FF金利を設定する米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が先週開かれ、金利を0.75%上げるという新しい通貨政策の概要を説明するプレスリリースが発表された。その後、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が記者会見を行い、ジャーナリストからの質問に答えた。
情報過多の現代において市場は、プレスリリース、議長の言葉、そしてジャーナリストの質問への答えに順に反応する傾向がある。
株価の動き
だからこそ、11月2日に「FOMCが利上げ幅を決定し、その後パウエル議長が記者会見を行う」の流れを見守っていた私のいら立ちを想像して欲しい。
(アメリカ株式市場の大半のパフォーマンスをトラッキングする)S&P 500がその日の午後にどのように動いたかを見てみよう。プレスリリースを受けてアップし、記者会見でダウン、報道陣からの質問の間にさらにダウンしたのだ。
繰り返しになるが、私のいら立ちを想像して欲しい。(1人の男が何かを言っているからと言って市場が本能的に反応するのを見て、パソコンのスクリーンに向かって拳を振り上げている人を想像してもらえれば良い。)
なぜ今回このような動きになったのか、私の見解を紹介しよう。パウエル議長が数回前の利上げの時にほのめかした利上げ「減速」の兆候を市場は探し求めており、それをプレスリリースの中に見つけた。しかし、パウエル議長が話を始めると、市場は解釈を改めるようになった。とりわけ、次の発言がその原因だ。
「過去2回の記者会見で述べた通り、2%という目標までインフレを下げるのに十分に抑圧的な金利水準に近づくにつれ、どこかの時点で、利上げのペースを減速するのが適切になるだろう。金利の水準については、大きな不確実性がある。それでもまだ道半ばであり、前回の会合以降のデータは、金利の最終的水準は、従来の想定よりも高くなることを示唆している」
その後、「ラグ効果(FRBの利上げとそれが実際に経済に影響を与えるまでの時差)」について質問されるとパウエル議長は、利上げ停止について語るには時期尚早だと、爆弾発言をした。そこでS&P 500はダウンしたのだ。
さらにS&P 500の変動は、ボラティリティの高さで有名なビットコイン(BTC)よりも激しかった。FRBのプレスリリースが配信されたのは東部時間午後2時。
S&P 500の上げ幅がピークに達したのはそれから約30分後だが、その日の取引は2.3%安で終えた。一方、ビットコインのFRBプレスリリース後の値上がり幅は最大で1.3%。その日の終わりには、1.5%安となっていた。
ボラティリティははっきりとした定義を持つもので、2週間は統計的に重要とはとても言えないが、ビットコインの方が株式市場よりも比較的安定した動きを見せたのは2週間連続のことであった。
ビットコインはもはや高ボラティリティ資産ではない
このことを心の底から言えるのを長らく心待ちにしてきたのだが、ビットコインは本当に動じなくなっている。
ここ2週間で私たちは、FRBがインフレ抑制のために利上げを続ける意向を示唆するのを目の当たりにし、最新の雇用市場についてのレポートや全体的なマクロ経済の不透明感も伝わってきた。それによって、S&P 500とナスダック100はダウンした。一方、ビットコインは値上がりしたのだ。
この状況は一晩で簡単にひっくり返る可能性があることは理解しているが、今のところビットコインは、不透明感を受け流しているようだ。
私の同僚のグレン・ウィリアムズ・Jr.が、次のように上手くまとめている。
「世界は動揺しているが、しばしばそのボラティリティを批判されてきた資産であるビットコインは少なくとも今年、主要な株式インデックスほどは動揺していない」
私の結論は次の2つのどちらかだ。ビットコインはいまや、本当にマクロ資産になった。あるいは、ジョークとして生まれた暗号資産のドージコイン(DOGE)価格が10月に2倍になったことから分かる通り、価格なんて意味がないのかもしれない。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin (Magic Internet Money!) Again Proves Less Volatile Than Stocks