暗号資産業界は今、「まったく無残な状況」と英上院議員ゴッドフレイ・ジョン・ビウィッケ-コプリー(Godfrey John Bewicke-Copley)氏は11月30日、議員連盟の会合で述べた。さらに同議員は「暗号(クリプト)」という言葉を完全に「捨てる」ようにと業界にアドバイスまでした。
「この先も進んで行きたいなら、もう暗号と呼ぶのはやめよう。犯罪マネーと呼ぶのもやめて欲しい。単にデジタル通貨といった名称にすればよい。暗号という言葉をやめよう」
同議員によると、暗号資産業界は規制当局の支持を取り付ける必要があり、リブランディングが必要かもしれないという。
「イギリスを暗号資産ハブにする」
今回の議員連盟の会合は、暗号資産の課題とチャンスについて話し合うことが目的。だがビウィッケ-コプリー議員は、英FCA(金融行動監視機構)などのイギリスの規制当局は難しい状況に取り組んでいるので、「今回の会合は素晴らしいチャンスで、我々はその中心でありたいといった話は、政治家の戯言かもしれない」と語った。
同議員が語った「戯言」とは、スナク首相が4月、前政権の財務大臣だった頃に発表した「イギリスを暗号資産ハブにする」という目標のことだ。当時はまだ、複数の大手企業が破綻し、業界や市場に大きなダメージを及ぼす前だった。
スナク政権で財政担当官を務めるアンドリュー・グリフィス(Andrew Griffith)氏は、FTX破綻後もイギリスを暗号資産ハブにするという政府の約束を繰り返し、12月1日には、議員が「基盤となっているテクノロジーの潜在能力を無視するなら、それは愚かなことだろう」と述べている。
悪いボートは焼き尽くす
さらにビウィッケ-コプリー議員は、暗号資産がもたらすフィンテック・イノベーションを逃すことを恐れる議員に非難を向けた。
「ボートに乗り遅れてしまうと考える人たちがいる。だが港は爆発物を積んだ、沈みかけたボートでいっぱい。それがFCAが見ている景色だ」と同議員は述べ、「悪いボート」は海に放っておき、「焼き尽くす」べきと続けた。
現状、破綻したFTXに注目が集まっているが、暗号資産レンディングを手がけたブロックファイ(BlockFi)、セルシウス・ネットワーク(Celsius Network)、ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)も破産申請を行った。
5月には、テラフォーム・ラボ(Terraform Labs)が破綻し、暗号資産ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)も連鎖的に破綻した。
「ランボルギーニの日々」は終わり
イギリスでの営業を希望する暗号資産取引所やカストディ企業はFCAに登録し、同国のアンチ・マネーロンダリング・ルールに従う必要がある。リサ・キャメロン(Lisa Cameron)下院議員は11月28日、暗号資産コミュニティはFCAが課す要件を遵守することは「難しい」と不平を述べていると『フィナンシャル・タイムズ』紙主催の暗号資産サミットで発言した。
11月上旬、FCAの最高責任者ニキル・ラティ(Nikhil Rathi)氏は「登録申請の85%が却下、あるいは申請取り下げとなった。我々が適切かつ妥当と考える水準に達することはないと考えたためだ」と語っていた。
FTX破綻のわずか数カ月前に、FCAはイギリスの消費者に対して、FTXはイギリス国内での営業許可を受けていないと警告。ビウィッケ-コプリー議員によると、FTXを認可しなかったことにFCAは安堵したという。
「FTX破綻は最後の決定打、というのが現実。暗号資産には良い面もある。私も長年支持してきた。だが今、規制当局が優しい目を向けていると考えているなら、それは間違い」と同議員は指摘。会合に出席した業界関係者も同意した。
「暗号資産で儲けてランボルギーニに乗る時代は終わった。実用性を示し、どのようにして経済的繁栄や次の10億人の新規ユーザーにもたらすかを示す必要がある。道筋をきわめて明確に提示しなければならない」と、ステーブルコインを手がける米サークル(Circle)でイギリスおよびEUの政策・規制戦略を担当するテアナ・ベイカー-テイラー(Teana Baker-Taylor)氏は語った。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Industry a Disaster in Need of Rebranding, UK Lawmaker Says