利上げにびくともせず?──NFT、GameFiの資金調達【Krakenリサーチ】

8月に続いて、9月の暗号資産(仮想通貨)マーケットも全てのセクターにおいてマイナスリターンを記録した。

伝統的な金融市場である株式市場においても、9月8日の欧州中央銀行(ECB)による初の0.75%利上げに始まり、米連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行(BOE)など欧米の中央銀行が軒並み大幅利上げを行なった影響により、景気の更なる後退懸念が嫌気され、全面安となった。

暗号資産は軒並み株式市場をアウトパフォーム

(セクター別パフォーマンス/Kraken Intelligence)

※表内の騰落率は時価総額ベース。ベータ値(表最右端)はビットコインの時価総額に対する相対値で計測。レイヤー1は、ビットコインとイーサリアムを除く。DeFiおよびデジタルカルチャーのセクターは、それぞれCF BenchmarkのDeFi Composite Index-LondonおよびDigital Culture Composite Index-Londonのインデックスに対応。デジタルカルチャーには、メタバース、NFT、音楽、ゲームが含まれる。

暗号資産の代表格、ビットコイン(BTC)は3%の下落にとどまった一方、大型アップグレード「Merge(マージ)」を無事完了させたイーサリアム(ETH)は、14%もの大幅下落となった。

その他アルトコインをセクター別に見てみると、ソラナ(SOL)やポルカドット(DOT)、カルダノ(ADA)などのレイヤー1ブロックチェーンは-1%、取引所トークン(暗号資産)は-2%、ドージコイン(DOGE)や柴犬トークン(SHIB)などのミームコインも-2%と、下落相場にありながら健闘した。なお、その間伝統的金融市場のNYダウは9%弱、日経平均株価は8%弱の下落であった。

一方、直近90日間の騰落率(表最左端の列)に目を向けてみると、ETHが引き続き他セクターを上回って推移(+26%)していることがわかる。モネロ(XMR)のような、匿名性の高いプライバシーコインやユニスワップ(UNI)などの分散型金融(DeFi)銘柄についても、それぞれ+22%、+21%と市場を牽引している。

表右から2列目は、シャープレシオ、言い換えればリスク調整後リターンを示す。リスクに対するリターンを表す指標であり、数値が高いほど効率良くリターンが得られたことを示す。この観点では、ETHに比べて他セクターの方が投資効率は高かったと言えそうだ。

NFTマーケットを鼓舞するか、増えるユースケース

(NFTマーケットプレイスOpenSeaの統計(7日間移動平均):日次取引件数<紫実線>、日次利用者数<紫波線>、日次取引量<ピンク実線>、取引1件当たりの平均取引量<ピンク波線>/Kraken Intelligence)

相場全体の下落基調に沿って、NFTマーケットも9月は低調に終わった。1日あたりの平均利用者数と、平均取引件数はそれぞれ前月比5.7%、3.1%の減少となり、1日あたりの取引量に至っては26.3%の大幅減少となった。

一方で、9月もNFTに関する興味深いヘッドラインが多く見られた。

●米コーヒーチェーン大手のスターバックスは、イーサリアムのレイヤー2ソリューションである、ポリゴン上でNFTを使ったロイヤルティ・プログラム「スターバックス・オデッセイ(Starbucks Odyssey)」を開始予定。
● ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、ウィリアム・S・ペイリーの美術品コレクション(7,000万ドル相当)のオークションの収益の一部でNFTを購入することを検討。
● 「Merge(マージ)」完了から17秒後に、イーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ブロックチェーン上で初めてNFTがミント(発行)された。発行者は36.8 ETH(約700万円)もの手数料を払っており、「The Transition(ザ・トランジション)」と名付けられた。

最大280億円、資金調達は依然活発

(2022年9月のNFTコレクション・ランキング/Kraken Intelligence)

また、NFTやGameFi(ゲーミファイ)の関連プロジェクトによる資金調達も引き続き活発だ。

スポーツゲームをメタバース上で展開するLootMogul(ルートモーグル)は、2億ドル(約280億円)の資金を調達した。

他には、日本にも拠点をもつAnimoca Brands(アニモカブランズ)の1億1,000万ドル、9月のNFTコレクション・ランキング9位にランクインしたDoodles(ドゥードルズ)の5,400万ドル、同6位のAzukiを抱えるChiru Labs(チルラボ)の3,000万ドル、米エピック・ゲームズなどが出資したHadean(ハデーン)の3,000万ドルなど計13件の資金調達がNFT、GameFi界隈で見られた。

クラーケンも、NFTマーケットプレイス「Kraken NFT」の近日提供開始を予定している。上記のような、世界で人気のNFTコレクションを、クラーケンの利用者なら誰でも簡単に購入・販売、そして安心・安全に保管できるようになる。


吉田友斉:慶應義塾大学経済学部卒業。新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)にて大手金融機関の監査、アドバイザリー業務等に従事後、金融庁に入庁。検査局において金融機関の検査業務に従事。2018年7月に暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken」を世界的に運営する米国Payward Inc.に入社。2018年11月Krakenの日本法人であるPayward Asia株式会社の財務・リスク・コンプライアンス部門統括取締役に就任。2022年7月より現職。 公認会計士(日本)。クラーケンHPはこちら:https://k.xyz/3Bt

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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