英歳入税関庁、脱税者を探して仮想通貨取引所にデータ提出を要求か

英歳入税関庁は、未払いの税金を回収するために、顧客の氏名と取引履歴を公開するよう仮想通貨取引所に対して圧力をかけていると、業界の情報筋が語った。

イギリスで営業している少なくとも3つの取引所、コインベース(Coinbase)、イートロ(eToro)、CEX.IOに、顧客リストと取引データを要求する手紙が先週頃届いた、とその関係者は語った。記事執筆時点で、これら3つの取引所のいずれも、コメントに応じていない。

「歳入税関庁は、仮想通貨を売買している人の情報を得るのに際して、取引所と連携しようとしています。2、3年ほど、さかのぼるだけにとどまると思います」と、ある業界内部の情報筋は語った。

同情報筋は、どのようなプラットフォームにとっても、10年分の情報を提供するのは非常に難しいと指摘し、次のように続けた。

「歳入税関庁が2、3年さかのぼるだけだとしたら、興味深いのは、2012〜2013年という非常に初期に仮想通貨を始めた人たちは影響を受けないという点です。最も利益を得たであろう人たちが影響を受けずに、仮想通貨がピークを迎えた頃に始めた人たちが影響を受けるのです」

CoinDeskが提出した情報公開請求に対し、歳入税関庁は、同庁の情報要求に関する詳細を開示すると、課税や徴収に支障を来す恐れがあるため、公表は差し控えている、と回答した。

しかし同庁は、そのような要求は同庁の権限の一部だとし、次のように述べた。

「これらの取引所は、顧客や、完了した取引に関する情報を保持することができる。これらの取引は課税対象となる可能性があり、歳入税関庁は取引所に対し、このような情報を提供するように求める通知を発行する権限を持つ」

今回の歳入税関庁の動きは、米内国歳入庁(IRS)やその他政府が示した先例に従っている。

IRSは2019年7月、仮想通貨取引に参加しながらも、適切な申告をしなかったとされる1万人以上の米国民に対して、警告の手紙の送付を開始した。

コインベースは過去に、政府機関が、納税者ID、氏名、誕生日、住所、取引履歴など、未知の顧客情報を収集する試みとして発行した、匿名召喚状(John Doe summons)に抵抗したことがある。

IRSは2016年12月、匿名召喚状を発行し、コインベースに対して、約50万人の顧客に関連する様々な記録を提出することを求めた。裁判所は1万3000人のみの記録を提出するようコインベースに命じ、同社が部分的に勝利する形となった。

翻訳:山口晶子
編集:町田優太 
写真:U.K. pound image via Shutterstock
原文:British Authorities Seek Data from Crypto Exchanges in Search of Tax Evaders