「Merge(マージ)」が遂に完了した。機関投資家好みの暗号資産(仮想通貨)はいまだにビットコイン(BTC)だが、新しいコンセンサスメカニズムと、それに伴って生まれるはずのスケーラビリティによって、イーサリアム(ETH)がビットコインから注目を奪っていく可能性はある。
それでも機関投資家はまだ、イーサに飛びつくのを躊躇するかもしれない。その理由の1つは、規制の不透明感だ。
米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は、具体的なコインについて話している訳ではないと前置きしつつ、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)型の暗号資産は証券として捉えられるかもしれないと示唆した。この発言後、イーサ価格は15日にダメージを受けた。
一方、ビットコインからイーサへの流入があったとしても、その多くはマージ開始によって、抑えられてしまったようだ。
TradingViewのデータによると、マージが実施された15日のはじめ、イーサはバイナンス(Binance)で約0.0817BTCで取引されていた。その15時間後には、0.0746BTCとなり、その後も値下がりを続けた。
上のチャートを見て、気が重くなるようなデータだと、思うかもしれない。しかし、これは16日までの5日間のデータに過ぎない。
イーサ初期からの、ビットコイン価格との関係を見てみよう。
機関投資家の関心を測る
イーサリアムが最終的に融合することになったビーコンチェーン(Beacon Chain)は、2020年12月1日に立ち上げられた。当時、イーサ価格は0.0313BTC。つまり、その頃から2倍以上価値を上げたのだ。
そのデータから機関投資家の関心を知ることはできない。価格は個人投資家の関心のみに基づいて動くこともあり得る。
機関投資家の関心を測ることは、少し難しいかもしれない。例えば、先物の取引高を見ても、期待するほどはっきりとしたことはわからない。Skew.comのデータによれば、ドル建ての取引高で見ると、イーサ先物は7月以来、ビットコイン先物を繰り返し上回っている。
だからと言って、機関投資家の動向がよくわかる訳ではない。Skewがデータを使用する取引所の一部は、リスク許容度の高い個人投資家向けだからである。
ウォール街の関心を測るのに適しているかもしれない先物取引所が少なくとも1つある。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)だ。ここでは、2つのトークンの取引高の比率が、まったく異なっている。
CMEにおけるイーサとビットコインの先物取引高の比率は、明らかに乱雑に散らばっているが、イーサ先物契約のドル建て取引高はまだ、ビットコインのものを上回ってはいない。
一方、スポット市場においては、取引所がトークンに興味を持っている投資家が誰なのかを把握することができる。
「今週のETHの取引高増加に関しては、機関投資家が先導しているもので、それが我が取引所の事業の大きな部分を占めている」と、ビットスタンプ(Bitstamp)USAのCEO、ボビー・ザゴタ(Bobby Zagotta)氏は16日に語った。「機関投資家の取引高は約56%増加したのに対し、個人ユーザーの取引高の増加は35%だったと思う」と、ザゴタ氏は説明した。
その多くが、Mergeの成功という「ニュースを受けて売った」投資家だと、ザゴタ氏は指摘した。
値上がり前の静けさ?
一方、イーサの値下がりは、ビットコインに対してだけ起こったのではない。米ドル建てでも同様だったのだ。値下がりは長期保有者を落胆させたが、この先大幅な値上がりの望みを捨てていない人たちもいる。
米資産運用大手VanEckのデジタル資産リサーチ責任者マシュー・シーゲル(Matthew Sigel)氏は、Merge後のイーサのUSDに対するパフォーマンスは、大幅な変化後のビットコインの値動きと似ていると指摘。
「ビットコインの半減期など、価格が数週間から数カ月にわたってレンジ相場で動くことになった、大規模な変化の例はたくさんある」とシーゲル氏は主張。「大口の投資家が、ネットワークがある程度安定した後に、買いの決断をすれば良いだけのことだ。それには数日、数週間、数カ月かかるかもしれない。誰にもわからないことだ」と続けた。
8000ドルというイーサの5カ年価格目標を掲げるシーゲル氏は、ビーコンチェーン誕生からMergeまでの期間と比べて、Merge後のわずか6時間の方が、イーサリアムネットワークにステーキングされたETHの数が4倍になったことを指摘。
「現在市場に参加している人たちが、流動性をロックアップする決断を下しているのはかなり明白なようだ」とシーゲル氏は語り、「おそらくこれは、この先も長期的に続いていくトレンドとなるだろう。つまり初期の結果は、値動きにも関わらず、かなり期待できるものなのとなっているのだ」と結論づけた。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:Institutions Are Still ‘Wait-And-See’ With Ethereum