、19歳になるまでコンピューターサイエンスを学んだ」と、ダニエラさんは振り返る。

17歳くらいの時に、ダニエラさんは友人からビットコインを知る。友人は、ビットコインが楕円曲線暗号(ECC)を使って鍵を生成すると説明してくれ、ダニエラさんはすっかり夢中になってしまった。ビットコイン関連のあらゆる情報を読み漁り、ビットコインの迷宮にハマってしまったのだ。

「ビットコインは魅力的だ!コンピューターサイエンス的な側面だけを見ても、とても複雑。マイナーにノード、ウォレットなど、とにかくたくさんの要素がある」とダニエラさんは語った。

ダニエラさんの友人が説明したのに似た暗号楕円曲線。ビットコイン取引の署名に使われる楕円曲線署名アルゴリズムは、このような楕円曲線にもとづいている。
出典:The Cloudflare Blog

ブロックストリームからBDKへ

ダニエラさんにビットコインを紹介した友人は、ブロックストリームのスタッフであった。彼はダニエラさんの才能を見抜き、ブロックストリームでの仕事に応募するよう勧めた。

成績優秀な生徒ではあったが、大学に行って、コンピューターサイエンスや数学の研究に一生を費やすという考えにワクワクできなかったと話すダニエラさんにとっては、理想的な進路だった。

「数学を学びたかったけど、その先何ができる?教師になることもできるけど、私は教師という道にはあまり惹かれなかった」と、ダニエラさんは語った。

ダニエラさんは、ブロックストリームでの6カ月のインターンシップ枠を獲得することに成功。同社のビットコインウォレットであるブロックストリーム・グリーンに取り組んだ。

その後、オープンソースのビットコインマイニングソフトウェアを手がけるBraiins OSに協力。その後は、ビットコインカストディのアーキテクチャプロジェクトRevaultで、ウォレット部分に当たるrevaultdの開発に携わった。

そして、ビットコインを紹介してくれた友人が、またまた素晴らしいアイディアを提案してくれた。

「『BDKというプロジェクトがあって、すごく大規模なものなんだ。取り組んでみたいか?』と聞かれた」とダニエラさんは振り返る。彼女は喜んでそのプロジェクトへの参加を希望し、BDKに取り組むための資金として、スパイラルの助成金を受け取ることができた。

現在取り組んていることの1つは、BDK Rust Libraryを改善すること。ビットコインウォレット開発の経験や、Revaultでプログラミング言語「Rust」を扱っていた経験が役に立っているようだ。

ビットコイン哲学

ビットコインと最初に出会って以来、ダニエラさんはその多面的な性質について多くを学んできた。リバタリアニズムに傾いていた時期もあるが、現在は自らをマキシマリストと呼ぶ。

「他のコインの場合、たださらにリッチになりたいだけのリッチなCEOがいる。ビットコインにはCEOがいなくて、そこが本当にお気に入り」と、ダニエラさんは説明する。

現在の弱気相場にも関わらず、ダニエラさんはビットコインの未来について楽観的なままだ。ビットコインの最も厳しい批判者の1人であるナシーム・タレブ(Nassim Taleb)氏が名付けた、「アンチフラジャイルさ(反脆弱性)」に関して、ダニエラさんはビットコインに自信を持っているようだ。

アンチフラジャイルな組織は、逆境を生き残れるだけではなく、その中で繁栄できるようなものだ。著書『反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』の中でタレブ氏は、ギリシャ神話に出てくるヒドラを使って、反脆弱性のコンセプトを説明している。ヒドラは多くの頭を持ち、1つ切られるたびに、新しく2つの頭が生えてくるのだ。

「政府がビットコインを潰そうとするところを見てみたい。ビットコインが政府に勝てるほどの反脆弱性を持っていなければ、今のうちに知っておいた方が良いもの。けれど、最終的にはビットコインが勝利すると私は考えているわ」と、少し確信が持てない様子を見せながらも、ダニエラさんは語った。

若きビットコイン開発者たちへのアドバイス

ビットコインはますますお馴染みの存在となってきており、BDKのチームでは、ビットコインウォレットが毎日作られるような未来を予測している。

「BDKを使えば、わずか10行のコードでビットコインウォレットを作ることができる」とダニエラさん。つまり、より多くの開発者、とりわけ若手が、ビットコインエコシステムに参入してくるということだ。ダニエラさんは彼らに対して、次のようなアドバイスを送った。

「まず、謙虚であること。すべてわかっていると思っているような若手の開発者は好まれないわ。自分でわからないことがあったら、助けを求めること。心配し過ぎないこと。ビットコインを真にマスターするには、数カ月、数年かかるかもしれないのだから」

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:ダニエラ・ブロッゾーニ(Daniela Brozzoni)さん
|原文:How I Became a Bitcoin Developer Fresh Out of High School