世界の暗号資産(仮想通貨)取引サービス事業において、より分散的な組織運営を行う分散型取引所(DEX)が、コインベースやクラーケンなどの中央集権型取引所(CEX)との競争を強める中、DEX大手のdYdXの運営を管理する財団CEOに、米ConsenSys元幹部で、アジア事業の拡大に注力したチャールズ・ダハウシー(Charles d’Haussy)氏が就任した。
ダハウシー氏は、デジタル資産専用ウォレットの「MetaMask(メタマスク)」を開発するConsenSys(コンセンシス)で、アジアを中心とするグローバル事業を統括し、MetaMaskの世界的な普及を後押ししてきた人物。以前は、香港のフィンテック産業の成長を目的とするプロジェクトに参画し、450社に及ぶフィンテック企業を支援してきた。
同氏は2018年にアジアの「フィンテック・インフルエンサー・トップ50」にも選ばれ、2021年には、香港のブロックチェーン産業を説明する書籍『Block Kong』を執筆した。
戦略的提携を画策するdYdX
dYdXは、暗号資産のデリバティブ取引サービスを中心に展開し、一般ユーザー向けの取引手数料をゼロにするなどの大胆な事業戦略を進め、ユーザーの拡大を図っている。ノンカストディアルで、仲介業者を介さないピアツーピアのDEXで、トレーダーのUI・UXを重視した取引プラットフォームの開発を行っている。
dYdXの財団「dYdX Foundation」は、暗号資産の事業者を支援する「クリプトバレー」で知られるスイスのツーク(Zug)に本部を置いている。ダハウシー氏率いる同財団は今後、dYdXの開発人材の拡充を進めながら、業界内の企業やプロジェクトとの戦略的提携を模索する。
ダハウシー氏は10月10日の発表文の中で、「(dYdXの)技術、チーム、コミュニティは、私がこれまで重視してきたミッションを共にしている。一言で言うなら、金融機会へのアクセスを民主化するということになる」とコメントした。
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米投資銀行シティグループの分析
暗号資産取引サービス業界におけるDEXの成長は、米銀大手のシティグループも注目している。シティは9月、同社がまとめた顧客向けレポートの中で、DEXが展開する事業成長は今後、CEXを上回る可能性があると述べている。
シティは同レポートで、CEXを利用する際の面倒な顧客確認(KYC)手続きを回避するユーザーが増えるにつれ、DEXの利用者が増加する可能性があると指摘。DEXは一般的に、トークン保有者に配当のような分散型収益を提供し、資産をセルフカストディ(自己保管)する機能を備えている。取引報酬を含めると、DEXはCEXよりも比較的安価な手数料になると、シティは説明した。
|編集:佐藤茂
|トップ画像:チャールズ・ダハウシー(Charles d’Haussy)氏/dYdX Foundationの発表文より