暗号資産(仮想通貨)に慣れ親しんで久しい人ならば、ビットコイン(BTC)の最小単位サトシの短縮系「sat」を耳にしたことがあるかもしれない。ビットコイナーたちはビットコインを購入することを、「サトシを積み重ねる」と表現する。
実はこれには、イーサリアム版もある。取引手数料ガス代について使われるイーサ(ETH)の単位「gwei」だ。しかし、gwei以外にもたくさんの単位が存在し、イーサと関連するトークンも多くある。
さらに、ETHと同じ価値を表すが、厳密には異なるバージョンであるラップドイーサ(wETH)などの変わり種も。stETHなど、ステーキングされたETHを表すトークンもある。
gweiとweiの違い、wETHとETHの違いがわからなければ、痛い目にあうかもしれない。コインベースの多くのユーザーがwETHをETHアドレスに預け入れようとして、何百万ドル相当もの資金がオンチェーンで立ち往生しているらしい。これらのトークンについて、紹介していこう。
イーサの単位:gweiやwei
米ドルに5セント硬貨や10セント硬貨があるように、イーサにも小さな単位が存在する。
イーサの最小単位は「wei」だ。ビットコインに先立って1990年代にb-moneyを提唱した暗号技術者ダイ・ウェイ(Dai Wei)氏にちなんで名付けられた。1weiは1ETHの100京分の1。つまり、1,000,000,000,000,000,000 wei = iETHだ。
他の単位はすべて、名前にweiを採用しているが、ほとんど使われることはないので、覚える必要はない。重要なものだけに絞っていこう。
価値の微小さにも関わらず、weiはスマートコントラクトで時に参照単位として使われるため、重要だ。2022年3月には、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)投資家が44ETHとするところを、誤って44weiと入力してEtherRock NFTを出品したため、100万ドルを損した。
ETHで最もよく使われる単位はgwei。ギガweiのことだ。ガス代と呼ばれるイーサリアムの取引手数料がgweiで表されるため、馴染みのある人が多い。イーサリアムの基本ガス代が0.00000001 ETHと言う代わりに、10gweiと言った方が楽だろう。
他には、kwei(キロwei)、mwei(100万、あるいはメガwei)などがある。1kweiは1000wei、1mweiは100万weiだ。これらも使われることはほとんどない。
ラップドイーサ(wETH)とは?
奇妙に聞こえるかもしれないが、イーサリアムのネイティブトークン、イーサは、イーサリアムで最も一般的なトークン規格ERC-20に準拠していない。ERC-20は2015年に提案され、2017年にようやく、USDコイン(USDC)やメーカー(MKR)などのファンジブルトークンの標準となった。
イーサリアムを基盤とした分散型アプリ(Dapp)は一般的に、ERC-20トークンに対応している。ETHはERC-20トークンではないため、準拠するように対応が必要だ。ETHをERC-20トークンに変換するプロセスは「ラップ」と呼ばれる。反対にwETHをアンラップすると言えば、そのトークンをETHへと戻すことを意味する。
分散型取引所ユニスワップ(Uniswap)をはじめ、大半のプラットフォームでは、ETHはバックグラウンドで自動的にwETHに変換される。しかし、自分でまずETHをラップしなければならないところもある。
例えば、購入を申し出るのにwETHが必要なNFTマーケットプレースのオープンシー(OpenSea)や、どんな取引をするにもまずETHをwETHに変換する必要のある分散型取引所アグリゲーター、カウスワップ(CowSwap)などだ。
wETHとETHの交換比率は常に、1対1。分散型取引所で直接ラップやアンラップを行うことも、メタマスク(MetaMask)のブラウザ拡張機能を使って間接的に処理することもできる。トークンのラップやアンラップにはガス代がかかることも覚えておこう。
stETHなどのステーキングされたETHトークンとは?
イーサをステーキングするには、32ETH必要だ。これは1人で用意するにはかなりのETHであるため、リド・ファイナンス(Lido Finance)などのステーキングプールでは、複数のユーザーが手持ちのETHを持ち寄って、ステーキングできるようにしている。バイナンスなどの中央集権型取引所でも、同様のサービスを提供中だ。
このようなサービスを使ってETHをステーキングすると、そのステーキングされたETHポジションを表すトークンが受け取れる。1.5stETHは、ステーキングした1.5ETHを表す。
ステーキングされたイーサトークンとその発行元には以下のようなものがある。
- aETHc(アンカー)
- BETH(バイナンス)
- rETH(ロケット・プール)
- stETH(リド・ファイナンス)
これらのトークンは、イーサリアムブロックチェーンのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行「Merge(マージ)」が完了した後、1対1でETHに交換可能だ。ステーキングされたイーサトークンには、最初にステーキングした分に加え、年間約4%で貯まるステーキング報酬のシェアも含まれる。
しかし、これらのトークンは「Merge」が完了するまでは、必ずしもETHと1対1で交換することはできない。その価値が市況に左右されるからだ。
stETHはイーサ価格と連動するか?
リド・ファイナンスが手がけるstETHは、ステーキングされたETHを表すトークンの中で最も人気だ。その登場以来、stETHは低い時には1ETHにつき0.92、高い時には1ETHにつき1.05で取引されてきた。
2021年後半から2022年序盤のほとんどにおいて、約1ETHで取引されてきたが、stETHは2022年半ば、ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタルなどの大口ウォレットが流動性を獲得するためにstETHを売却した後、大幅に割安で取引されるようになった。
その時の大量売却によって、ETHに対するstETHの価格は値下がり。一部のコメンテーターは、stETHがETHとのペグから逸脱するかもしれないと示唆したが、stETHはETHにペグしている訳ではない。
これは、BETHやaETHcなど、ステーキングされたETHを表す他のトークンでも同様だ。
stETHがETHより割安で取引される理由
stETHは長期的にはETHと同じであり、ステーキング報酬の権利もついてくるが、ETHの現在の市場価格よりも割安で取引されている。その主要な原因は、stETHが時間が来るまでロックアップされたETHに裏付けられているからだ。これは、様々なリスクにさらされた非常に柔軟性に欠ける原資産である。
stETHと、その原資産であるロックアップされたETHにまつわるリスクには以下のようなものがある。
- システミックリスク(スマートコントラクト、バリデーター)
- Merge実施に伴うリスク(さらなる延期、中止、その他技術的問題)
- ETHよりも流動性が低い
しかし、ある人にとってのリスクは、他の人にとってのチャンスでもある。リスク選好度の高い投資家にとって、stETHやそれに類似したトークンは、市場価格よりも安いETHを購入するチャンスを提供してくれる存在だ。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:From stETH to wETH to Gwei: Understanding the Different Shades of Ethereum