絶大的な人気を誇る北米プロバスケットボールリーグ(NBA)のスタープレイヤー、ステフィン・カリー選手と、世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所のFTXが、日本のひとり親家庭の貧困問題の解決に向けたチャリティイベントでタッグを組んだ。
FTXの日本法人FTX Japanは、埼玉スーパーアリーナで10月2日に行われたカリー選手所属のゴールデンステート・ウォリアーズと、ワシントン・ウィザーズとのエグジビジョンゲームの観戦チケット15枚と現金300万円を、児童福祉支援活動を行うNPOのフローレンス(Florence)に寄付した。
また、来日中のカリー選手は9月29日、チーム練習の後、フローレンスの児童を招いてバスケットボールの指導を行うイベントに参加。FTX Japanも都内で開かれたチャリティイベントを支援した。
カリー選手は昨年、暗号資産(仮想通貨)に対する興味を自らのツイッターで明かした後、サム・バンクマン-フリード氏が創業したFTXとパートナーシップ契約を締結。その後、初めて暗号資産への投資を行い、FTXのアンバサダーとなった。
カリー選手は「Eat.Learn.Play(食べて、学んで、遊ぶ)」と名付けた基金を設立しており、貧困家庭に生まれ育つ子供を支援する慈善活動を行っている。この基金とFTXはすでにパートナーシップを結んでおり、チャリティ活動において連携を進めている。
暗号資産の取引サービスでグローバルに事業を拡大しているFTXはこれまでに、北米のプロスポーツに関係するパートナーシップ契約を数多く結んでおり、スポーツを通じてその知名度を高めてきた。例えば、メジャーリーグベースボール(MLB)では、「FTX」のロゴが付いたユニフォームを着用した審判がストライクコールをするのは、お馴染みの光景だ。
ロサンゼルス・エンジェルスでピッチャーとスラッガーの二刀流として活躍している大谷翔平選手は、FTXのテレビCMに登場している。また、フロリダ州マイアミ近郊に位置するFTXアリーナは、NBAのマイアミヒートの本拠地で、FTXがその命名権を昨年、1億3500万ドル(約195億円)で取得した。
FTXが重点を置く世界の顧客層
日本市場において、FTXは今年その存在を強めている。Liquid Groupの買収を通じてFTX Japanを設立し、トレーダーにとって使いやすい取引サービスを拡充している。
本格的な暗号資産トレーダーをコアターゲットに据え、グローバルにユーザーを増やしてきたFTXは、日本においても同社が得意とするデリバティブ取引に重点を置いたプラットフォーム作りを行っている。
世界的なインフレが各国の金融緩和を引き締め策に転換させ、世界経済のリセッション(後退)突入を懸念する声が聞かれるなか、暗号資産市場でも弱気相場は年初から続いている。「暗号資産の冬(Crypto Winter)」と呼ばれる2022年でさえも、バンクマン-フリード氏率いるFTXは、経営破綻したクリプト企業の資産買収や、同領域におけるベンチャー投資を積極的に進めている。
暗号資産フレンドリーなマイアミを米国拠点
北米では、バンクマン-フリード氏は今月、米国法人FTX.USの拠点をシカゴからフロリダ州マイアミに移転する計画をツイッターで発表。マイアミは暗号資産に好意的なフランシス・スアレス氏が市長を務めており、同市を暗号資産のハブ「クリプトコースト」にする構想を進めている。
FTXのグローバルヘッドクォーターは、フロリダ半島から近いバハマにあり、バンクマン-フリード氏もバハマに居住している。
暗号資産交換業者の登録数は30を超え、供給過多とも言える日本において、FTXは今後いかに競争力を高め、シェア争いを続けていくのか?そして、スポーツを絡めた巧みなブランド戦略は日本でも積極的に展開していくのだろうか?
|テキスト・編集:佐藤茂
|画像:FTX Japan提供