FTX破綻後も依然残る、暗号資産投資のチャンス【米国版】

2022年が終わりを迎えようとする今、暗号資産投資家にも感謝するべきことはたくさんある。だが、目の前に明らかに広がる惨状を無視するのは難しい。

もちろん、FTXの破綻と、業界に広がり続けるその影響のことだ。暗号資産レンディング大手のブロックファイ(BlockFi)が破産申請を行ったことで、再びその影響が明らかになった。

ブロックファイの苦境は予期せぬものではなかった。同社は今年すでに、評価額が3分の1以下になり、人員削減を始めていた。FTXの破綻は、すでに問題を抱えていた同社にとどめを刺したに過ぎない。

それでも経験豊富な投資家は、最も厳しい時期は多くの場合、最高の投資チャンスとなることを知っている。FTX破綻の影響に怯まない投資家は、暗号資産ファンド、オプションや先物、暗号資産関連株、そしてもちろん暗号資産自体の大幅な下落をチャンスにできる可能性がある。具体的に見ていこう。

ファンド

チャンスの1つはすでに、アーク・インベストメント・マネジメント(ARK Investment Management)のキャシー・ウッド(Cathie Wood)氏など、著名投資家によって活用されている。暗号資産ファンドだ。

グレイスケール・ビットコイン・トラスト(Grayscale Bitcoin Trust:GBTC)はここ数週間、ビットコイン(BTC)に対するディスカウント率が45%にも達している。他にも複数の暗号資産ファンドが同様の高いディスカウント率で取引されている。

これらのファンドが保有する暗号資産の価値が再び高くなると、自信を持って考えているなら、高いディスカウント率でファンドを購入することは、55セントで1ドルを買うことに近い。

もちろん、そうしたファンドが将来的に、原資産よりも高値、あるいはそれと同水準で取引される保証はない。だがほとんどの金融資産は、平均水準への回帰傾向をある程度示している。

オプションと先物

もう少し安心感を求めつつ、暗号資産に興味を持つ投資家への選択肢としては、オプション取引がある、とビットコインETF(上場投資信託)を手がけるプロシェアーズ・インベストメンツ(Proshares Investments)のグローバル投資ストラテジスト、シメオン・ハイマン(Simeon Hyman)氏は述べた。

「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF(BITO)やプロシェアーズ・ショート・ビットコイン・ストラテジーETF(BITI)のようなビットコイン先物連動型ETFは、石橋を叩いて渡る的な手段を提供する」とハイマン氏。「ビットコインに連動したリターンに投資するために、効率的で規制を受けたETFという形で先物を活用している」。

ハイマン氏によると、暗号資産価格の最近のボラティリティにもかかわらず、プロシェアーズのビットコイン先物ETFはスプレッドが小さく、NAV(純資産総額、あるいは基準価格)との乖離はほとんどないという。

暗号資産関連株

オンタリオ州教職員年金基金などの大手年金基金や、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)などの投資企業は、FTXへの数百万ドルもの投資を回収不能と見なした。

機関投資家の暗号資産への投資は少し冷え込むだろう。特に公的な年金基金は、投資先について厳しい目が向けられている。冷え込みは、暗号資産価格の急落と、一連の破産申請の連鎖に怯える個人投資家にも広がっている。

暗号資産取引所コインベース(Coinbase)を手がけるコインベース・グローバル(Coinbase Global)など、上場している暗号資産企業の株価は、過去1年のピーク時から約90%も下落している。

多くの暗号資産関連株は、価格が上がり過ぎていた面があるが、今、株式投資を選択する人にとっては、チャンスとなるかもかもしれない。

暗号資産

このところの価格下落、先行きについての不透明感の高まり、長期的な成長可能性についての疑念にもかかわらず、米CFA協会(証券アナリストの認定団体)のリサーチによると、暗号資産そのものを購入することも、それほど悪いアイデアではなさそうだ。

暗号資産に批判的な人たちはここ12〜18カ月で、S&P500のような指標、IT分野と連動したiSharesのETF、XLKなどのファンドと、暗号資産価格の相関関係の高まりを指摘している。

しかし、ここ3年間の価格をリサーチしたCFA協会は、ビットコイン、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、エックスアールピー(XRP)、カルダノ(ADA)の主要暗号資産と、株式インデックスなどとの相関関係は比較的低いことを突き止め、そうした懸念の一部を払拭した。相関係数はプラス、つまりインデックスと暗号資産価格の動きは同じ方向だが、一致しているわけではない。

「暗号資産と、投資信託やETFとの相関係数がプラスの低い水準にあることは、さまざまな市場で取引を行う投資家の増加や、暗号資産の人気の高まりを示しているかもしれない」と、CFA協会のリサーチャーは指摘し、次のように結論づけている。

「さらに、利上げ環境と、株式と債権に6対4で投資する伝統的なポートフォリオの有効性が低下しているなか、暗号資産と伝統的資産の相関関係の低さは、短期的なボラティリティを受け入れられる長期投資家にとっては、分散投資のメリットを提供するかもしれない。しかし、すべての暗号資産が伝統的資産に対する相関関係の低さを示しているわけではないため、投資家はどの暗号資産を投資対象とするか、見極める必要がある」

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:There’s Still Investment Opportunity After the Fall of FTX